島爺1stシングル『ガッチェン!』リリース企画

島爺×ナナホシ管弦楽団が語る、初の“アニソン”への意気込み 「物語とセットで育ってくれたら」

「今回はなかなかない引き出しを開けることになった」(島爺)

――ギターのフレーズの強さとか、粋な感じ、聴いていて奮い立つ感覚など、おふたりの“らしさ”は節々に出ていると思いますが、まさに「このアニメのための曲」という響き方をしていて、あまりの違和感のなさ、王道感に驚かされました。島爺さんは、最初に上がってきた曲を聴いたとき、どう感じましたか?

島爺:2パターン上げてもらって、タイトルはこの「ガッチェン!」と、しっかりした英語の2曲だったんですけど、タイトルを見た瞬間に「こっち(=「ガッチェン!」)やな」って(笑)。まだ何も聴いていないのに冒険心を感じて、タイトルだけでは汲み取れない何かがありそうだと。

――歌詞を見て、コーラスのフレーズを聴くとわかりますが、直感的ないいタイトルですね。ナナホシさんは、なぜこのタイトルに?

ナナホシ:イントロがギターだけだとさみしかったので、コーラスラインを入れようということになったんです。そこでうまいことハマるフレーズが、サビの最後の<合致&リンクした衝動!>の「ガッチェン!」で、これはいいなと。

――そこはかとなく“ヒーロー感”も感じる響きですよね。

ナナホシ:そうですよね(笑)。アニメにインスピレーションを受けた部分もあります。

島爺:実際にどっちのパターンも聴いてみて、やっぱりグッと来るのはこっちだったんですよね。スタッフの皆さんもこっちがいいと。

――少年少女を奮い立たせるような歌詞と、爽やかなギターサウンドがアニメにマッチしています。こういうタイプの曲は作ったことがあったのでしょうか?

ナナホシ:いや、今まではあんまりなかったですね。やっぱり朝アニメということは意識して、少し爽やか目にして。メインターゲットは子どもたちなので、ちょっと楽しい感じの耳につくフレーズをと考えて、それが「ガッチェン!」につながりました。子どもが口ずさんでたら、たぶんかわいいやろなって。ただ、やっぱり普段と作り方が違ったので、かなり悩みました。サビの原型は先にできていて、<あの頃 少年だった僕を 僕が追い越した>というフレーズがあるから、Aメロには少年だったころの自分がいないといけない。それで随分迷ったんですけど、アニメのワンシーンにヒントを得て、<おねしょでシーツに描いた世界地図が 本物かどうかなど 冒険してみないと 誰にも分からない>というフレーズを入れてみたり。前作の「OVERRIDE」がゴリゴリの曲だったし、島爺さんがこれを歌っていいのかと。

――82歳が<おねしょ>と歌えるかと(笑)。

ナナホシ:ちょっと違う話になっちゃいますよね(笑)。

島爺:僕はどの歌を歌うときも気にしているのは、声のトーンなんですよね。その曲にあったトーンにできる限り合わせて歌おうと。そのなかで、今回はなかなかない引き出しを開けることになったのは間違いないですね(笑)。さらに、キーがだいぶ高い。でも『デジモン』シリーズと言えばこの曲、という「Butter-Fly」(1999年/和田光司)と同じキーなので、変えたくなかったんです。

――なるほど。トーンという意味では、爽やかさとともに包容力も感じました。

島爺:そうですね。子どもの視点もありつつ、大人になった僕らの“通り過ぎた視点”というのもしっかり存在しているので。しっくりくるまで、かなり歌い直しました。

ナナホシ:僕はもう、曲を渡したら完全におまかせでしたね。

島爺:僕自身、「ここはこういう歌い方で」と文字情報でいただくより、最初のインスピレーションで歌っていくほうがやりやすいんですよね。それが、僕が「ボカロ」文化、「歌ってみた」文化の好きなところでもあって。僕がボカロ曲を歌うとき、あまり人が歌っていない曲を選ぶのも、イメージが固まっていないほうが面白いか、というところがあるんです。誰かと同じ歌い方になるのも嫌やけど、無理に変えるのも違うし……という感じで。

ナナホシ:実際に歌入れしてもらったら、艶もあり、倍音が気持ちよくて、曲の持っている明るさがグンと引き出されていると思いました。

――カップリングには、作中のバトルシーンなどに挿入される「BE MY LIGHT」が収録されました。大切な仲間がいるから前に進めるんだ、というメッセージ性の強い曲で、サウンドも切なく胸に迫るものがありますね。

島爺:原曲はもっとゴリゴリだったんですけど、だいぶ変わりましたよね?

ナナホシ:「ちょっとデジタル感を出してほしい」というお話をいただいて。こっちはアニメのストーリーがある程度、進んでからの制作だったので、イメージしやすかったですね。テーマは“スタイリッシュ熱血系”だと(笑)。「ガッチェン!」が赤い炎だったら、こっちは青い炎だというか。そして、「ガッチェン!」のカップリングなので、ある程度マイナー感は残そうと思いました。

島爺:歌うのがめちゃくちゃ難しい曲なんですけど、その“マイナー感”というか、切なさが入っている分、まだこれまで開けたことのある引き出しだったので、わりとすんなり歌えましたね。感情が出しやすかったというか。

――そして3曲目に、CDを買った子どもたちが驚くんじゃないか、と思いながら、大人のリスナーにはうれしい、「真夜中の微笑み」の弾き語りバージョンが収録されました。2012年に発表され、島爺さんの「歌ってみた」動画でも人気の楽曲ですが、一転して愛と孤独をセクシーに描いた楽曲です。

島爺:せっかくシングルを切るのに、2曲というのはちょっとさみしいなと思って、ここまできたら、ナナホシさんの別の魅力を伝える楽曲も入れたいと。それで、最初に浮かんだのがこの曲だったんです。『冥土ノ土産』の購入特典のバスツアーで歌ってみて、結構反応がよかったのもあって(笑)。ただ、そのときは、最後の転調を再現できなかったんですよね。転調前にアカペラを挟んで、その間にカポ(カポタスト)を挟む、という流れを思いついたので、そのまま収録してみました。

ナナホシ:でも、急にメロウになってCDを聴く人は驚くでしょうね(笑)。

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