兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第16回

Theピーズ初武道館に向け、盟友たちが“エール” 兵庫慎司のARABAKIスペシャルライブレポ

6.日が暮れても彼女と歩いてた

 バックヤードに増子直純が「人情居酒屋ずみちゃん」を開店、そこに出演アーティストが来てトークをし、後日フジテレビNEXTでの放送時にその模様もオンエアーーというのが『ARABAKI』の定番になっている。というわけで、ずみちゃん店主の扮装で、ピーズ30周年武道館のノボリを掲げて登場。

増子直純

 で、歌うはTheピーズ1993年の名盤『とどめをハデにくれ』収録の「日が暮れても彼女と歩いてた」。後半の「日が暮れても彼女と歩いてた」の部分が、歌詞カードはそのままだが途中から「気がふれても彼女と歩いてた」と歌われる、ボロボロにシリアスで美しい曲で、ずみちゃんの歌もとてもすばらしいだけに、格好とのギャップが大きすぎて、「今ここでどういう気持ちになればいいのかわからない」という戸惑いが、一部オーディエンスに生まれる。ずみちゃん、後半ちゃんと「気がふれても」と歌ってたし。

 曲前にはる、そもそもは怒髪天の武道館のアンコールでずみちゃんが「俺たち武道館やったぞ! 次は誰だ?」と、ピーズの名前も挙げたのが始まりだった、それが自分たちまで回ってきて本当になった、という話をする。

7.底なし

奥田民生

 前日のユニコーンの出演時はいっそうモジャモジャになった頭髪をさらしてオンステージ、「レキシです」と自己紹介していた奥田民生が、今日はハットありで登場。「同い歳だけどさん付けで呼んでしまう」「トモくんはトモくんて呼べるのにはるさんになってしまう」みたいな話をお互いしてから、10年前のSHIBUYA-AXでも選んだ「底なし」をプレイ。

 OTとアビさんが向かい合って、カウントなしで「せーの!」という掛け声であのイントロのリフを弾き始めた瞬間、鳥肌もんのかっこよさだった。OT、後半でギターソロをばっちりキメる。曲終わりではる、「最高のひとときですね。もうこんなことは絶対ない」と歓喜の言葉を述べる。

8.クズんなってGO

 「30年前に会いたかったね。でも30年前はまだ生まれてないね」というはるの紹介で、SHISHAMO宮崎朝子が登場。「私だけ違う……」と、白地に赤プリントのハッピを気にする彼女に(女性用だったらしいです。で、女性でステージに上がったのはスタッフ含めて彼女だけでした)、「みんな50すぎのおっさんの中にねえ。おっさんたちも30年前は20歳だったんだよ?」などと言葉をかけるはる。あと、SHISHAMOがライブの終演後にピーズの曲をかけてくれていることを話して、「開演前もです、ずっとです」と訂正されたりもする。

SHISHAMO宮崎朝子

  彼女が初めてピーズを聴いて衝撃を受けた曲だという「生きてれば」を選ぶかな、と思ったら、「クズんなってGO」だった。が、すごかった、これが。はる曰く、彼女の声域に合わせてキーをBに変えたそうだが、声の使い方といい吐息の入れ方といい、こんなに女性が歌ってハマる美しいラブソングだったのかこの曲は! と驚く歌いっぷり。作詞家・作曲家・プロデューサーとして圧倒的にすぐれているのでそっちに注目しがちだけど、シンガーとしても図抜けた能力であることをピーズファンに知らしめた。

 曲を終えてはる、「『うすべったいじいさん』って言ったな!」。そういう歌詞なのでしょうがないのですが、シンちゃんも「練習の時にそこでドキッとした」そうです。

9.デブ・ジャージ

 1stアルバムに収録された時は普通にはるが歌っていたことをもはや誰もが忘れそうなほど「ライブでアビさんが歌うやつ」として認知されているこの曲。アビさんはギター下げたままハンドマイクで熱唱、代わりにウエノコウジに続く告知なしゲスト=フラワーカンパニーズ竹安堅一がギターを弾く。

安孫子義一フラワーカンパニーズ竹安堅一

 ただしアビさん、ソロ明けの一発目の「♪デブジャージに」かぶさるブレイクのところの目立つフレーズは自分で弾き、それをあとではるにつっこまれる。後半は、はるさんアビさんのツインボーカル状態に。曲が終わると、竹安、そっと去る。

10.このままでいよう

the pillows山中さわお&真鍋吉明

 the pillows山中さわお&真鍋吉明(3人目の告知なしゲスト)が登場。さわお曰く「ピロウズとピーズが全員いる」。で、ツインギター、さわおメインボーカルで「このままでいよう」。本当にもともとこの5人編成のバンドであるかのような自然さだった、ステージ上のたたずまいも、出ている音も、さわおの「他人のバンドで他人が作った歌」感がまったくないボーカルも。

 なお、さわお、「さっき朝子ちゃんの時、『うすべったい じいさんが』のところでシンちゃんがビジョンにぬかれた。悪意がある!」と指摘、一同爆笑。

佐藤シンイチロウ

11.やっとハッピー

YO-KING

 真鍋吉明が残ってツインギター編成、ボーカルはYO-KING。10年前のSHIBUYA-AXでも歌ったこの曲を歌う。ちなみにAXの時は2曲で、もう1曲は「カラーゲ」でした。そういえば真心ブラザーズ、2001年に活動休止する直前の時期は、リズム隊をはる&シンちゃんに依頼して、4人編成でライブをやっていた。その仕事で、はるが久々に人前でベースを弾くようになったことで、「これ、ピーズ復活するんじゃないか?」というファンの期待が高まり、翌年2002年に本当に復活したことを、観ながら思い出したりしました。曲の後半で、アビさん×ピーちゃんでギターバトルを聴かせる。

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