『Lantis presents 深窓音楽演奏会 其ノ四』レポート
ChouCho、fhána、TRUE、Mia REGINA…『深窓音楽演奏会』に感じた“アニソンの豊穣な音楽性”
この日のライブのトリを務めたのはfhána。キーボードの佐藤純一、ギターのyuxuki waga、サンプラーとグロッケンのkevin mitsunagaというメンバー3人に加え、ベースになかむらしょーこ、ドラムスに“よっち”こと河村吉宏のサポートを迎えたフルバンド編成でのライブとなる。ブレイクビーツ風のSEが流れて会場の期待が一気に膨らむ中、メンバーたちが次々とステージに登場。一拍の沈黙を置いて、紅一点のボーカリスト、towanaが「Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜」の一節を歌い始めると、フロアからは喜びの歓声が上がる。“セカイ系”を主題のひとつに据えた彼らのテーマソングとも言えるこの楽曲、繰り返される日常を超えて、まさに憂鬱の向こう側へと誘ってくれるような晴れやかなサウンドは、現実を忘れさせてくれるハレの舞台であるライブの幕開けにふさわしい。
そこからシームレスに「君の住む街」へと繋げるfhána。バンドの軽快に跳ねまくる演奏につられて、towanaも佐藤の方を向いてピアノを弾くフリをしたり、お茶目に踊ってみせたりと、ウキウキとしたムードを会場中に広げていく。kevinのノリノリな煽りと眩しい笑顔も、彼らのライブにおける楽しさの大事なポイントだ。続いて、A-beeの助力を得て推進力全開のダンスビートを採り入れた新たなアンセム「Hello!My World!!」で会場の熱を一気に高めると、次はfhána初のラップ曲「reaching for the cities」でまったりとしたグルーヴを聴かせる。ここまでの3曲は最新シングルからのナンバー。そのいずれにも、彼らの新しい世界へと歩み出そうとする意識が表れており、いわば彼らの現在のモードを体感できるセットリストと言えるだろう。
MCでは佐藤が現在制作中の3rdアルバムについて触れ、「ヤバイ曲がドンドン出来上がってます!」とアピール。歓喜の声に包まれるなか、ライブの鉄板曲「divine intervention」がスタートし、towanaの繊細さと芯の強さを併せ持つ歌声が会場をドラマティックに盛り上げていく。最後は「この曲はみんな一緒に踊ってください!」(towana)と「青空のラプソディ」を披露。メンバーの踊るMVがYouTubeで1,000万回以上再生され、fhánaにとっても最大のヒットとなっているこのナンバー。この日会場に集ったファンはもちろんすでにダンスを会得していたようで、towanaやkevinのダンスに合わせてすし詰めのフロアも右に左にと動いて踊る、なんとも感動的な光景に。佐藤も後半ではショルダーキーボードに持ち替えてステージ上を動き回り、フィリーソウルを思わせる流麗なディスコサウンドが祝祭感を生むなか、凄まじいまでの一体感と共に彼らのステージは終了した。「青空のラプソディ」は間違いなく、彼らのライブバンドとしての存在感を一段階押し上げるナンバーに育っているように思う。
そしてイベントの締め括りとなったのは、この日の出演者全員の参加によるChouCho「starlog」。『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の第1期オープニングテーマであり、過去の『深窓音楽演奏会』でも欠かさず歌われてきた彼女のライブでの定番曲が、TRUE、towana、Mia REGINAら豪華な歌姫たちとの共演によって新しい光を獲得する。個々としても眩いばかりの輝きを放つその歌声が重なり、夜の闇を照らす星のような瞬きとなって、会場中に降り注ぐ。TRUEが最後の挨拶で「あらためて音楽ってヤベーじゃんって思いました!」と発していたが、まさにその言葉通り音楽の素晴らしさを肌で実感できるステージだった。
アニソンといえば複雑なメロディ展開や構成を持つ楽曲が多く、それらを歌いこなすにはズバ抜けた歌唱力はもちろん、歌詞の内容も含めた楽曲の細かなニュアンスを声で伝える表現力が必要になってくる。そういったシーンの最前線で活躍する今回の出演者の歌声の魅力は、CD音源などでも充分に味わうことはできるが、生のライブだとさらなる凄みを持って迫ってくるものだ。それを演者と観客の距離感の近いライブハウスで体感できる『深窓音楽演奏会』が特別なイベントだということは、その日会場を訪れた誰もが感じたことに違いない。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。
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