カバーアルバム『この歌がいつか誰かの決心になりますように』インタビュー
naNamiが語る、アニソンカバーを通じて描いた“新たな夢”「名曲と呼ばれるような曲を書きたい」
「ボーカリストとしては曲に寄り添えないといけない」
ーー80年代から90年代にかけては、一般のアーティストがアニメのために歌を書き下ろすことが今よりもっと多かったですからね。あと、もうひとつこのアルバムに感じたのは、ボーカルなんです。こういう唄い方になるとは予想していませんでした。
naNami:みなさんの思い出がたくさんある曲たちで、聴く人はその原曲への思いが強いだろうから、一方的になりすぎてはいけないな、と思ったんです。寄り添えるような歌声がいいだろうなと。“ななみ”は今まで、どちらかというと一方的に「私はこう思う」とか「私はこのメッセージを伝えたい」という唄い方が多かったんですけど、今回はあくまでみなさんの思い出が中心にあるアルバムになってほしかったんです。私がそこに色を付けているだけで、あたたかくなれるようなアルバムになってほしくて。だから唄い方もいっぱい試したんですよ。ディレクターと「この唄い方がいいですかね?」とか話しながらでしたけど、一番寄り添えるような歌声がこの唄い方だったんですよね。それで統一することにしました。
ーーなるほど。かなり唄い込んで、これにたどり着いたんじゃないかなという気がしたんです。
naNami:そうですね、唄い込みました。普通じゃいけないだろうと思って。そのぶんレコーディングはけっこう大変でしたね。唄い方を180度変えるので、すごく慎重に、繊細に、ブレスも含めて全部が歌だと思って。おかげでいろんな発見があって、濃かったというか……。ひとつだけの唄い方は声に対して負担があるとか、学んだこともたくさんあります。今まで応援してくれてる方々には、きっと私らしさも期待していただいてるとは思うんですけど、ここでは新しい私を、懐かしく、新しく感じていただきたいなと思います。
ーーウィスパーボイスで唄っている曲も多いですよね。これはボーカリストとして相当努力したんだろうなと思ったんです。
naNami:ありがとうございます(笑)、気づいていただけて。シンガー・ソングライターとしては自己主張というか、伝えたいことの芯がはっきりしていたほうがいいと思うんですけど、ボーカリストとしては曲が軸にあって、それに寄り添えないといけないと思います。それでいろいろ工夫はしたいなと思い、時間をかけましたね。
ーーとくに気を配ったり、心をくだいた歌はどれですか?
naNami:「ロマンティックあげるよ」(『ドラゴンボール』エンディング曲)や「はじめてのチュウ」みたいなかわいらしい曲は、今までの“ななみ”では苦手なジャンルだったんですよ。でもボーカリストとしては苦手じゃダメだろうと。唄い方ももっと女性らしさを心がけましたし、「はじめてのチュウ」に関してはキテレツの<やった やったよ>というセリフがあるんですけど、いかにそれをメロディに直して曲っぽくするのかを頑張りました。いろんな<やった やったよ>を録りましたね(笑)。
ーーでは、感情や意味に入り込むのに近づくのが難しかった曲はどれですか?
naNami:ああー……「やつらの足音のバラード」はどう唄おうか?と思いました。何より、何もないところから命が生まれて、恐竜が生まれて、人類が誕生してやってきた、という歌なので、壮大なアレンジになってますし。それは今までの私の歌い方であれば得意なんですけど、ウィスパーボイスでこの壮大さを表現するのはすごく大きな課題でしたね。最後に唄いあげたいところなんですけど、最初も最後も、ウィスパーの加減で唄って。寄り添うという形では、すごく試行錯誤しましたね。
ーーその努力の跡が見られますね。では『この歌がいつか誰かの決心になりますように』というアルバム・タイトルは、どういうところから思いついたんですか?
naNami:カバーなのに、何で自分自身の主張があるタイトルなんだ?っていう感じですよね(笑)。このアルバムの懐かしい曲を聴くことで、みなさんには、そのアニメを見ていた頃の自分を思い出していただけると思うんですよ。「あの頃って自分、何してたかな?」とか「あの頃は何歳だったかな?」とか。その時食べたご飯の味だったり、その時自分が思っていたこととか、見ていた夢とか、なりたかった大人とか……曲を聴いてそういうものを思い出してもらえたら、明日からの何かのきっかけだったり、選択に関しての決心になるんじゃないのかなって。「今の自分はどうなんだろう?」とかね。それは今じゃなくて、いつかかもしれないですけど、このアルバムを聴いたことによって、何かのきっかけになればうれしいなと思って、このタイトルにしました。