TOSHI-LOW × ILL-BOSSTINOが語り合う“6年目”のメッセージ「自分たちのやれる最後の起爆剤がある」

TOSHI-LOW × ILL-BOSSTINO、“6年目”のメッセージ

「危ない橋を渡るしか道が残ってなかった」(ILL-BOSSTINO)

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一一それって表現者全員に共通する感覚ではないと思います。やっぱりレベルミュージックを志す人たち特有の意見でしょう。

TOSHI-LOW:その中でも、特にヒリヒリするのが好きなのが俺たちだよね。ゾクッとさせる部分に惹かれるし。だから90年代にTHA BLUE HERBが出てきた時なんて本当にびっくりした。当時のBOSSと、今こういうふうにやれるなんて絶対思えなかったじゃない?

一一初期は本当に怖かったですね。まぁ、ピリピリして他者を寄せ付けなかったのは当時のBRAHMANも同じですけど。

TOSHI-LOW:そうだね(笑)。だから俺、BOSSのまっすぐ進んで来てないところがすごく好き。

BOSS:そういうところが、俺たちの唯一の居所だよね。いいメロディといい詞を書いて天性の声を持ってっていう、俺は音楽的才能に祝福されたいわゆるミュージシャンじゃないんだよ。そんなの何も持ってない田舎モンの俺が、なんとかしてこの世界に憧れて、近づきたいって思いながらやってきた。最初は憧れでもいいけど、途中からは「誰も言わねぇんだったら俺が言ってやるよ?」ぐらいの、ひとつのかぶき者だよね? 危ない橋をわざわざ渡りたいわけじゃないんだけど、もうそういうことをやるしか道が残ってなかった。それが自分にとっての存在意義だったというか。俺もTOSHI-LOWも、誰も口に出さないことをデカい声で言い続けることによってなんとか存在してきた奴らだっていう気がする。

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一一もともと環境が似ているんですよね。パンクもヒップホップも90年代中盤からアンダーグラウンドで盛り上がり始めたけど、その潮流に乗っかることだけはしなかったし、あえて違う道を選んできた。

BOSS:ほんとだよね。俺が最初にBRAHMANっていうグループを認識したのは、パンクシーン云々とかじゃなくて、中国に行ってモノぶつけられてもステージ立ってたっていう話だったもん。誰も行ってない中国に一番最初に行って、絶対負けねぇって立ってた奴ら。ほんと格好いいって思った。そういう奴らが同世代に居たっていうこと自体が自分にとって嬉しかったし。

TOSHI-LOW:ド真ん中を歩んできたら、たぶんそんなのやる必要なかったんだよね。でもTHA BLUE HERBだってそうでしょ。出始めの頃は「ヒップホップじゃない!」って言われたこと、むちゃむちゃ多かったでしょ?

BOSS:いっぱい言われたね。

TOSHI-LOW:でも今、若いヤツらに「ヒップホップと言えば誰?」って聞けば「BOSS!」って答えがいっぱい返ってくる。そこなのよ。ほんとに本物だって認められるためには、それまでにあったものとは違うことをやらなきゃいけない。それは絶対苦労するし叩かれる道なんだけど。

BOSS:そうだね。

TOSHI-LOW:俺も、今ハードコアの先輩から「BRAHMANはハードコアパンクだ」って言われるのを素直に嬉しく受け止めてるの。それは俺らが先輩の物真似をしなかったからだし、「同じ階段を登らさせてください」なんて絶対に言わなかったから。だからこそ先輩たちも認めてくれるんだと思う。そこはBOSSにシンパシー感じるし、叩かれても何言われても自分のやり方でやってきたっていう、その強さはすごく感じる。もちろん、当時楽しかったかって言われたらそうじゃないんだけどね(苦笑)。ヒヤヒヤすることのほうが圧倒的多かった。

BOSS:でも、未だにそんな感じで歌ってるからね。たぶんそういうのが自分たちにとっての存在意義なんだよ。宿命っていう気がする。

一一そうやって90年代からサバイバルしてきた両者が、40代になった今、これだけ強烈なメッセージを残したことに大きな意味があると思います。

BOSS:だってこの国も来るとこまで来ちゃってるんだよ。どうしようもないことばっかりで。だからといって怒りだけで原発が止まるのか?って思うし、結局ただの反対と賛成に分かれちゃっていがみ合うだけ。そこに当事者誰もいねぇじゃん、みたいな状況をずっと目の当たりにしてて。ただ踊らされて、ただ争わされて、ただ戦わされてる、その間にどんどんいろんなことが決まっていっちゃう……みたいなことは歯がゆくもあった。

TOSHI-LOW:めちゃくちゃだもんね。実際、もう始まってんのかもしれないって思うことがある。ほら、第一次大戦が始まったのってオーストリアの皇位継承者が刺されたのがきっかけだって言うけど、その時には誰もこれが世界大戦だなんてわかってなかったはずで。でも歴史はそこから始まっていて。そういう意味で言ったら、もう第三次世界大戦が始まってるのかもしれないし、俺らはすでにその中にいるのかもしれない。でも、だとしても、俺たちがやれるのは無茶苦茶に踊り狂うことなんじゃないかな。

BOSS:今が結局どんな時代だったかっていうのは、後になってわかることだから。でも、とにかくこれを作って、ここに残しておいたっていう事実があるからね。この時代、この世代に、俺らみたいなヤツがいて、ばっちり脂も乗ってる時期にこういう曲を残すことができた。今となれば「あの時代にタイマーズがこんなこと歌ってたんだよね」って思うじゃん。相当早いと思うし、相当言い当ててる。でもこれから何百年、何千年続くと言われるあの厄介な代物との付き合いを思うと、この曲のメッセージは長く深く響くはずだと思う。だから、今、これを置いておく。それだけですよ。

(取材・文=石井恵梨子/写真=石川真魚)

■リリース情報
『不倶戴天 -フグタイテン-』
発売:2017年4月12日
初回限定盤(CD+DVD):¥1,667(税抜)
〈DVD収録内容〉
DVD「BRAHMAN 2016 BEST MOMENTS」(全10会場全10曲)
01. 賽の河原/ 百万石音楽祭 ~ミリオンロックフェスティバル~
02. BASIS / RUSH BALL 2016
03. SEE OFF / KESEN ROCK FESTIVAL 2016
04. BEYOND THE MOUNTAIN / MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!16
05. ARRIVAL TIME / AIR JAM 2016
06. ANSWER FOR... / 茨城県常総市災害復興支援イベント「Dappe Rock's」
07. 警醒/ MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2016
08. PLACEBO / ARABAKI ROCK FEST .16
09. 鼎の問/ 風とロック芋煮会2016 KAZETOROCK IMONY WORLD
10. THE ONLY WAY / RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
通常盤:¥1,111(税抜)
〈収録曲〉
1.不倶戴天
2.ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)
3.怒涛の彼方

■ライブ情報
『BRAHMAN TOUR 2017「戴天」』
4月12日(水)神奈川・横浜 BAY HALL
4月15日(土)愛媛・松山 W Studio Red
4月16日(日)香川・高松 festhalle
4月21日(金)福井・響のホール
4月22日(土)富山・CLUB MAIRO
4月24日(月)長野・松本 Sound Hall aC
4月27日(木)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
5月20日(土)福岡・DRUM LOGOS
5月21日(日)山口・周南 RISING HALL
5月25日(木)滋賀・U STONE
5月27日(土)大阪・Namba HATCH
6月6日(火)宮城・仙台 Rensa
6月7日(水)岩手・盛岡 CLUB CHANGE WAVE
6月15日(木)東京・新木場 STUDIO COAST

『THA BLUE HERB 結成20周年ライブ』
10月29日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
特設サイト

■オフィシャルサイト
BRAHMAN
THA BLUE HERB

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