空想委員会が新作にこめた2017年の野望「脇役から主役にひっくり返ることができるかも」

空想委員会が語る2017年の野望

 前作『ダウトの行進』からおよそ1年2カ月ぶり、空想委員会の2ndアルバム『デフォルメの青写真』が4月5日にリリースされる。「デフォルメ」とはフランス語で、“対象を変形させて表現する”という意味。バンドのボーカリスト、三浦隆一のフィルターを通ってデフォルメされた世界が歌詞となり、それを受け取った聴き手もまた、各々のフィルターを通して自分の世界に投影させる。本作は、そんなデフォルメをするための「設計図=青写真」となる作品なのだ。

 この生きづらい世の中で、それでも日々を精一杯生きる人たちにエールを贈る楽曲と、ひたすら自己の内面へと深く潜り込んでいくシリアスな楽曲。それらが混在し、これまで以上に聴き手の心を深くえぐってくる。こうした領域まで歌詞の世界が進化したのは、三浦の中で一体何が起きたからなのだろうか。前回のインタビューと同様に、メンバー全員へインタビュー。途中、恋バナ的なトピックへと脱線しつつも、3人は真摯に答えてくれた。(黒田隆憲)

「キーワードとなる言葉の力が強くなければ成り立たない」(三浦隆一)

ーー今作は、歌詞が一歩踏み込んだものになってきている気がしました。

三浦隆一(以下、三浦):多分、先行シングル『ビジョン』くらいから変化してきているかもしれないですね。この曲はタイアップ(アニメ『遊☆戯☆王ARC-V』のエンディングテーマ)だったから、お題をもらって曲を作るっていうのを初めてやったんです。そこで引き出しが一つ増えて、それでまた自分の歌いたいことに戻ってきたのは大きいと思います。あと、ライブ会場に来る男子が、なんだか僕にそっくりで。「イケてないんだろうな」って思う人が多かったんですよ(笑)。そういう子たちが聴いて、ちょっと奮起するような、メッセージ性のある歌詞を書こうという気持ちもあったと思います。

ーーほんと、僕自身も非常に刺さるところが多くて。三浦さんのパーソナルな部分がかなり反映されているのかなと思ったのですが。

三浦:今作には、ツアー中に書いていた歌詞と、ツアーがひと段落してから書いた歌詞が混在しているんです。ツアー中の曲は、外向きの歌詞というか、さっき言ったように会場にいるみんなに向けて書いている歌詞が多くて。ツアー後の歌詞は、自分の内面にどれだけ深く潜れるか? みたいな歌詞になっていきました。曲でいうと、「何者」「恋とは贅沢品」「通行人『R』」「罪と罰」あたりですね。

ーーその辺りは非常にシリアスな内容ですよね。

三浦:あ、確かに。今回、言葉選びはすごく考えたんですよ。前は「こうして、こうして、〜」みたいな流れを歌詞で説明していることが多かったんですけど、今回は曲の中にキーワードをトン、トン、トンって置いていって、その隙間を埋めるのは聴く人次第っていう風にしたんです。それを効果的にするためには、キーワードとなる言葉の力が強くなければ成り立たない。そこはかなり意識したので、それがシリアスさに繋がっているのかもしれません。

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三浦隆一

ーー最後、〈助けて〉っていう歌詞でアルバムが終わるんですよね。

三浦:はい。「助けて」って、いつも思っていますね(笑)。この「罪と罰」を作ったのは、レコーディングの最後の方で。去年はライブをメチャメチャ頑張ったんですけど、そのせいで声が出なくなった時期があったんですよ。特に野音の時がひどかった。バンドにとって、一番大事な時期に声が出なくなるなんて……。「こんなに頑張ったのに、神様この扱いはひどいじゃないか!」って思っていました。僕、悪いことがあるといつも「バチが当たったんだ」って思うんですよ。

ーー子供の頃から?

三浦:そう。「この扱いは、一体なんの罰なんだろう?」って。でも思い浮かばないから、これはもう、生まれてきたこと自体が罪なのかも……とか。

佐々木直也(以下、佐々木):うわ、ヤバ!  

ーー太宰治じゃないですか(笑)。でも、歌詞にすることで、ちょっと落ち着くってことはあります?

三浦:あります。歌詞にして歌うことで、その感情を「手放す」ことができるので。かなり音楽には助けられていますね。

ーーこの歌詞は、SNSのことを歌ってもいるのかなと思ったんです。〈過ちの先 報い受ける仕組みの中 四六時中見られ〉〈許されない罪 許されない過去 許されない現在(いま)許されない未来〉って、今、誰かが失言しないか、叩く機会を虎視眈々と狙っているTwitterみたいじゃないですか。

三浦:あ、そういう見方があるのか。いや、完全にこれは神様と僕のことで。ずっと(神様に)監視されているみたいな。悪いことしたら、バチが当たるよ?みたいな。そういう意識で僕は生活しているので……。SNSと言われたのは初めてだな。でも面白いですね。いただきます、それ(笑)。

ーー(笑)。他に何か具体的なエピソードはありますか?

三浦:「何者」の歌詞は、今年の正月に八戸の実家に帰ったんですけど、その時に書きました。高校時代の「卒業したらどうなっていくんだろうな」っていう不安を思い出したんですよね。

ーー「何者」は、どこかに帰属していることの絶対的な安心感と、そこから解放される自由、その引き換えとしての恐怖が描かれていて。

三浦:そうなんですよ。僕ら脱サラも経験していますし、会社から出るときの不安とか、未だに思い出しますね。

ーー「恋とは贅沢品」の歌詞も、共感する人多いんじゃないですか?

三浦:多いですね(笑)。

ーー〈恋してるってどんなんだっけ? 思い出せなくなった なくても生きていけるけれど ちょっと寂しい〉と歌っていますが、どうなんですか最近は?

佐々木:飲み会みたいになってきた!

岡田典之(以下、岡田):毎年「結婚する」というのを目標に掲げてはいるよね?(笑)

三浦:相手もいないのにね(笑)。でも、色恋沙汰があるような場に、積極的に出向かないと、何も始まらないなっていうのは大いに反省するところですね。たとえ眠かろうが(笑)、呼ばれたら行かなきゃダメなんだなという意識はあります。こないだスタッフに「最近、三浦くん恋愛興味ないでしょ? ダメだよ仕事ばっかりしてたら」って怒られました(笑)。

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