清水翔太の音楽がドープに深化した理由ーー3人のライター・編集者が語り合う
「『PROUD』で『やっぱこいつ死んでねえな』と気付かされた」(佐藤)
ーー近作を聴いていると、アレンジャーとしての力量もどんどん上達しているように思えるのですが。
猪又:デビューして4年目の「YOU & I」の頃に一気に自宅の機材を増やしたみたいで。ツマミの付いた機材がラックにダーッと積み上がってるのを見ているだけで楽しいとか、レコーディングに行くとエンジニアさんに音の作り方の話を聞いたりしてると言っていたんです。そうして試行錯誤しながら、さらに凝った曲を作るようになった気がします。そこから作り方自体は変わってないし、基本は自分のやり方を貫き続けている。
佐藤:とはいえ、「シンガーソングライターとしての清水翔太」を評価しているファンがほとんどで、アレンジについて言及する人はほとんどいないような気がします。最近はセルフアレンジもするようになって、風格も出てきたけど、それがしっかり評価されていないフラストレーションは本人も感じてるかもしれないですよね。
ーー最近だと、YOUNG JUJUがB.D.を迎えた「Live Now」(トラックはFla$hBackSのJJJがプロデュース)で、清水翔太の「Overflow」をサンプリングするなど、新しい機運も生まれています。
佐藤:大袈裟な言い方ですけど、音楽業界に携わる人、特にブラックミュージックを扱う人で、明確な理由なしに清水翔太を批判する人間は、「センスがないのかな」とジャッジできるひとつの指針にもなる。なので、清水翔太より若いラッパーやアーティストがサンプリングするのは面白い動きに感じますね。
猪又:アーティストからの評価が高まって来たのは嬉しいですが、コラボ作品があまり多くないのもあってか、「翔太の新曲、聴いた?」みたいな声を周囲であまり聞かないんですよね。「366日」のカバーが好調で、そのあとに初のセルフトラックである「WOMAN DON'T CRY」をリリースしたんですが、これが世の中的には難解なものに聴こえちゃったのかもしれない。我々としては「どんどん面白い方向に行ってるな」という感じだったんですけど。
佐藤:正直、いま聞き返してみると、『COLORS』や『Naturally』、『Umbrella』と比べると、『ENCORE』は決めの一手に欠ける。当時は面白いことをやろうとしているなと感じましたけどね。
鳴田:彼は一貫してラブソングにこだわり続けているのも面白いですよね。表層だけを捉えると「ずっとラブソングを歌ってる一辺倒な人」に見えるし、「また“会いたい”か」とあらぬ誤解も生んでしまうかもしれない。でも、それを振り切ろうとロック方面に行ったりせず、ずっとラブソングを作り続けて、その精度を上げている。私自身も『ENCORE』あたりはスルー気味だったのですが、「stay feat. 清水翔太」と「Damage」でもう一度グッと掴まれました。
佐藤:僕も『PROUD』で「やっぱこいつ死んでねえな」と気付かされました。
鳴田:ベストアルバムをリリースしたことが、良い清算になったのかもしれませんね。
【後編へ続く】
(構成=中村拓海)
■リリース情報
『FIRE』
発売:2017年2月21日(火)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥1,700(in tax)
通常盤 ¥1,300 (in tax)
■ツアー情報
6月12日(月)13日(火)Zepp DiverCity
6月16日(金)Zepp Sapporo
6月19日(月)20日(火)福岡サンパレス
6月26日(月)Zepp Nagoya
6月27日(火)Zepp Osaka Bayside
翔太モバイル先行チケット受付 2月21日(火)22:00〜2月26日(日)23:59