10thシングル『青空のラプソディ』インタビュー

fhánaが初の京アニ作品主題歌で“踊った”理由「ダンス・ミュージックには主役がいない」

「踊るMVは『ハレ晴れユカイ』へのオマージュでもある」(佐藤)

――そして今回は、そんなfhána流のディスコ~フィリー・ソウル・サウンドに乗せて、MVでは4人でダンスを踊っています。これも本当に新鮮でした。

佐藤:今回のMVで「メイドの恰好をして踊る」というアイデアは、2016年の夏の終わりから決めていたんですよ。さらに言えば、「踊るMVを作ろう」という話は活動初期からあって、でも僕らが「いや、fhánaは踊らないです」と言っていて(笑)。これまでのfhánaの曲には、ダンスしてビデオを撮る必然性を感じなかったんですよね。でも今回は「ここで踊らないといつ踊るんだ」という曲なので、やってみようと思ったんです。それに、このMVは(『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンディング主題歌で、楽曲中のダンスが話題になった)「ハレ晴れユカイ」へのオマージュでもあるんですよ。

fhána / 青空のラプソディ - MUSIC VIDEO

――京都アニメーションとのタイアップ作品だからこそのMVでもあったんですね! ちなみに、「青空のラプソディ」というタイトルはどんな風に考えたんですか? 作品中にも、青空の中でトールが小林さんを乗せていく象徴的なシーンがありますね。小林さんは、腰に悪いからあまり乗りたくないみたいですが……。

kevin:そうそう(笑)。

佐藤:でも、会社に遅刻しそうになったら乗せてもらうんですよね(笑)。もともと、「ラプソディ=狂詩曲」という言葉は使おうと思っていたんです。1曲の中でどんどん曲調が変わる様子がまさに「ラプソディ」なので。それと、トールが駆ける空は夜空じゃないよなぁと思ったんですよ。それで「青空のラプソディ(仮)」にしていたものが、ジャケットやアーティスト写真が上がってくる中でしっくり来て、そのままタイトルになりました。

――カップリングはどんな風に考えていったんでしょう? 今回はアニメ盤に「Forest Map」が、アーティスト盤に「現在地」が収録されています。

佐藤:4月からはじまるツアーのタイトルが『Looking for the World Atlas Tour 2017』で、ツアーから次のアルバムにまで繋がっていくストーリーを考えているので、今回はその起点になる曲を作りたいと思ったんです。そこから「アドレス(住所)」「マップ(地図)」という2つのテーマが出てきました。アドレスは今いる場所、点。ミクロな視点です。地図は色んな場所の集合体で、面ですよね。こちらはマクロな視点。そこで「地図」の方をkevinくんが作曲した「Forest Map」で、「アドレス」の方をyuxukiくんが作曲した「現在地」で表現しました。それもあって、今回はタイトルから曲ができていった感じですね。

kevin:とはいえ、「Forest Map」は「地図」というテーマはあったものの、実際のタイトルが決まったのはもっと後だったんです。音から先に作っていったんですけど、そのときから北欧っぽい雰囲気を取り入れたいと思っていたので、最終的にタイトルが「Forest Map」になったときはすごくしっくりきました。

――この曲はアップテンポですが、Sigur Rósっぽい雰囲気もありますね。

kevin:まさにそういう雰囲気を取り入れたかったんです。Sigur Rósが使いそうな打楽器を大量に録音して、空き箱を叩いてもらったりもしました(笑)。僕はパーカッションについてあまり詳しくないので、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDでも(サポートで)ドラムを叩いているよしうらけんじさんにイメージを伝えて「何かいい感じのものを……!」とお願いしたら、色々な打楽器を持ってきて叩いてくださったんです。

佐藤:ベースはこれまでもお願いしてきた渡辺等さんにお願いしました。渡辺さんはウッドベースも弾きますよね。僕が上田麗奈さんの『RefRain』に楽曲提供した「マニエールに夢を」で、弓を使ってコントラバスとしても演奏してもらったのがすごくよくて。それで今回も、弓を使って雰囲気のあるフレーズを弾いてもらいました。あと、この曲では12弦ギターを使ったんですよ。

yuxuki:これは佐藤さんが弾いているんです。

佐藤:12弦ギターって「ジャラーン」とコードを鳴らしただけでもエキゾチックな雰囲気が出るんで、前から使いたかったんですよ。だから「弾けなかったらyuxukiくんお願い!」って言って……(笑)。

yuxuki:いやいや、佐藤さんはギターが弾ける人ですから。僕は卓でふんぞり返って「いいんじゃない?」って言ってました(笑)。

towana:ボーカル面で言うと、この曲は「Aメロ」「Bメロ」「サビ」でそれぞれ雰囲気が変わりますよね。特にBメロの部分はロボットっぽくて面白いので、そこはボーカロイド風に、あまり感情を乗せ過ぎないように歌ったりもしました。

――<アナタハダレワタシハドコ/アタナダレハワシタコドハ>という部分ですよね。歌い方も言葉遣いもとても面白かったです。

佐藤:あと、「青空のラプソディ」もそうですけど、今回はコーラスがすごく分厚いんですよ。この曲は<chu chu yeah!>というコーラスを録った後だったこともあって、ここでもBメロやCメロでコーラスを分厚くしました。

kevin:そうやって、デモの時点ではデジタルな雰囲気だったものが、皆さんのおかげでどんどん生音っぽく、北欧っぽく変わっていった感じでしたね。

―― 一方、アーティスト盤に収録されているyuxukiさん作曲の「現在地」は、ストレートなバンド・サウンドで。

yuxuki:これは2016年の夏頃からデモがあって、佐藤さんと「仕上げたいね」と話していた曲ですね。今回ベースを弾いてくれた佐孝(仁司・昨年「終了」を発表したGalileo Gali-leiのベーシスト)くんは僕と遊びに行ったりする仲なので、「何かやりたいね」と話していたんです。

――佐孝さんはGalileo Galileiの最後の頃から、東京に住んでいるんですよね。

yuxuki:そうなんですよ。彼は独特のインディ感がある、アメリカンな香りのベースを弾くのがすごく上手いと思うんです。それに、リアルタイムでバンドをやっている人なので、グルーヴ感もすごくいい。この曲にドラムで参加してくれた只熊良介さん(chocolatre)もそうですけど、今回はスタジオ・ミュージシャンではないバンドマンにお願いをして、その「バンド感」を出してもらいたかったんです。

佐藤:只熊くんは僕がchocolatreのサポートもやったことがある長い付き合いですけど、彼は秋山(タカヒコ・downy)さんとか、クラムボンの(伊藤)大助さんとか、「僕が好きなドラマーを好きなドラマー」で(笑)。いいドラマーだし、機会があれば一緒にやってみたいと思っていましたね。

yuxuki:それで、「青空のラプソディ」も「Forest Map」も作り込むタイプの曲だったんで、この「現在地」ではいい意味でのラフさを出そうと思って、レコーディングも「せーの」で録って2テイクで終わらせました。やりすぎるとこなれちゃうんで、そうじゃない演奏を録りたくて。あと、今回のシングルは、どの曲も明るい感じにしたいと思っていましたね。

kevin:プロデューサーの佐藤純之介さんも、「今回は元気の出るシングルにしたい」と言っていたんですよ。それを念頭に置いて作ったから、表題曲もはっちゃけているし、「Forest Map」も「現在地」も明るい曲になったのだと思います。

towana:「現在地」の場合は、歌も「こなれない感じで歌ってほしい」と言われて。参考のバンドを聴かせてもらったりして、私も投げつける感じで歌っていきました。

関連記事