欅坂46『デビュー1周年記念ライブ』レポート

欅坂46はデビュー後1年でどう成長したか 代々木公演にみた“総合力”の向上

 

「今まで3列目だったメンバーが『二人セゾン』でフロントに行ってから、ダンスもすごくキレが良くなった。というか色々レベルアップした」(長沢菜々香)

 こうして1年の節目を迎え、各曲のパフォーマンスを見ると、先述したようにフロントが毎作変わっているという面や、入れ替わりもなく21人選抜がずっと続いていることも含め、他のグループにはない団結力の高さを感じる。それは演出に関しても同じだ。渡辺梨加を主役とする「キミガイナイ」では、無数の球体照明がプログラミングされ、幻想的な風景を演出。曲前には歌詞にも記されているマーラーの交響曲が流れるなど、歌詞と連動した演出が行われたり、「僕たちの戦争」では、現役美大生メンバーである佐藤詩織の手がけるグラフィックを画面に投影するなど、各メンバーになるべくスポットを当てようという気概も見ることができた。

 

 演出のハイライトは、メンバーが昨夏放送のドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)内での制服衣装を着て歌唱し、曲中には1年の思い出が詰まった写真がビジョンに映し出された「制服と太陽」といえるだろう。全体としては、昨年のワンマン同様、48・46グループ内で唯一の演出として、各楽曲のクレジットが作詞作曲だけではなく、編曲までしっかりとビジョンに表示されていたのも興味深い。こと日本のポップスにおいて、歌番組などでは編曲家のクレジットが表示されることはなかなかない。クリエイターの顔をしっかりと立て、フックアップしてみせる欅坂46チームの姿勢は、近い将来アイドル・J-POPシーンにおけるパワーバランスを変容させてくれると信じたい。

「初めて“ダンス曲”に挑戦したのが『語るなら未来を……』で、ダンスを覚えるのが大変で時間もなくて、ボロボロな状態でした。楽しい時間を一緒に過ごすのも大事ですけど、辛い時を乗り越えたから一つになったと感じます」(齋藤冬優花)

 「サイレントマジョリティー」で大きな話題を呼んだTAKAHIROによる振り付け。以降どの楽曲でも、彼による歌詞の世界観を最大限に表現したコレオグラフが付けられており、この一年でどのグループにも負けない強靭な武器となった。そのダンス面の核となるメンバー・齋藤冬優花は、TAKAHIROから絶対的な信頼を受け、「語るなら未来を……」のMV撮影では彼と意見交換をしながら、各メンバーに振りの意図を伝えるなど、パフォーマンスの底上げにも大きく貢献している。

 

 本編ラストに披露された4thシングル表題曲「不協和音」は、その努力が結実した楽曲といっていいだろう。格闘技にも似たハンドスタイルを多く取り入れ、これまでよりも数段飛ばしで難易度が上がった振り付け。MVはカット割りが細かく、テレビ番組でも寄りの画が多いが、ライブで見ると改めてその難しさに驚くとともに、「不協和音」はライブの場で初めて完成するのだと思わされる。これらを当たり前にパフォーマンスできるのは、齋藤を筆頭にして、日夜TAKAHIROとともに1年間ダンススキルや表現力を磨き上げたからこそだ。これがあと2、3年と続けば、アイドルシーンでも稀有なパフォーマンス集団へと進化するだろう。

 

 この日のハイライトは「不協和音」だと多数のファンは挙げるだろうが、個人的には4thシングル収録曲で、ライブ初披露となった「エキセントリック」についても記しておきたい。クラブジャズ風のトラックに合わせ、Aメロでは90'sJ-POP風のラップが入り、以降はシニカルな歌詞とともに<I am eccentric 変わり者でいい>とマジョリティーの中での孤独が歌い上げられる。一人ひとり違うユルめのヒップホップウェアに、力強さとは真逆の振りやフロア(床技)を使ったダンスと、衣装も演出も異質さを感じさせるものだった。秋元康氏は、755でこの曲について「表題曲になるかもしれなかった曲」と綴っているが、パフォーマンスを見てその理由が今一度理解できた気がする。

 この日は様々な発表ごともあった。まず大きなものとしては、けやき坂46のメンバーが増員すること。これは欅坂46をしばらく21人のチームとして固定していくことへの決意表明のように思えるし、以前記した“別働隊としてのけやき坂46の可能性”(http://realsound.jp/2017/04/post-11858.html)を補強するトピックといえるだろう。

 

 そして、「W-KEYAKIZAKAの詩」が撮影当日欠席となった高瀬愛奈の為に再撮影されること、「overture」のコーラスをファンに歌わせ、以降のライブで使用することも伝えられた。いずれも、グループ内、およびグループとファンの絆をより強固にするためのものだろう。冒頭に1年で培った“総合力の高さ”を感じたと綴ったが、2年目以降はさらに深まった絆を武器に、ときに成長痛も経験しながら彼女たちは邁進し、こちらの想像をきっと超えてくれる。今回のライブは、その確信を得るには十分すぎる時間だった。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
欅坂46 4thシングル『不協和音』
発売2017年4月5日(水)
価格:初回仕様限定盤 (CD+DVD)  TYPE-A〜D ¥1,528+税
通常盤(CDのみ)¥972+税

<初回仕様限定盤共通封入特典>
・「全国握手会イベント参加券orスペシャルプレゼント応募券」1枚封入
・「メンバー生写真」ランダム1枚封入

<CD収録内容>
・TYPE-A
1.不協和音
2.W-KEYAKIZAKAの詩
3.微笑みが悲しい
4.不協和音 off vocal ver.
5.W-KEYAKIZAKAの詩 off vocal ver.
6.微笑みが悲しい off vocal ver.

・TYPE-B
1.不協和音
2.W-KEYAKIZAKAの詩
3.チューニング
4.不協和音 off vocal ver.
5.W-KEYAKIZAKAの詩 off vocal ver.
6.チューニング off vocal ver.

・TYPE-C
1.不協和音
2.W-KEYAKIZAKAの詩
3.割れたスマホ
4.不協和音 off vocal ver.
5.W-KEYAKIZAKAの詩 off vocal ver.
6.割れたスマホ off vocal ver.

・TYPE-D
1.不協和音
2.W-KEYAKIZAKAの詩
3.僕たちは付き合っている
4.不協和音 off vocal ver.
5.W-KEYAKIZAKAの詩 off vocal ver.
6.僕たちは付き合っている off vocal ver.

・通常盤
1.不協和音
2.W-KEYAKIZAKAの詩
3.エキセントリック
4.不協和音 off vocal ver.
5.W-KEYAKIZAKAの詩 off vocal ver.
6.エキセントリック off vocal ver.

<DVD収録内容>
・TYPE-A
1.不協和音 Music Video
2.W-KEYAKIZAKAの詩 Music Video
3.石森虹花 個人PV 
4.上村莉菜 個人PV
5.小林由依 個人PV 
6.原田葵 個人PV
7.長濱ねる 個人PV 
8.柿崎芽実・佐々木美玲 ペアPV

・TYPE-B
1.不協和音 Music Video
2.チューニング Music Video
3.今泉佑唯 個人PV 
4.尾関梨香 個人PV
5.齋藤冬優花 個人PV 
6.守屋茜 個人PV
7.渡辺梨加 個人PV 
8.齊藤京子・高本彩花 ペアPV

・TYPE-C
1.不協和音 Music Video
2.割れたスマホ Music Video
3.小池美波 個人PV 
4.佐藤詩織 個人PV
5.志田愛佳 個人PV 
6.土生瑞穂 個人PV
7.渡邉理佐 個人PV 
8.潮紗理菜・加藤史帆・佐々木久美 トリオPV

・TYPE-D
1.不協和音 Music Video
2.僕たちは付き合っている Music Video
3.織田奈那 個人PV 
4.菅井友香 個人PV
5.鈴本美愉 個人PV 
6.長沢菜々香 個人PV
7.平手友梨奈 個人PV 
8.米谷奈々未 個人PV
9.井口眞緒・影山優佳 ペアPV

■イベント情報
4thシングル『不協和音』発売記念全国握手会
2017年4月29日(土)京都・京都パルスプラザ
2017年5月13日(土)愛知・ポートメッセなごや
2017年6月24日(土)千葉・幕張メッセ

4thシングル「不協和音」発売記念個別握手会
2017年4月30日(日)京都・京都パルスプラザ
2017年5月14日(日)愛知・ポートメッセなごや
2017年5月27日(土)千葉・幕張メッセ
2017年6月25日(日)千葉・幕張メッセ
2017年7月9日(日)神奈川・パシフィコ横浜
※個別握手会の詳細はforTUNEmusicにて

■関連リンク
欅坂46オフィシャルサイト
Twitter
YouTubeチャンネル

関連記事