3rdアルバム『OLIVE』インタビュー

SKY-HIが明かす、今“自分自身”を歌う理由「5年前だったら、俺のあり方ってNGだった」

 SKY-HIが全身全霊の音楽力を注いで作り上げた前作『カタルシス』(語る死す)は、彼流のメメント・モリとも言えるメッセージ性が、ヒップホップをルーツに持ち、ラッパーとしても高いスキルを誇るアーティストだからこそクリエイトできるポップミュージックとして昇華された大作だった。そして、SKY-HIはあれからわずか1年で『カタルシス』と強固な連続性を持つニューアルバム『OLIVE』を完成させた。タイトルから“LIVE”と“LOVE”のアナグラムを作ることができるのも象徴的だが、本作は人生における救いと愛を表現したラップと歌が、生感に富んだ響きがグッと増したサウンドプロダクションによってダイナミックに解放されている。前回のインタビューに続き、音楽と自らの生き様について語るSKY-HIの言葉には一切の曇りがなかった。(三宅正一)

「愛することをちゃんと歌おうと思った」

ーーまず、『カタルシス』から1年でよくこれだけのアルバムを作れたなと感嘆したんですけど。

SKY-HI:マリオ的な話で言うと、2016年の俺は2人死んじゃったんですよ(笑)。

ーーというのは?(笑)。

SKY-HI:2回クリボーにぶつかっちゃって(笑)。

ーー満身創痍な1年だった?

SKY-HI:2015、2016は満身創痍でした。2015年はメンタル的に、2016年はフィジカル的に。2015年は『カタルシス』の制作と向き合って、あのアルバムが自分の思うような評価や結果が得られなかった場合は音楽との付き合い方を根本的に考え直そうと思ってたんです。音楽をやめるということはないけど、CDで作品をリリースするのはもういいかなって。そういう意味でも背水の陣的な意識があって。でも、結果的に『カタルシス』とその後のホールツアーは一定の評価をいただいて、内容的にも俺自身すごく満足のいくものになったんです。ツアーはスーパーフライヤーズという自分の愛するバンドメンバーと回れたことに至福の喜びを覚えて。音楽とともに生きていく以上、その喜びをこれからも覚えることができると思うと、多少メンタル的に食らうパンチがあっても乗り切れるなと思ったんですよね。仲間が自分の作った音楽を受け取って、一緒に鳴らしてくれる。そこで生まれた曲が俺自身のマインドを救ってくれてるんですよね。自分も含めた人を救う音楽を自分自身で作っているというそのことが、何よりの救いになってるんですよね。

ーーそう、それがまさに『OLIVE』というアルバムの核心で。

SKY-HI:『OLIVE』がポジティブで救いのある内容になったというのはーーあまり一緒にしちゃいけないとは思うんだけどーー抑圧された状況から生まれるゴスペルやヒップホップやファンクやロックンロールとも共振するとも思っていて。

ーーだから、わずか1年で『カタルシス』との連続性もしっかり踏まえたうえで見事なまでに音楽的な更新も果たした『OLIVE』というアルバムを作ったことが驚異的だなと思って。

SKY-HI:ホンマや(笑)。そう考えるとすげえな。このペースでアルバムを作ること自体は全然可能なんだけど、ただ自分でもすごいなと思うのは、『OLIVE』は『カタルシス』から2年くらいかかってもよさそうな内容になっているという自負があるので。音楽的な進化もそうだし、この1年の間にSALUとコラボアルバム(『Say Hello to My Minions』)を作ったり、時間をかけて『フリースタイルダンジョン』のエンディング曲(「Dungeon Survivors」)を作ったり、もちろんAAAの活動もあるし、さらに喉の手術もしてたこととか、いろいろ考えるとすげえなと思いますね。

ーー喉は最大の生命線だし、かなり不安だったでしょう。

SKY-HI:今でも夢に見るレベルではありますね。手術後、歌唱法について考え直したり、成長のきっかけにもなったんですけどね。手術直後にAAAの仕事でアメリカに行かされる荒行もあって(苦笑)、ジストニアみたいな症状が出ちゃって。そういう意味ではいくらでもネガティブになってもおかしくなかったんだけど、ずっと音楽に救ってもらってましたね。

ーーそういうSKY-HI氏の生き方そのものがこのアルバムの説得力となってるから。

SKY-HI:そう言っていただけると助かります。自分でも制作の途中から「大きいことを歌ってるなあ」と思って。でも、生きることを隣に携えて、愛することをちゃんと歌おうと思ったから。そういう曲が「ジョン・レノンやマイケル・ジャクソンと比べたらちょっと……」って思わせたらリスナーに失礼だと思うんですよ。だったら最初からそんな壮大なテーマを選ぶんじゃないよってなると思うんですよ。その責任が持てないんだったら、トラップミュージックでお姉ちゃんとファッションのことを歌えよっていう。でも、俺はメッセージに責任を持とうと思ったから。自分の歌にちゃんと説得力が宿るように、自分の人生をしっかり生きなきゃいけないんですよね。

ーーそういう姿勢はやっぱりラッパー然としてるなって思う。

SKY-HI:そうですね、ラッパーっぽいですよね(笑)。ポップスターとしてしっかり覚悟と責任を持つことって、ラッパーとして最上の責任を持つこととイコールなんだなと思って。

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