レジーのチャート一刀両断!

Suchmosはなぜ大ブレイクしたか? 『THE KIDS』の“今の時代らしさ”を読む

参考:2017年1月30日~2017年2月5日のCDアルバム週間ランキング(2017年2月13日付)(ORICON STYLE)

 前週のトップ3だったAKB48『サムネイル』、Suchmos『THE KIDS』、GReeeeN『ALL SINGLeeeeS ~& New Beginning~』の推移がなかなか興味深い。

 まず、前週の1位だったAKB48は今週9位にダウン。初動がピークとなる非常にアイドル的なチャートアクションである。個人的な観測範囲の話で恐縮だが、今のところ自分の周りのアイドル好き(リアルな友人であったりSNSのタイムラインであったり)がこのアルバムに関する会話をしているのを一度も見聞きしたことがない。そういえば、前作のオリジナルアルバム『ここがロドスだ、ここで跳べ!』のリリース時も全く同じ状況だった。「アイドル好き・48好きであってもAKB48のアルバム作品への関心が薄い」というのはこのグループを取り巻く環境を示す事象としてとても象徴的に思える(この辺の傾向は乃木坂46と大きく異なる)。「出せば売れる」わけだからそれで良いのかもしれないが、むしろ「フルアルバムは出さない」くらいのことをやった方が、やや停滞しているグループとしてのプレゼンスの向上に寄与するのでは? とすら思ってしまう。

 対照的に、前週の3位だったGReeeeNのベストアルバムは今週の1位に浮上。オリジナルアルバムに限って言えば、彼らが最後に1位を獲得したのは2009年6月リリースの『塩、コショウ』。以降は2位(2012年)→3位(2013年)→2位(2014年)→4位(2016年)と緩やかなダウントレンドにあり、シングルに至っては2016年にリリースした4作が22位→27位→43位→36位というもはや「ヒットしているグループ」とは言い難いチャート成績だった。今回の1位獲得でグループとしての底力を見せつける形となったが、おそらくここにはグリーンボーイズによる「キセキ」「道」「声」のカバーも寄与しているように思える(先日の『ミュージックステーション』におけるグリーンボーイズ、というか菅田将暉は本当にかっこよかった)。強い楽曲があれば、カバー曲などをきっかけに何度でもそのグループは復活できるという好例である。

 そして、何と言ってもここ2週のチャートの目玉はSuchmos『THE KIDS』だろう。先週のチャートでAKB48とGReeeeNに挟まれている絵はなかなか衝撃的だったが(しかも発売初週のGReeeeNよりも上!)、2週目でも2位をキープ。2015年あたりからじわじわと話題を呼び、昨年の「STAY TUNE」のCMソング起用でブレイクへの足掛かりを築いていたバンドが、一気にチャンスをものにしてしまった。雄大なロックナンバー「A.G.I.T.」で始まるこのアルバムは、他にもスクラッチが印象的に響くミクスチャーロック的な「DUMBO」や荘厳さと人懐っこさが同居するインストナンバー「INTERLUDE S.G.S.4」など、「STAY TUNE」だけではないバンドの様々な側面を見せてくれる。『THE KIDS』というアルバムタイトルからも王道を目指していくという潔さが感じられるが、日本のバンドが鳴らすポップミュージックのど真ん中を定義しなおすような迫力が作品の至るところから感じられる。

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