石井恵梨子の「ライブを見る、読む、考える」 第7回:爆弾ジョニー

爆弾ジョニーが放つ、見たことのないエネルギー! 石井恵梨子が描き出すバンドの現在地

 1979年のRCサクセションは知らない。1987年のブルーハーツだって実際はよく知らない。でも、知らないけど……ここにいたじゃないか!

 まだインディーだった彼らを見て、直感的に出てきた言葉だった。こいつら信じられないくらい無茶で無謀だけど、ゆえに凡人にはできない何かを起こすだろう。バンドの名前を興奮気味に触れ回っていたら、知人のミュージシャンがこう返してきた。

「そう? 俺が見た時は馬鹿な学祭バンドって感じだったけど」

「そう言いたくなるのはわかる。でも馬鹿すぎてミラクル起こせる感じがした」

「あぁ……そう言いたくなるのも、なんかわかる」

 つまり「馬鹿と天才は紙一重」を地で行く存在だった。彼らにとってバンドは音楽ではなく合体ロボに近いもの。「ギターとベースとドラムとキーボードが合わさって、これ最強ビーム出てんじゃねぇ!?」と大興奮しているような。男の子特有の向こう見ずなエネルギーをフル回転させ、メンバー5人が豪快な馬鹿をやっていた。レゲエやディスコやファンクを飲み込み、ときには他人のヒット曲やコスプレ付きのカラオケまでを持ち込んで、プロ意識は皆無だが、最高に笑えるロックンロール・パーティーが始まっていた。3年前、まだ全員がハタチになりたてだった頃の爆弾ジョニーだ。

 私も含めて、オトナたちは揃ってその勢いに恋をした。軽やかなジャンプを繰り返すりょーめー(Vo&G)とキョウスケ(G)のコンビに、キヨシロー&チャボ、ヒロト&マーシーといったロックスター像を重ね合わせ、再びでっかいロックンロールの夢を見ようと盛り上がった。メジャーデビューの後は、メディアが新時代のロックスターだと煽りまくった。だが、その結果、バンドは止まってしまった。精神がパンクしたのは、若すぎたからか、周囲からの期待が大きすぎたからか。どちらもあるだろうが、その話を振り返りたいわけじゃない。約一年半の休止を経て、ようやく活動を再開した彼らの今の話がしたいのだ。

 復活の一発目、6月30日の渋谷クラブクアトロは、とにかく「バンドの火がまだ消えていないこと」を確認するだけで精一杯だった。だが、その後いくつかのイベントに出演し、11月からは全国ツアーも決定。ツアー初日の新宿レッドクロスを見た時に、おお、と思い、おや、と感じるところが多数あった。やっぱりこれだな、という確認と、まったく別バンドになっているのだ、という驚きと。そんなツアーがもう終わりを迎える。

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