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5thアルバム『SUPERFINE』インタビュー

冨田ラボが明かす、ポップと抽象のバランス「作るものは”日本のポップス”だと思っている」

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「音色の配置などにこだわった音楽をやりたい」

ーー今回、限定盤に付属されている小冊子(冨田ラボのレコーディングダイアリーBOOK)がまた、途轍もなく濃い内容で。

冨田:(笑)。

ーーその中で、「譜面に書けない部分で成り立つ音楽」ということにこだわって作ったと書いていらっしゃいました。それは、「演奏者の細かいニュアンスや表現力ということではなく、選択された音色自体が持つ情報、その音色の時間軸上の配置していくことだ」と。それって、今のお話にも通じるのかなと。

冨田:ああ、本当だね!

ーー今作も、そういう意味ではサンプリングとかコラージュの手法に似ているところはあるのかなと。

冨田:確かに。これまでの作品で、僕がシミュレーショニズムを用いる際に決めていたことは、いわゆる「サンプリング」はしないっていうことだったんですよ。それは、先ほども言ったように90年代に入ってサンプリングが主流となっていく中で、サンプリングするのではなく、「サンプルネタのような質感の音楽“そのもの”を作ろう」っていう意識でやっていたから。でも、当時みんなが面白いと思っていた、サンプリングをループさせることによる快感とか、そこに生じる若干の違和感を楽しむこととか、そういったことを今、見直してみて「面白い」と僕は感じているので、それが今回、「どういうコードを使ってどんなメロディを乗せて……」っていうことと同じかそれ以上に、「音色の配置などにこだわった音楽をやりたい」という思いに繋がったのかもしれない。

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ーー「そういった『抽象的な音楽的要素』を、ポップスとして帰結させることにこだわった」とも書いていらっしゃいました。で、最初の話に戻るんですけど、僕がこのアルバムを何度も聴きたくなるのって、そういう「抽象的な音楽的要素」に中毒性を感じるからじゃないか? と思ったんです。

冨田:ああ、うん。まさしくそうだと思いますね。あくまでもポップミュージックとして成立していながら、そこに抽象音楽的なアプローチのものが配置されていて、その配置のされ方がポップであるからポップスとして聞こえるっていうか。その辺のバランスを面白がりながら作ったかな。そこがあるから、こうやって音楽を深くお聴きになられる方にも、「もう一回聴いてみよう」って思ってもらえるものになったんじゃないかと。

ーーところで、曲を作り始める時に弾く楽器は、どういう基準で選ぶのですか?

冨田:例えば「荒川小景 feat.坂本真綾」だったら、「ええっと、今ピアノで書いた曲が5曲あるから、じゃあローズでメロウな曲を書こうかな」と思ってローズ(・ピアノ/エレクトリックピアノの一種)から始めた。で、ある程度曲が出揃った時に、やっぱりピアノ・オリエンテッドな曲が多すぎると思ったら、シンセで作り直すこともあります。曲を作り始める時に、ある程度は完成形を見据えているつもりではあるのだけど、実際に聴いてみて「あ、ここはこうしたほうがいい」っていう風に見直すことも、当然ありますね。あとの細かい調整は、アルバム全体として並べてみてからかな。

ーーミクロな視点とマクロな視点を交互に使い分けながら、完成形に近づけて行くわけですね。

冨田:そう。例えば、今回は最初に歌モノを5曲録った。その時、「Radio体操ガール」はほとんどサウンドまで出来ていたのね。で、「Bite My Nails」もああいう曲にしようというのは分かっていたのだけど、残り3曲はほとんどサウンドは出来ていなかった。ベーシックトラックの上に、メインの歌を録った状態。つまり、「Radio体操ガール」と、「Bite My Nails」っていう、両極端のものが最初に出来上がっていたわけです。実際、現代ジャズという文脈でいうと、もろブラックミュージックな楽曲がある一方で、ベッカ・スティーヴンスみたいにアコースティックな曲もある、そういうアルバムにしたいなと思っていたから、これは狙い通りなわけです。しかも最初に両極端な楽曲が出来上がったから、ほかの曲はその間に収まれば自由にアレンジができるな、と。そういう意識が常に頭のどこかでありながら作業していたかもしれないですね。

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