MIYAVIが挑み続ける、新たな表現へのアプローチ「ギターという“刀”を持って乗り込んでいきたい」

MIYAVIが挑み続ける、新たな表現へのアプローチ

「俺たちにしかできない音楽」を常に模索していたい

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ーー単身ロサンゼルスに渡り、3カ月の留学を経て帰国後はKAVKI BOIZを結成しましたよね。そこではラップ、タップ、和太鼓やボディペイントなど様々なジャンルのパフォーマーと共演し、活動の幅を広げていました。そうした活動を始めたのはやはり、海外から日本を見たことが大きかったのでしょうか。
 
MIYAVI:そう思います。日本という殻に閉じこもったままだったら、見えなかった景色が広がったのは確かですね。やっぱ人って、「ワクワク」してナンボなんですよ。それを人と共有し、世界に与え続けたい。そのためのツールが今はギターであり、もしかしたらそれがギターじゃなくなる日も来るのかもしれない。ただ、当時の僕は。色んなジャンルの人たちとコラボして、そこで生まれるケミストリーに「ワクワク」していたいんです。自分がワクワクできていなければ、人に伝えることなんて出来ないし、そういう意味でもたくさんのセッションをしていました。
 
ーーDISC 1には、BOBOさんと2人体制になってからの楽曲が並んでいます。現在のMIYAVIさんの音楽スタイルは、そこで確立された部分が大きいと思うのですが、そもそもBOBOさんとの出会いはどのようにして生まれたのでしょうか。
 
MIYAVI:アルバム『WHAT'S MY NAME?』のプロデューサーだった、ヨシオカトシカズさんに紹介されました。僕のギタースタイルを見て、「絶対BOBOだよ!」と。
 
ーー今につながるMIYAVIさんのスタイルは、どんな音楽から影響を受けたものなんでしょうか。
 
MIYAVI:僕の場合、「インプット」している状態と「アウトプット」している状態というのが結構ハッキリと分かれていて。楽曲を作ったり演奏したりしているときは「アウトプット」の状態なので、あまり影響とか意識していないんですよね。
 
ーーなるほど。
 
MIYAVI:日本という国では、「こんなバンドになりたい」「こんな風なサウンドを鳴らしたい」と思って、そこに近づいていけばいくほどステータスが上がっていくでしょ。海外とはあべこべなんですよね。「こんなバンドになりたい」なんて考えているアーティストはどこにもいない。ラスベガスのものまねショーを観に行けばいるかもしれないけど。もちろん過去の音楽から影響は受けるし、インスパイアされるけど、「じゃあ、俺たちはどうするのか?」「お前はどんな音楽が作りたいんだ?」って。そこと向き合えない限り、世界とは絶対に対峙できないし、そんな音楽にはあまり魅力を感じないですね。「俺たちにしかできない音楽」というのを常に模索していたい。
 
ーー曲の作り方も、最初の頃と今とでは変わってきていますか?
 
MIYAVI:今は、たくさんの人とチームを組んで作っています。やっぱりそれもセッションと一緒で、相手がどう来ても「自分」でいられるというか。ちゃんと「自分」が見えていれば、色んな人とやれるし、そこで幅も広がっていく。毎日が発見の連続ですね。
 
ーーそういう作り方ができるようになったのは、いつでもブレない「自分」があるからこそでしょうね。2011年には、トータル・プロデューサーに亀田誠治さんを迎え、ジャンルの異なるアーティストたちとセッションするプロジェクト「SAMURAI SESSIONS」を始動します。HIFANAさんやH ZETT Mさん、上妻宏光さん、坂本美雨さんと、びっくりするくらい異色コラボです。そういう人たちと「斬り合う」ことで、MIYAVIさんの音楽性も変わっていったんでしょうか?
 
MIYAVI:それはありますね。例えば上妻さんのように、伝統を壊そうとしている人との「斬り合い」はとてもスリリングです。三味線というのは、いわば「日本のギター」じゃないですか。その音色や独特のプレイスタイルを目の当たりにした時、自分自身の音色やプレイスタイルがどう変化していくのか、自分でもワクワクしていました。
 
ーー以前、上妻さんに取材したとき、「伝統」だけでは文化は衰退していくし、「革新」だけでは破綻してしまう。「伝統」と「革新」の両輪があってこそ、その時代の「生きた文化」になるとおっしゃっていました。
 
MIYAVI:上妻さんのおっしゃる通りですね。やっぱり、このアルバムのテーマとも重なりますけど、「過去」と「未来」を繋げるっていうことでもあるのかなと。
 
ーー確かに。それと、MIYAVIさんもブルースという「伝統」を継承しつつ、例えば EDMのような新しい音楽を取り込み、ケミストリーを生み出すことでギターの新たな可能性を探っているのかなと。
 
MIYAVI:そうですね。僕はやっぱりギタリストとして、ギターミュージックの持つ「衝動」と「興奮」を、この時代に伝えたい。例えばクラブミュージックやダンスミュージックというフィールドにも、ギターという「刀」を持って乗り込んでいきたい。それが自分の役割だと思っています。
 
ーー2014年に活動拠点をL.A.に移したのはなぜですか?
 
MIYAVI:二つ理由があって、一つは「教育」です。僕には2人の娘がいるんですけど、僕自身が英語で苦労したというのもあって、彼女たちにちゃんと英語含めグローバルな感覚を身につけさせたい。もちろん、日本人として日本文化は伝えていきますが、当たり前のようにグローバルなコミットができるスキルを学んで欲しい。「英語を話す」ということは世界のマナーなんですよね。英語が話せずにグローバルな場に出るというのは、「燃えるゴミは月曜日に出しなさい」と言われているのに、火曜日に出すようなもの。そこは当たり前に与えてあげたかったし、そういう意味で「教育」は、日本という国にとっても大事だと思うんですよね。
 
ーーもう一つは?
 
MIYAVI:自分自身の「創作活動」のためです。世界で勝負したいと思っているのに日本に住んでいたのでは、何かが起こっている瞬間に立ち会えない。おおかた「海の向こうの出来事」じゃないですか。音楽業界に限らず「時代」を作って来た人たちと仕事をしながら、やはり現地に住んで「肌感覚」も含めて感じないとダメだろうと。
 
ーー「肌感覚」は、実際に住んでみると違いますか?
 
MIYAVI:違いますね。言葉も慣習も、教育環境も全く違う。アメリカで創作していると日本のそれに比べてもっと「自然」だなって思うんですよ。例えば、日々の暮らしの中で辛いことも悲しいこともあって、でもハッピーなこともあって、何か言いたくて、言葉にできなくて、だから音楽にして作って、歌って聴かせて、誰かが感動して、もっと広めたくてインターネットで世界に発信して。「感情」という入口があって、「音楽」という出口につながっている。元々はとても自然な行為だったはずなんですよね。なのに、いつの間にかビジネスが大きくなって、出口があるから入口を作るみたいな「ねじれ現象」が起きているじゃないですか。もちろん世界中どこにでもそういうケースはありますが、クリエイティブの順序は、健全である方が良いものも生まれますよね。
 
ーー今回のベストアルバムで、MIYAVIさんの過去・現在・未来が繋がったわけですが、その「未来」のビジョンはどのようなものですか?
 
MIYAVI:今また、次のフェーズに来ています。このベストアルバムと同じタイミングで、新しいアルバムも作っているので、それを今はかたちにすべく日々試行錯誤しているところです。どんな風になっていくか、今はまだ言えないですけど、ただ、ギタリストとしては、もっともっとギターで「歌い」たい。手塚治虫さんの『火の鳥』とコラボした楽曲「Fire Bird」で、ギターは僕を「自由」にしてくれる「翼」であると改めて気づいたんです。その「翼」を使って、もっともっと高く羽ばたきたいです。

(取材・文=黒田隆憲)

■リリース情報
『ALL TIME BEST “DAY 2”』
発売:4月5日(水)

<デジタル配信>
通常盤+「Mission: Impossible Theme」バンドル特典
iTunes

<CD>
価格:初回限定盤(2CD+DVD)¥7,800+税
通常盤(CD)¥2,500+税

【CD】
DISC 1 -DAY 1-
(01) What’s My Name ? – Day 2 mix(新録)
(02) Universe – Day 2 mix (新録)
(03) Ahead Of The Light – Day 2 mix(新録)
(04) 素晴らしきかな、この世界 –What A Wonderful World – Day 2 mix(新録)
(05) Guard You- Day 2 mix(新録)
(06) Live to Die Another Day -存在証明-(新曲:映画『無限の住人』主題歌)
(07) What’s My Name ?
(08) Survive
(09) Torture
(10) Strong
(11) Day 1
(12) Ahead Of The Light
(13) Horizon
(14) Secret
(15) Real?
(16) Let Go
(17) The Others
(18) Afraid To Be Cool
(19) Fire Bird
(20) Long Nights

DISC 2 -DAY 0-
(1) ロックの逆襲 -スーパースターの条件-
(2) Freedom Fighters -アイスクリーム持った裸足の女神と、機関銃持った裸の王様-
(3) 結婚式の唄-with BAND ver.-
(4) セニョール セニョーラ セニョリータ
(5) 愛しい人(ベタですまん。)-2006 ver.-
(6) Dear my friend -手紙を書くよ-
(7) 君に願いを
(8) We Love You〜世界は君を愛してる〜
(9) Selfish love -愛してくれ、愛してるから-
(10) 咲き誇る華の様に -Neo Visualizm-
(11) 素晴らしきかな、この世界 –What A Wonderful World-
(12) 陽の光さえ届かないこの場所で feat. SUGIZO
(13) Girls, be ambitious.(インディーズ盤音源)

<初回盤収録内容>
・【2CD】DISC 1(オリジナル14曲+新録5曲+新曲1曲=20曲)/DISC 2(13曲)全33曲
・【スリーブケース付き】
・【DVD】MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE”Tour Final 幕張メッセLIVE映像(約87分予定)
・【特典Booklet】MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE”スチール集(20ページ予定)

<通常盤収録内容>
初回盤DISC 1同様、全20曲収録

「MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE”Tour Final」Digest video

MIYAVIオフィシャルサイト

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