THE NOVEMBERS、激動の2016年を振り返る「想像し、信じる力は現実をここまで変える」

THE NOVEMBERSが語る、意識の一大変化

20161207-novembers4.jpg

 

「疑った後にすることは、もう信じることしかない」(小林)

ーーただ、小林さんのブログを遡って読んでみると、レコーディングの前はかなり落ちていたみたいですね。

小林:あ、はい(笑)。

ーー「何も書けない、何にも感動できない自分と付き合う時間は苦痛でしかなく、いっそ消えてなくなりたいとすら思った」とまで書いていて......。そんなとき、他のメンバーはどうしてたんですか?

マツモト:「ああ、祐介弱ってるなぁ」って(笑)。どうすることも出来ないですしね、当時は僕らも悩んでいたし。

小林:二人で飲んだ時は、「俺があの時、ヒット曲を書いていれば、ケンゴくんの人生は違っていたのかもしれない」って言い出してたよね。

吉木:それ、俺にも似たようなこと言ってた(笑)。

ーー相当ヤバイですね(笑)。ただ、30代に突入する時期って多かれ少なかれ、誰しも同じような悩みに突き当たると思うんですよ。

小林:そうですね。それも全て、わかってて悩んでる自分のことを「なんてバカなんだろう」って思いました(笑)。いかに意志の力が自分たちの未来を左右するのか、暗い気分で生きていると、本当に暗い未来になってしまう……それを痛いほど経験しました。「こうなったらどうしよう」って思っていると、本当にそうなっちゃうんですよ。

ーーそんな状態から這い上がって来られたのは、何が大きかったですか?

小林:うーん......。とにかく、こんな精神状態で生きていることで、何かいい未来が訪れるのか? って。こんな気持ちで今生きていて、少なくとも自分は幸せじゃないし、周りの人たちに対してもいい影響なんてないだろうと。そう思った時に、最初の話に戻るんですけど、僕が悪い運命を想像して、それに翻弄されているとするじゃないですか。それ自体「試されているんだ」って、自ら思い込んだんです。

ーーええ。

小林:いいことも悪いことも、一生は続かないじゃないですか。もし今、自分が「よくない」と思っているとしたら、それも自分の気持ち次第だし、いい方向に持っていかなきゃ自分でイヤじゃないのか? って。そうやって一つひとつ思い込むというか、自分を説得していくというか。「よしよし、お前が俺を疑ってるのは分かった。でもいつまでそうやってるつもりなんだ? とりあえずもう一度信じてみようぜ」って。疑った後にすることは、もう信じることしかないじゃないですか。

20161207-novembers5.jpg

 

ーー以前、拙著のインタビュー(『メロディがひらめくとき』DU BOOKS)でも、「信じる」ということについて語ってくれましたよね。

小林:「信じる」と決意して、その先の未来を想像し、手を動かして目先の作業に集中していたら、気づけばちょっとずつ良くなっていったし、何より悪いことを考える“暇”がなくなっていったんです。

ーーーうーん、そこに思い至るまでの強靭な意志の力に感服します。自力だったのか、誰かの助けがあったのか、何か本を読んだのかわからないですけど。

小林:あ、でも誰かの助けということで言えば、MONOの後藤孝顕さんとRoth Bart Baronの三船雅也くんと鼎談をしたとき(http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/11229)が限界といえるくらいの状態で。

ーーああ、そうだったんですね。確かに、ちょっと様子がおかしいなとは思いましたが。

小林:ですよね(笑)。あの時に後藤さんが、「小林くん、昔の俺にすごく似てるんだよね。気を付けたほうがいい。体壊すよ?」って。鼎談が終わった後も、「俺は自分で自分の人生、変えたよ。一度きりの人生なんだからさ」って言ってくれて。ただ、そういう時って何を言われても響かないんですよ。「いや、後藤さんはそうかもしれないけどさ、すげえよな。かっこいいよな」って思うだけで。それでも少しずつ、後藤さんの言葉が効いてきて。「そうだよな、自分の人生なんだから、自分の決意一つだよな」って。

ーー決意一つ、ですか。

小林:例えば、朝ものすごく気持ちが落ち込んでたのに、夕方には絶好調になっている時ってあるじゃないですか。でもその1日の間に、自分を取り巻く環境や世の中が劇的に変わったなんてことはないわけで。となると、最高の人生にするのも、最低の人生にするのも自分で自由に選べるんだって思えるようになったんですよね。

ーー世界をシンプルにするのも、複雑にするのも、結局は自分次第だと。

小林:そうなんですよ。

マツモト:まさしく「首」(自主イベントのタイトルにもなったMEAT EATERSの同名曲)の歌詞(<世界がクソなのは、自分自身がクソだから、うんざりするほどあたりまえのことさ>)だね。

20161207-novembers6.jpg

 

ーー11周年を経て、今後の展望はいかがですか?

小林:月並みですけど、もっといいライブをするし、もっといい作品を作るし、自分たちをキッカケに、僕らもお客さんもいい時間を過ごし、歳を取っていきたい。その都度、目の前にいる人を満足させたいという意味では、日本も海外も同じだから。国内、国外という意識よりも、目の前の誰かという領域を、どんどん広げていきたい。今まで「海外行くよ」とか「行きたい」とか言ってて、なかなか行けず、「行く行く詐欺」状態だったので(笑)、本当に「行ける」と信じて、「行く」と決めて準備をして、そうやって未来をデザインしていけたらと思います。

高松:今年はアニバーサリーっていうのもあって、そこまでライブをやってなかったんですよ。その反動じゃないけど、これからはもっと色んなところに行って演奏したいですね。大きいハコ、小さいハコ関係なく。もっともっと自分たちを高めるようにしていきたいです。

吉木:僕ら、まだまだてっぺんがあるなと思うので、もっと良くなっていくし、ここから始まりくらいの感じで続けていきたいですね。

ーー聴いている側からすると、『Hallelujah』は最高傑作だと思うのですが、メンバーの皆さんがまだまだそこを「通過点」と思ってくれているのは、頼もしく感じますし次作が楽しみです。

小林:何度も言うように、「想像できるか?」「想像し切れているか?」ということに尽きると思うんですよ。「良くなっていく自分」を、ちゃんと想像できること。想像できず、妄想や願望のみで話していると、結局そこで止まってしまうのだけど、「良くなっていく自分」を想像して、信じて、「じゃあ今日はそこへ向けて、いったい何が出来るのか?」と考え手を動かす。そうすれば、99.9パーセント実現できる、その入り口に立てると思うんです。想像し、信じる力は現実をここまで変える、それをまざまざと実感した1年でした。

ーー本当に、とんでもない1年でしたね。

小林:ただ、色んな人たちから、「今年1年ですごく変わったね?」「どうしたらそこまで進化できたの?」って言ってもらうのだけど、別に何かが突然上手くなったとか、進化したとかは特になくて。本当に、気分の問題というか、気の持ちようが変わっただけとしか言いようがない。気持ちが変わり、それが表情や立ち振る舞いに表れ、人にいい影響を与え、印象を変えたっていう。反対に、「自信のなさ」というのは何より人を退屈な気持ちにさせるんですよ。「自信を持たざるを得ないくらいの自分たち」でいることのが大事だと思います。

ーー「頑張れば夢が叶う」というフレーズって、綺麗事みたいに言われがちですけど、でも未来のイメージを具体的にしていけばいくほど、そこにたどり着きやすくなる。それを今回4人が体現して見せてくれたのだと思います。

小林:まだまだ入り口だし、悪い運命からようやく風向きが変わったばかりですけど(笑)。でも、ちょっと角度が変わっただけで、遠くになればなるほど移動距離は長くなるわけじゃないですか。今日一日がちょっと変われば、10年後はめちゃくちゃ変わっているはずなんですよ。

(取材・文=黒田隆憲/写真=下屋敷和文)

“11周年11月11日のコースト公演を美しい映像で残す”クラウドファンディング

■リリース情報
『Hallelujah』(ハレルヤ)
価格:2,600円+税
発売中
※紙パッケージ、歌詞カード付
<トラックリスト>
1.Hallelujah
2.黒い虹
3.1000年
4.美しい火
5.愛はなけなし
6.風
7.時間さえも年老いて
8.!!!!!!!!!!!(※T-8読み:そしてバカはパンクで茹で死に)
9.ただ遠くへ
10.あなたを愛したい
11.いこうよ

iTunes
THE NOVEMBERS HP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる