レジーのJ-POP鳥瞰図 第20回

Perfumeと星野源、J-POPを開拓する2組に通じる点は? 相思相愛の共演から考える

星野源が一変させたJポップの風景

 Perfumeといえば振付師のMIKIKOとの師弟関係が有名だが、今ではMIKIKOもすっかり日本を代表する振付師、プロデューサーとなった。昨年夏のオリンピックのフラッグハンドオーバーセレモニーに関わったことが現状の彼女のポジションに大きく寄与していると思われるが、それに加えて星野源「恋」の振付を手掛けたこともMIKIKOの評価を決定づけた要因の一つとなっているはずである。

 今さら言うまでもないことが、「恋」という楽曲はさまざまな場所に多大な影響を与えた。「恋ダンス」のヒットによってドラマのエンディング演出の流れも変わった印象があるが、特に大きかったのは「アイドルグループでなくても、歌って踊れて、さらには売れるポップソングを作ることができる」ということを星野源が身を持って証明したことだろう。しかも、彼の音楽は「イエローミュージック」という日本人のためのダンスミュージックとでもいうべき壮大なコンセプトのもとに構築されている。細野晴臣が志向したエキゾチックな音も、久保田利伸やDREAMS COME TRUEらが実践していたソウルテイストを日本の土壌に落とし込んだポップスも、それぞれ包含しているのが彼の音楽である。日本の大衆音楽を更新しようという意思とアウトプットのクオリティが結びついた星野源の楽曲がマスマーケットでも支持されたことで、ここ数年存在していた「一部の人たちによる、売れているダンサブルなアイドルソング」と「フェスやネットでうけの良い音楽好き向けの音楽」というような対立構造はかなりの部分で崩壊したのではないだろうか。ポップに売れたい人も、玄人の支持を得たい人も、どちらにも星野源の存在が立ちはだかっているというのが2017年時点での現状であり、おそらくJポップというものが確立して30年弱の間においてこのようなことはなかったように思える。この状況は多くのアーティストにとってタフな環境であると同時に、「いいものは売れる」という形で勇気を与えている側面もあるだろう。

 8月16日にリリースされ、シングルとしては初のオリコン1位を獲得した星野源の最新曲「Family Song」は、スティービー・ワンダーやカーティス・メイフィールドの名前を挙げたくなるようなソウルマナーのゆったりとした楽曲である。性急なビートとMIKIKOとのタッグによるダンスで世の中を踊らせてきた星野源だが、「Family Song」には自身の巻き起こした狂騒を一旦振り返るような趣の穏やかさがある。そんな雄大なサウンドと歩調を合わせるかのように、これまではどちらかというとソフトな印象のあったボーカルもより力強く、そしてより色っぽくなった。<血の色 形も違うけれど いつまでも側にいることが できたらいいだろうな>というフレーズで家族の本質を射抜いた歌詞も、共同体の形が多様化する昨今の空気を的確に描写しており、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』以降の彼が果たしている社会の新しいスタンダードを体現するという役割ともマッチしている。

 時代を象徴するスターとしての地位を着実に固めながら、音楽的な進化に関してもいまだ天井の見えない星野源。この先、どんなレベルの存在になるのか、まったく想像がつかない。

関連記事