AIスピーカーは音楽の聴き方をどう変える?  Apple HomePod、Amazon Echo、Google Homeの行方

 6月5日、Apple社が音声アシスタント・Siri搭載ホームスピーカー「HomePod」をアメリカ、イギリス、オーストラリアにて12月に発売することを発表した。HomePodは話しかけることで音楽再生やニュースなどをチェックできるAIスピーカーの一種だ。こうしたAIスピーカーはAmazonによる「Amazon Echo」、Googleによる「Google Home」など、徐々にその数を増やしている。こうしたAIスピーカーは今後の音楽の聴き方にどう影響していくのか。最新の音楽テクノロジーや海外の音楽ビジネス事情に詳しい、音楽&テクノロジービジネスプロデューサー・福山泰史氏に話を聞いた。

「年々音楽を再生するための動作や時間が減っていますよね。これまではCDをリッピングして、iTunesに入れて……という工程を踏んでいたのが、スマホを開いてApple MusicやSpotifyにアクセスするだけになった。AIスピーカーでは再生ボタンを押すことすらしなくていい。音楽を再生するまでのUIがゼロに近づいているんです」

 これまで以上に簡便に音楽を聴ける、というのがAIスピーカーの何よりの利点だろう。続いて福山氏は今回発表されたHomePodの新しさについても語ってくれた。

「HomePodは、“Musicologist”というこのボーカルは誰なのか、このバンドのドラムはどういう人が叩いているのかを聞ける機能を全面に押し出しています。Apple=音楽に対して愛が深い企業だ、というアピールにも感じられます。また、2台繋げてぺアリングできるというのは、他社のスマートスピーカーにはない機能で良いですね。価格が349ドルと他のスピーカーよりも高価ですので、音質面でも期待できるのではないでしょうか」

 音楽好きにとっては試してみたい機能も多いAIスピーカーだが、実際にAmazon EchoとGoogle Homeを使っているという福山氏は不満点もあるという。

「音楽好きな人やもっと音楽を深掘りしたい人が、実際に使う場面を想定しているのだろうか? と疑問に思っています。そういった人にとって、音声で何かを検索してスピーカーが読み上げて情報を得る、というのではちょっと物足りないと思うんですよ。今までは例えばネットで『麻布十番 レストラン』と検索したら瞬時に10軒出てきましたが、AIスピーカーに『1989年のトップ10』と言ったら1曲ずつ曲名とアーティスト名を実際に読み上げることになります。音声で得られる情報は、ものによってはUXが乏しくなることもあるということです。しかしAmazonではEcho Showという画面付きのAIスピーカーもあるので、そういう点では他社から1歩リードしているといえるでしょう」

 手軽に求めている音楽にアクセスできる分、一度に多くの情報を得られないという難点もあるようだ。さらに福山氏は音楽ストリーミングサービスへの影響も指摘した。

「例えばAmazon Echoでは、Spotifyの特定のプレイリストを再生する際には『Spotifyのこのプレイリスト』とコマンドしますが、そういう場合以外ユーザーにとっては今聴いている曲がどのサービスから再生されているのか、正直あまり関係ないですよね。このように、どのサービスにロイヤルティがあるのかも消費者には見えづらくなるかもしれません。だからこそ“独自のプレイリスト”などで各サービスが差別化を図り、AIスピーカーでも利用してもらえるかどうかを意識することがポイントとなっていく気がしますね」

関連記事