TOSHI-LOW × ILL-BOSSTINOが語り合う“6年目”のメッセージ「自分たちのやれる最後の起爆剤がある」

TOSHI-LOW × ILL-BOSSTINO、“6年目”のメッセージ

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「足が動く、自然と気持ちが熱くなる、その先にメッセージが入っていく」(TOSHI-LOW)

一一そこでキーワードになってくるのが〈踊れ〉という言葉です。

TOSHI-LOW:現に法律でダンス風営法とか、あとは海でお酒飲めないとか、そういう現実があるじゃない? 俺たちが子供の頃に見てた世の中とは全然違うものになってきて、これでほんとに踊れなくなったら音楽やってる人たちなんか終わりだよね。でも終わりでも、それでもきっと俺らは踊るんだろうなっていう覚悟があるの。踊って、踊り続けて、最後を迎えるんだって。

BOSS:ただ敵を吊し上げて、「奴らはどれくらい間違ってるのか」を羅列するだけの曲だとつまらないし、TOSHI-LOWたちのライブを見てて感じてた、どうせやるならあのエネルギーを沸点まで持っていくような曲にしたかった。それは2人とも最初のビジョンとしてあったし、そこで出てきたのが「ええじゃないか」っていうキーワードだったよね。要は「だってもう踊るしかないじゃん!」っていう、そういう最後の狂乱まで持っていきたい。だって今の世の中そういう状態だよね。賛成反対に分断されて、争わされて、でも6年経ってもまだ何も答えは出てなくて、危険な状態でまだそこにあって、一方では風化しかけてる。「もう踊るしかなくね? そこで踊ったら何か浮かぶかもしんなくね?」みたいな。それが最初に2人で共有してたメッセージだった。

TOSHI-LOW:そう。市民革命とかじゃなくて、農民一揆みたいな感じ。

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TOSHI-LOW

一一それは、反原発デモでは何も変わらない現実に対する、ひとつの諦めとも言えるんでしょうか。

TOSHI-LOW:いや? 諦めではなくて。デモひとつで変わるなんて初めから思ってないけど、でもそれを認識するのにも6年かかった。世の中やっぱこういうもんなんだって思う。でも「だから仕方ない」じゃなくて、「世の中こういうものだからこそ、自分たちのやれる最後の起爆剤があるんじゃないか」って逆に思う。結局、言いたいことはいっぱいあるけど、音楽なんだから人が踊るものじゃないと伝わんないじゃん。切々と説教したいわけじゃなくて、やっぱりこれを聴いて足が動く、自然と気持ちが熱くなる、その先にメッセージが入っていく、っていうものじゃなきゃ。

BOSS:そう。すでに平成も幕末なんで、この混乱に乗じて一発カマそうぜっていうのは俺にもあった。「ここで一発、何もかも洗いざらい言っちまおうよ!」みたいな。それは諦めじゃなくて、せめて踊ってる間くらいは……っていうことだよね。諦めてないし、忘れることもできない。どのみち逃れられないんだったら、この音楽が鳴ってる間くらいは全力ではち切れようぜっていう。

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一一実際に曲はどんどん高揚していきますが、だからこそ強烈に響くのが中盤の静のパートです。〈怒りを抱えて生きてくのは疲れるんだ〉というセリフがすごく効いていて。

BOSS:そこはほんと、今回一番伝えたかった言葉。「お前には一生わからねぇと思う」って吐かれた言葉を世界に伝えるのが俺の使命の一つだとずっと考えていた。きっと自分の人生において……あれほどまでの巨大な理不尽さ、あれほどまでの深い絶望っていうのは、たぶんまだ経験してないんだと思う。もちろん理解しようと常に努めてるけど、でもこれは彼らじゃないとわからないことで。それをそのまま書いた。

TOSHI-LOW:この一行のために、これまでの言葉があったと思うような曲だからね。まさかそれを俺が言うとは思ってなかったけど。

BOSS:いや、あれはTOSHI-LOWが言うから響くんだ。代弁してんだよ、絶対。俺も今年の3・11にいわき行って歌ったけど、やっぱり地元の人たちは「ちゃんと代弁して欲しい」って気持ちと「簡単に触れて欲しくない」っていう気持ちが常にあると思ってる。で、今回のリリックは俺にとってもけっこう踏み込んでるけど、やっぱりある程度の痛みが生じないと、何かを崩すことはできないの。それは自分の表現としてずっとあることで。

一一ただ、勇気はいりますよね。

BOSS:うん。こうやって書いたことも、録音したことも、これからライブでやっていくことも「自分自身それに耐えられるのか?」とは思う。まだはっきりした自信はないけれども。でもタイマーズにしても(遠藤)ミチロウ先輩にしても中川(敬)先輩にしても、みんなシステムによって意図的に隠されてきた事をはっきり言うことによって何かを壊してきた人たちで。そういう先輩を見てると避けて通れねぇよなって思うよね。このバースが気に入らねぇんだったら……こういうふうになった世の中を恨んでくれとしか言いようがない(苦笑)。

TOSHI-LOW:使命感じゃないけど、今だから言えるっていうのはあるよね。10年前にこれやれたかって、絶対やってないの。「そういうんじゃないんすよ。もっと自分の中にあるものなんすよ」とか言ってたと思う。もちろん今もそうだよ? 闘ってるのは己なんだよ。でも、今見えてる現実も実際にあるわけで、見えてんのに見えないフリはできないっていうか。

BOSS:そうね。あと、これは表現してる人間の欲求として、言っちゃダメなこと、タブーなことを、思い切り引き剥がしてみたい。それを引き剥がしたらどうなるのか、その向こうにどんな顔があるんだろうって。やっぱり近づきたいよね、真理に。

TOSHI-LOW:うん。

BOSS:そこにいろんなルールだとか欺瞞だとかモラルがあったとしても、悪いけど、あればあるほど覗いてみたくなるのがこっちのやり方で。しかもこれ、言うても普通のことだよね? この歌詞に書かれてることって新聞ではほぼ毎日書かれてることでしかなくて。だからまぁ、迷いはあったけど、同時に「普通じゃね? ビビってねえでお前も化けの皮を剥がしてみろよ」みたいな感覚はある。

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