『楠田亜衣奈 2nd LIVE TOUR ‘17 YEAR♡♡♡♡♡♡♡』レポート
楠田亜衣奈が『カレンダーのコイビト』と中野サンプラザ公演で示した、ファンと共有してきた時間
テレビアニメ『ラブライブ!』にて結成されたμ’sの一員として人気を集め、2015年よりソロ名義での歌手活動で精力的にライブを続けてきた声優/シンガーの楠田亜衣奈。ソロとしては過去最大規模となる中野サンプラザで行なわれた『楠田亜衣奈 2nd LIVE TOUR ‘17 YEAR♡♡♡♡♡♡♡』のファイナル公演は、今年2月発売の新作『カレンダーのコイビト』とライブでの熱気とをひとつに繋ぐ、圧倒的な「楽しさ」が印象的なステージだった。
彼女の誕生月にあたる2月にリリースされた3rdアルバム『カレンダーのコイビト』は、1月から12月までの各月をイメージした楽曲が収録され、全編を聴くと一年間のカレンダーができあがるという、自身初のコンセプト・アルバム。この日は収録曲が時系列通りに並べられ、その前後や合間に過去の楽曲を加えた超ロングセットで、ハートマークに「17」と書かれたバックドロップがかかったステージにバンドが登場すると、高台から楠田亜衣奈が登場。まずは「トドケ ミライ!」をピアノのみの演奏でしっとりと歌い上げた後、バンドサウンドに乗って「盛り上がっていきますよ!」とアップテンポな「First Sweet Wave」に突入する。続いて両サイドのスクリーンにカレンダーをめくる映像が表示されると、「冬/雪/新年」をテーマにした1月曲「Snow Breath Celebration」を披露。「進化系HEROINE」を挟んでMCでは「くすサポ男子! くすサポ女子! くすサポメガネ! くすサポちょびヒゲ!」と楽しそうに歓声を引き出し、「(ちょびヒゲは)絶対嘘!」と笑う姿が何とも彼女らしい。
そう、彼女のライブはキュートな歌声やキレのあるダンスに加え、“天性の愛されキャラ”とも言うべき人柄が生む、観客との垣根を取っ払ったフレンドリーな雰囲気も特徴のひとつ。自身の誕生月となる2月の曲「まいにち誰かのハッピーデイ♡」でも、「今日誕生日の人!」と観客の名前を聞き、「今日はくすサポに!」「誕生日、おめでとう!」とコール&レスポンスで“みんなの歌”に変え、客席後方までを楽しげな一体感で包む。その後も「卒業/桜」をテーマにした3月の曲「spring heart」や4月の「ハルイロレジュメ」を経て、育てていたミニトマトが枯れた話になぞらえ「生き残れるようにちゃんと給水してください」と笑いを誘うと「Infinite Memories」へ。5月の楽曲「JUMP UP」では傘を回して踊り、「HO♡HOLIDAY」ではキュートな声をより全開に。6月の「レイニーマーメイド」では階段に座ってしっとりと歌い、本人がステージを去った後はその余韻を表現するように、波の音に乗せてバンドが情感たっぷりに演奏を披露する様子にも歓声が上がった。
「後半戦盛り上がっていくよー!」と赤い衣装に着替えた楠田亜衣奈がふたたび登場すると、いよいよ季節は夏へ。「オーオーオーオーオー」とイントロから観客の大合唱が生まれた7月の楽曲「夏ハジメマシタ☆」では会場一体となった振り付けで踊り、「タイムリミットサマー!」ではサビでキックをする振り付けも。そして、かねてからの人気曲のひとつ「ラブリージーニアス」では観客から特大の歓声と大合唱が生まれた。彼女の楽曲はギターロックでもエレクトロポップでも“楽しさ”で観客を引き込むタイプのものが多く、ライブではその魅力が会場一体となった合唱や合いの手に繋がっていく。
以降は「群青シネマ」や「My yesterdays」などやや落ち着いたタイプの楽曲に続いて9月の楽曲「星空のリバーブ」を披露し、「くっすんの主張!」と切り出してツアーを支えてくれた人々への感謝が語られる。「一緒に泣いたり、笑ったり、喋ったり、踊ったり、たくさんの思い出があります。(中略)くすサポのみんな、大好きー!!」。そしてはじまったのはソロデビューを記念した10月の曲「Anniversary」。<これからもここにいるよって無邪気に笑った/(中略)君も一緒に未来の扉/探しにいこうよ>と歌われるこの曲では、「君のことが!」「大好き!!」とコール&レスポンスで盛り上がり、以降も『キテレツ大百科』の「お料理行進曲」から着想を得た「ロールロールロール!」では食材を切る振り付けを観客と一緒に披露。本編最後は<想像して? 1年分の記念日じゃない日も全部>と歌われる新作のテーマ曲「カレンダーのコイビト」で、観客と一緒に季節の移り変わりを楽しんだこの日のライブをまとめていった。それがカレンダーをテーマにした新作だけではなく、同時に「彼女とファンが共有してきた時間」にも向けられているように感じられたのは、筆者だけではないだろう。
会場一体の「くっすん」コールを受けてはじまったアンコールでも「ウェルカム・フューチャー」で「Choo Choo TRAIN」のように演奏中のバンドメンバーと一列になってグルグル回ったり、「オーマイダーリン」で会場一体となってタオルを回したり、「夢のつぼみ」で「一緒に歌ってください!」と両サイドのスクリーンに歌詞を表示して合唱したりと観客を飽きさせない。
最後は「POWER FOR LIFE」で大団円。気づけばこれまでリリースされたソロ曲が余すところなく披露され、デビューから今までを振り返りながら、最後まで満面の笑顔で観客を魅了していく。その瞬間一つひとつを楽しむような雰囲気は、「記念日もそうでない日も、それぞれが大切な一日」というメッセージが感じられる3rdアルバム『カレンダーのコイビト』の世界観を何よりも伝えるようだ。終演後もこの日の模様を収録したBlu-rayの発売決定を受け、「Blu-rayをご覧のみなさん、こんばんは。くっすんでーす!」とカメラにおどけるなど、最後までとにかく楽しそう。観客との親密な空間の中でこそ際立つ“ラブリージーニアス=楠田亜衣奈”の魅力が、溢れんばかりに詰まった一夜だった。
(メイン写真撮影=中村ユタカ)
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■リリース情報
ライブBlu-ray『楠田亜衣奈 2nd LIVE TOUR ‘17 YEAR♡♡♡♡♡♡♡』
2017年12月発売予定
2018年春 1stシングル発売予定
■イベント情報
『さんくっすん BIRTHDAY 2018』
2018年1月27日(日)大阪 なんばHATCH
2018年2月3日(土) 東京 豊洲PIT