BOOM BOOM SATELLITES、最後の作品に刻んだ19年の歩み 中野雅之のトーク+映像上映会レポ

  BOOM BOOM SATELLITESが2月28日、東京・新宿バルト9にて『「19972016 LIVE & DOCUMENT」上映会 + トークセッション』を行った。このイベントは、3月1日にリリースしたベストアルバム『19972016』を記念して開催されたもので、全国の映画館でライブビューイングとして中継された。同作に付属する映像作品の上映前には、中野雅之がステージに登壇し、同作の制作や選曲、2016年10月9日に脳腫瘍のため逝去した川島道行への思い、そして自身のこれからについて語った。

 鹿野淳(MUSICA)氏が司会を務めた前半のトークショーで、まず、中野は2016年9月中旬から年明けにかけて今回のベストアルバムを制作したことを明かしながら、以下のように話した。

「(選曲に関しては)バンドのありようが見えてくればいい、というシンプルな理由です。“Greatest Hits”的なことではなく、作品性を感じられる豊かな音楽観が表現できるものを目指しました。アーティストの最後の作品として、アルバムという音楽作品として、聴いてもらえたら嬉しいです」

 中野がすべて監修し、4枚組CDから成る今回のベストアルバム。1、2枚目は2010年発売のベストアルバム『19972007』を踏襲しながらリマスタリングしたもので、3、4枚目は『TO THE LOVELESS』『EMBRACE』『SHINE LIKE A BILLION SUNS』『LAY YOUR HANDS ON ME』から選曲、なかにはミックスまで立ち返った曲もあるという。

「4枚を通して聴いていくなかで、作品性を統一させ、ストーリーを感じてもらえるようにと考えました。1、2枚目に関しては『19972007』は完結した作品だったので、それを壊すのではなく、その続きを作ろうと思いました。ただ、『TO THE LOVELSS』以降は音楽性が大きく変わってきて、川島くんのボーカルが持つ役割がすごく重要になり始めたので、歌とコンポーズと声に支配されていく感覚があった。ちょうどその頃は、音楽の聴かれ方、流通の仕方が変わり始めた時期でもあり、その中でもう一回僕たちが何をやろうとしているのか、立ち返って考えてみようと。トレンドに振り回されるよりも、自分たちが何なのかを考え始めました」

 また、トークは川島についての話題に。鹿野氏が、「今回のアルバム制作作業を振り返って、川島くんというボーカリストとしての存在、そして声はどういったものだと感じたか?」という質問を投げかけると、中野はこう答えた。

「19年もひとりの人間と向き合っていると、やっぱり始まりと終わりでは人間的な成長がすごくあった。切磋琢磨してひとつのバンドをやっていく中でいろんな葛藤があり、乗り越えてきたものが多くて、それが僕たちを成長させてくれた。その中で、川島くんの声とか歌詞に託すものも、日に日に変化していき、最終的にたどり着いた場所が『LAY YOUR HANDS ON ME』。(川島くんは)素晴らしい詩人、声の持ち主であり、尊敬しています」

 BOOM BOOM SATELLITESは、結成当時から中野と川島の二人体制で続けてきた。3ピースや4ピースのバンドよりも、より密接に、真正面から向き合わざるを得ないからこそ衝突することもあったが、19年間の中で、二人の関係性にも変化が生じてきたことが中野の口から明かされた。

「ある時期まで音楽を作る二人組、ユニットという感覚もあったけど、自分たちで『これはバンドなんじゃないか』と思い始めた。でも、それもここ数年は変わってきて、バンドという枠ではないなと。親友だったり家族だったり、そういうものも加わってくる感覚でした。あまりにも人生を共有してきたので、自分たちを『バンド』と捉えるには言葉が足りなく、今はもう『BOOM BOOM SATELLITES』としか言い表せないものになったと思います。(ここまで続けてこれたのは)僕と川島くんが出会った縁、運命が幸運だったから。知り合ってからは26~7年くらい経ちますが、ずっと仲が良かったわけではなく、掴み合いの喧嘩をしたこともあります。つらいことがあった時に逃げ出す権利を人は持っているから、もしこの深い縁がなかったら、逃げ出すこともあったかもしれないけど、それは一度も起こさなかった。それより大事にしたいことが、お互いあったと思う。川島くんは最後までやり遂げてくれたので、一番いい形で20周年を迎えられている。(僕と川島くんの間にあるのは)長い時間かけて生まれた絆だと思います。それが、その時その時の作品に焼き付けられ、今回の4枚のCDを並べてみるとひとつの人格が見えているというか、『BOOM BOOM SATELLITES』という人の佇まいが見えてくるようなベスト盤になったと思います」

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