ヤバT、超特急、エビ中、tricot……斬新なアイデアが光る新作MV4選

 音楽だけでは伝えきれない感情や世界観を視覚的に表現してきたMV。近頃はその枠を超え、楽曲とあわせてMVそのものが注目を集めるケースが増えている。

 その背景には、ビジュアルエフェクトソフトや撮影機材といったテクノロジーが進化を遂げ、映像の可能性が広がっていることがある。さらに、比較的容易に製作できるようになった影響もあり、秀逸なアイデアを持つ映像が低予算で次々と生み出されている。本稿では、最近公開されたMVの中でも、とりわけ撮影技法やアイデアが斬新な作品を紹介したい。

ヤバイTシャツ屋さん「無線LANばり便利」

ヤバイTシャツ屋さん「無線LANばり便利」MV

 前々作「あつまれ!パーティーピーポー」をロサンゼルス、前作「ヤバみ」を屋久島でそれぞれ撮影したため製作予算が底をつき、ボーカル・こやまたくやの自宅で撮影された低予算MV。映像の終盤にLAだったことが明かされる「あつまれ!パーティーピーポー」の流れと同じく、今回も最後にサプライズが用意されている。寝起きドッキリ的なMVで、ドラム担当のもりもりもとに「せめてドラムスティックを持て」と突っ込みを入れたくなるMVだが、彼らが纏っているシュールな雰囲気とマッチしている。“寿司くん”名義で撮影を行ったこやまは、ヤバT以外にも岡崎体育のMVを手掛けている。

私立恵比寿中学「感情電車」

私立恵比寿中学「感情電車」MV

 私立恵比寿中学のメンバー自らが、箱根旅行の模様をスマートフォンで撮影したMV。観光名所を和気藹々と巡る姿や、浴衣姿で旅館を満喫する様子など、彼女たちの素の表情を垣間見ることができる。手ブレやハレーションのある映像は、ホームドラマのようで温かみを生み、田村歩美(たむらぱん)が提供した楽曲との相性も良い。2017年2月に他界した松野莉奈の担当カラーである青色が、メンバーの服装や背景の中に散りばめられており、ファンの間では感動的なMVとして話題になっている。

超特急「gr8est journey」

超特急「gr8est journey」MV

 超特急の各メンバーが異なるバージョンを持つ全7種類のMV。スマホを再生デバイスとして活用した縦型MVになっており、再生したスマホを横並びにすることでひとつの作品になる。繋げた映像を電車の窓のように見立てたり、超特急メンバーのコメントがタイムラインで流れるなど、スマホ独自の特徴が活かされている。昨年、縦型MVでlyrical school「RUN and RUN」がカンヌの広告賞を受賞し話題を呼び、スマホにあわせた縦型MVが広く認知された。手軽な撮影も行える上、視覚的な革新性を持つスマホの登場によって、MVの幅が広がったことは間違いないだろう。

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