Flower『MOON JELLYFISH』インタビュー(前編)

Flower×レーベルスタッフ特別対談 グループの最大の強みは「パフォーマンスとボーカルの黄金比」

深い表現力や洞察力をストイックに身につけて、可能性を広げていきたい(佐藤)

重留真波、佐藤晴美、鷲尾伶菜

ーー先日追加公演を終えたばかりのツアー『Flower Theater 2016 〜THIS IS Flower〜』では、個々の強みを生かしたパフォーマンスが練り直されていたり、鷲尾さんが話してくれたような「過去楽曲の再解釈」も多く行われていました。このツアーを通した発見のなかで、特に印象に残ったものはありますか?

藤井:今回のツアーでは晴美が「さよなら、アリス」を1人で踊っていたのですが、間奏のダンスも結構長めに時間を取っていて。あれを大掛かりな演出なしで、パフォーマンスのみで乗り切るのはFlowerにしかできないことだなと強く感じました。男性目線の歌詞をどう表現するのか気になっていたのですが、晴美は歌詞の延長線上にある、追いかけられる側の女性の気持ちーー彼女もまた苦しんでいるという新しい視点を用意していて、すごく面白かったです。

佐藤晴美(以下、佐藤):8×8(8カウントを8回)を1人で踊ると聞いて、最初はどうしようと固まってしまったのですが(笑)、そこから開き直って「これを今回の課題にしよう」と思いました。萩花さんがFlowerにしかない世界観があると言っていましたが、まさにその通りで。私も踊りながらその世界観にどれだけ助けられたか。音の中でどう自分が物語を作って表現しようと考えたときに、「ただの音だったらこういうストーリーは絶対付けられなかったよな」と思いますし、自分の中でもストーリーを組み立てながらパフォーマンスすることもできました。今回のツアーを通して、自分が表現したい事とFlowerのコンセプトがすごくマッチしていて、それがグループの魅力でもあることに気づくことができました。

藤井:前回も「let go again feat.VERBAL(m-flo)」で長いこと踊ってたよね。次は無音でやってほしいかも(笑)。

佐藤:それは大きな試練になりそう……(笑)。

重留:あと、パフォーマンスの特徴でいうと、Flowerって伶菜をストーリーの主人公にして、私たちが「主人公の感情」になりたがることが多いんですよ。例えば「人魚姫」では、苦しさを全面に出してみたり、ステージ全体を使って伶菜に向けた感情を表現してみたり。そういう視点で見ていただくと、「この表現はこういう感情なのかな」と想像できて楽しめると思います。基本は立って踊るのですが、感情が高ぶるとフロア(床技)に入ることも多いです。あと、一人ひとりがソロで踊るのを見て「この子はこういう表現をするんだ」とわかるので、ライブやツアーでの体験は貴重だなと改めて思いました。

藤井:ライブを通じて思った大きなことはもう一つあって。たまに「もうちょっと明るい曲をやった方がいいよね」とアドバイスをいただき、自分たちでも必要かもしれないなと考えることがあるのですが、今の立ち位置でもっと突き抜けることで、沢山の人にFlowerを理解してもらえると思っています。『Flower Theater 2016 〜THIS IS Flower〜』でやったことにアートの要素をもっとプラスしていき、唯一無二のポジションを作っていきたいと強く感じました。Flowerにとって小竹さんの歌詞と鷲尾の歌は絶対的な強みですが、パフォーマーはしっかりとそれぞれの世界観をグループにも反映させて、自分たちがいる意味や表現する価値を強くしていきたいです。

ーー平井さんはそんな彼女たちの努力や葛藤を見て、何を感じましたか?

平井拓

平井:以前はレコード会社のスタッフとして「もっとこういうことを」という要望を出していましたが、いまは個々のレベルが格段に上がって、そんな口を挟む余地はなくなりました(笑)。でも、彼女たちのパフォーマンスを見た上で、しっかり感想だけは言おうと思っています。メンバーがその感想に対して必ず何かを考えてくれていて、客観的に見てもアーティストとして素晴らしいなと感じます。「アーティスト」とは、言葉の通りアートを体現できる人を表すわけですが、そういう意味では6人ともすごく「アーティスト」然としているし、彼女たちと関わって仕事をするなかで嬉しいポイントですね。

重留:拓さんみたいに、パフォーマーの感想を言ってくれる人ってなかなかいないんです。もちろん伶菜と歌のことをしっかり話し合うことも多いのですが、昔ダンサーだったのかなというくらい、パフォーマーのこともしっかり見てくださっているんです。

平井:「歌」という抽象表現に対して、Flowerは実際に歌声と表現方法を音で担保するボーカリストと、視覚で歌うパフォーマーの両方がいるんです。そのアートフォームは本当になかなかないと思いますし、これだけ形のないものを形のあるように表現できるグループは中々いないのではないでしょうか。

重留:今のお話もそうですし、すごくメンバーと同じぐらいFlowerのことを考えてくださっていますし、理想的なアーティストとレコード会社スタッフの関係だと思います。アドバイスもいただけますし、ツアーをやる度に毎会場来て下さったりと、愛情をすごく感じます。

中島美央

中島:確かに、振りを付ける時は歌詞をすごく読んで、伶菜の歌声もちゃんと聴いて、そこにどうやって体で気持ちを乗せようと考えるので、ちゃんと伝わっているんだと感動しました。

ーー今回は平井さんに参加いただいてるので、スタッフが思うFlowerの最大の強みについても訊かせてください。

平井:最大の強みですか……。いまは1つの点をピックアップするのが難しいくらい総合力が高くなったので、「パフォーマンスとボーカルの黄金比」だと思います。どちらかだけを抜き出しても成り立たない次元にいるというか。変な例えですが、カフェオレとして完成したものから、ミルクだけを抽出することはできないのと同じですよね。

ーーなるほど。今後もその黄金比を武器にして成長していくと思うのですが、そこにプラスしてFlowerが身につけていくべきものがあるとすれば?

平井:歌唱力やダンス力といったものではないことは間違いないですね。少し話が逸れるかもしれませんが、表現者とそうじゃない人の区別って「感じる力」の有無だと思ってるんです。例えば失恋の話を聞いた時に「あー、恋が終わったんだな」と思うことと、その向こう側にどんなストーリーや感情があるかを考えること、つまり提示された世界観をその額面通りに読み取るのではなく、背景までしっかり感じられることが表現者かどうかの境目な気がしていて。Flowerのメンバーはまさに現在が多感な時期であり、感性がどんどん鍛えられている瞬間だと思いますし、この20代の期間をどう過ごすかで今後のFlowerが芳醇なものになるのか乾いたものになるのかを決める気がします。

重留:私もそう思います。最初は言われた言葉の意味を100%理解できないことも多かったですが、20歳を超えるくらいから、自然と興味を持つことや知識も増え、一つの物事に対してもいろんな考え方ができるようになりました。もちろん、今は贅沢な環境をいただけているからこそ、勉強する時間が自分にはあるんだと思うので、それだけは忘れないようにしたいですね。

佐藤:今の拓さんの話を聞いて「Flowerに足りないものはなんだろう」と考えたのですが、これまでは歌詞を見て切なく感じたら、それに合わせて切ないものを表現していたんです。でも、これからのFlowerは「こういう風に表現したらどう受け取られるだろうか」とか「自分はこう思っていても、その気持ちを伝えるにはそのままの表現では足りないかもしれない」という風に、見ている人の目線に立ち、考えて表現する能力を鍛えなければと思いました。メンバーも全員大人になって感じることも増えてきたので、より深い表現力や洞察力をストイックに身につけて、可能性を広げていきたいですね。

藤井:拓さんもそうだし、今関わって力を貸してくださるスタッフさんたちが、インプットの重要性を理解してくれているのは、本当にありがたいことだと思います。アーティストとして日々色々な表現をしているなかで、こちら側の意図とはまったく違う捉えられ方をされることもまだまだ多いんです。しょうがないことではあるのですが、できるならば1人でも多くの方に自分たちの本意が伝わると嬉しいですよね。

重留:まさに今回のツアーはその課題を強く感じました。メンバーの中で「軸はブラさない」と決まっていたので乗り越えられましたが、色々な意見があるんだなと勉強になりましたね。

坂東:SNS周辺も含め、今がまさに時代の変わり目だと思うので、どんどん真っ白なところに飛び込まなきゃいけないタイミングだと思うんです。周りのスタッフさんが色々なことを考えてくれているので、私たちはチャンスをいただける限りはチャレンジしていきたいですし、出来るだけ色々な意見を交換したい。

藤井:MVについても、絶対に自分たちがちゃんと納得した上で「こういう作品を作りたい」と描いたものを形にしたいですし、一欠片も無駄にしたくないんですよ。時代の変化が迫ってきているとしたら、自分たちもどこかで変わったり進化するべきだと思うので、そのきっかけとなる存在になれるように頑張りたいです。コアなシーンでは面白いことが起こっているので、より多くの人たちが質の高いものを受け取れるようになればそれに越したことはないですよね。時代を先導する女性グループを目指していきたいですね。

【後編へ続く】

(取材・文=中村拓海/写真=下屋敷和文)

「MOON JELLYFISH」ミュージックビデオ

■リリース情報
『MOON JELLYFISH』
発売:4月26日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥1,500+税
通常盤(CDのみ)¥1,000+税
期間生産限定盤(CDのみ)¥463+税

<収録曲(タイアップ情報)>
初回生産限定盤
1.MOON JELLYFISH(TBS系テレビ「ひるおび!」4月度エンディングテーマ)
2.とても深いグリーン

通常盤
1.MOON JELLYFISH
2.とても深いグリーン
3.カラフル ”a touch of jazz“ mix
4.MOON JELLYFISH (instrumental)   

期間生産限定盤
1.MOON JELLYFISH

<DVD収録内容>※初回生産限定盤のみ
1.MOON JELLYFISH  Music Video 

■配信情報
ベストアルバム「THIS IS Flower THIS IS BEST」
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■関連リンク
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