RADWIMPS『NHK紅白歌合戦』初出場! メンバーが語る10年間の歩みと『人間開花』への思い

 RADWIMPSが、12月31日放送の『第67回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場する。8月に主題歌と劇伴を担当した映画『君の名は。』が記録的なヒットとなり、11月にはオリジナルアルバム『人間開花』をリリース。「2016年の顔」として大きな活躍を見せた彼らだが、ここに至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。今回リアルサウンドでは、本日の『紅白』出場を前に、改めて『人間開花』完成間際のメンバーに行ったインタビューを掲載。彼らが10年間の歩みを経てたどり着いた、2016年の姿とは。聞き手はライターの金子厚武氏。(編集部)

『君の名は。』とは、お互いがお互いに影響し合ってる(野田)

――映画『君の名は。』が社会現象とも言うべき大ヒットを記録していて、結成10周年イヤーを経ての新たな始まりとしては、最高の形になりましたね。

野田洋次郎(以下、野田):ホントに嬉しいですね。ただ、いろんな情報は入ってくるんですけど、どこか他人事のような気がしてしまうんです。ずっと必死で作品を作ってきて、目の前のことに集中してきたから、いい意味で、「もう過去だな」って思えるというか、止まらずにいようって思いがあったんですよね。

――前作『×と○と罪と』以降の3年間というのは、ホントにいろんなことがありましたもんね。

野田:『×と○と罪と』を作って、それまで10年間やってきたやり方での到達点は見えたっていうか、「俺らのやり方で頂まで登れたね」っていうのがあったから、次はちょっと違うフェイズに行きたいっていうのはメンバー全員思ってたんです。逆に言うと、次は変わらざるを得ないって直感的にわかってたというか、ある意味ではもう限界で、同じやり方で次を想像することができなかったんですよね。だから、事務所の人にも「ちょっと違うやり方を模索しませんか?」って話をしてたんですけど、とはいえ10年間同じやり方でやってきたから、「どうしようか?」っていうまま進んでいた時期もありました。

――特に昨年は9月に山口さんの無期限休養が発表されて、バンドにとっては危機的な状況だったと言えると思います。それを乗り越えたからこその今があるわけで。

野田:3人になって、最初はホントにアップアップで、「バンド続くのかな?」ってところから始まって、でも、海外ツアーだったり、対バンツアーだったり、綱渡りだったけど、一つ一つ達成していくことで、「ダメじゃないかも、何とか行けるかも」って、自信になっていきました。映画の劇伴にしても、最初は「こんな曲数どこから手をつければいいんだろう?」って思ったけど、一つ一つ形になっていくと、「行けるかもしれない」ってなって、そこから小さな希望をちょっとずつ積み上げて、放出できるところまで何とかたどり着いたっていう気がしてます。

武田祐介(以下、武田):「止まらずにいよう」って思いもあったし、止まってられない状況があったというか、智史がもう限界だってなった後に、すぐ海外ツアー、対バンツアー、『君の名は。』とか、そういうことがどんどんうちらの背中を押してくれたというか、助けにもなったなって。

桑原彰(以下、桑原):「‘I’ Novel」とかは3年前の合宿でレコーディングしてたりするので、そこからずっと作業は続いてたんですけど、途中でいろいろあって、吸収して、やっと完成したっていう感じなので、ホントにこの3年が詰まったアルバムだと思います。

――結果的に完成した作品は、『人間開花』というタイトルにも象徴されているように、RADWIMPS史上最も光量に溢れ、その光の先に開かれた未来を見出すようなアルバムだという印象を受けました。

野田:今回は今まで避けてきたり、逃げていた部分を、ちゃんと一回今の自分の言葉として歌おうと思ったんです。一般的なポップ・ミュージックで考えると、光を歌うことって簡単な気がするんですけど、僕にとってはものすごく難しいことで、今ネットに直接的な怒りや憎しみの言葉が溢れているように、人間ってそっちのエネルギーの方が発散しやすいのかなとも思うんですよね。なので、僕にとって光を歌うことはチャレンジだったんですけど、今回はそれができるだけの覚悟と自信をやっと持てて、それを一枚のアルバムにできたと思います。今の自分たちにはそれを発信する意味があるというか、震災を経て、ここまで来たっていう、日本人としてもそうだし、バンドが消えるのかって状態から、何とかここまで這いつくばって来れたっていうのもあるし、そんな俺たちだから言える言葉があるなって。

――アルバムのオープニングである「Lights go out」から「光」への流れが、まさに暗闇の中から光を見つけ出すようなイメージで、バンドの辿った3年を表しているように思いました。

野田:そうかもしれないですね。これはちょっとネタバレになっちゃうんですけど、「Lights go out」はもともと『君の名は。』のオープニングをイメージして作った曲だったんです。まあ、英詞だったんで、案の定却下されたんですけど(笑)、たださっきおっしゃっていただいた暗闇の中から始まる感じは僕の中にも最初からあって、こんなにも入口にふさわしい曲はないなって思ったんです。真っ暗な中から始まって、星が点滅してて、2曲目の「光」で真白く光るっていう、そのイメージは最初からありました。

――『君の名は。』とは制作時期も近かっただろうし、ある意味双子のような側面もありそうですね。

野田:そうですね。『君の名は。』と共にずっと旅をしてきたような感じもあったから、お互いがお互いに影響し合ってると思います。音的にもどんどんタガが外れて行って、どんどんオリジナルだなって思えるものができてるんですけど、まだまだ途中だなって感じもしてるんですよね。『君の名は。』でやったような、生の音を重視したような曲もあれば、クオリティの高いトラックとバンドを融合させた曲もあるし、今回そういった曲たちを一度まとめたことで、次のアルバムくらいでまた新たなRADWIMPSのフォーマットが確立できるんじゃないかって気がしてるんです。

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