yahyelのライブにおける音楽+映像演出の重要性 『Flesh and Blood』リリースパーティーレポ
yahyelのステージは、実際の音源とライブで聴く音との違いも大きな魅力の1つである。
大井一彌(Dr)がライブで使用している生楽器はキックドラムとシンバル類のみで、その他の音を電子パッドで演奏している。彼らの音楽は機械的とも言うべき緻密さで組み立てられているが、それらの楽器を使い分けて叩くことで、音に“温度”が生まれる。「The Flare」では暴れるように激しく響くフロアタムの音、「FOOL」ではリバーブの効いたスネアドラムの響きが、ライブならではの躍動感を伝えていた。今作の『Flesh and Blood』で示しているのは、“肉体的な生々しい感覚”。冷たい部分と(血と肉が詰まった)熱い部分は、打ち込みではなく実際にドラムを叩くことで表現され、同作の一貫したコンセプトをライブを通して体感することができた。
「BLACK SATIN」の楽曲を披露する際、スクリーンには巨大な花火が打ち上がった。yahyelのライブパフォーマンスの醍醐味のひとつとなっているVJだが、何度もスクリーンを暗転させ、会場を暗闇に包みこむシーンが独特な空間を作り上げていた。山田は音楽サイト「シグマファット」で答えているインタビュー(参考:http://sigmafat.com/diary/63764)で「イメージ的には、音に肉体を与えるのと、コンセプトを可視化させるのとはどっちも100%でやってますね。(中略)それはyahyelのライブにおけるコンセプトとして『映像自体が肉体』で、僕らの顔を見ながら音楽を聴いて欲しいわけではないというところがあるから、真っ暗にも意味がちゃんと生まれるんです」と明かしていた。また、「SPACE SHOWER NEWS」(参考:https://www.youtube.com/watch?v=Z--vq7KdnQA)で池貝は「僕らが表現したい世界観を山田が熟知しているからこそ、VJで僕らの身体性を隠しつつもその世界観を拡張するっていう機能をVJは担っているという感覚です」と答えており、彼らが音楽を表現する上で映像演出は重要な役割を果たしていることが分かる。
ライブのMCでは池貝が「殺してくれ(KILL ME)って曲から始まり、疑え(WHY)って曲で終わるってひでえバンドだな(笑)。でも多分、僕らの世代のリアルだと思う」と話した。また、最後には、2016年の活動を振り返って感謝を述べつつ、「海外に行って何ができるのって見えてない時点で、僕らまだ何もしてない」と発言していた。20代前半の彼らが、自らの音楽をアップデートしながら国境を越えた活動を展開し、世の中に対して大きなアクションを起こすのは、まだまだこれから。今年はすでにロックフェスへの出演も決定しており、彼らのステージが多くの人々の目にどう映るのか、反応が楽しみだ。
(文=大和田茉椰/写真=shiga shunsuke)