『藤原さくらワンマンツアー2016「good morning」〜second verse〜』ライブ評
藤原さくらの音楽は新たなフェーズへーードラマ『ラヴソング』の余韻を残す新曲を聴いた
「Ellie」を3拍子にリアレンジ、「Oh Boy!」でウクレレを演奏するなど、音楽的なトライも今回のツアーの見どころだった。そして、もっとも印象的だったのはライブ後半に披露された新曲。
「撮影中はライブもやってなくて、ドラマのことばっかりやっていて。でも、すごくいい機会だったし、ドラマのことを思って曲が書きたいと思って。ドラマをきっかけにみなさんと出会えたこともそうだし、佐野さくらも神代先生(福山雅治)と出会って変わっていった女の子で。その人ともう会えないとしても、その出会いはけっしてムダではないと思うし……みなさんの大切な人のことを思って聴いてもらえたなと思います」
そんな言葉の後に歌われたこの曲は、アコースティックギターのリフを中心にしたサウンドのなかで、切なさをたたえたメロディが響くミディアム・バラード。春という季節のなかで、もう会えない大切な“あの人”のことを思うーー彼女自身の音楽的ルーツとドラマ『ラヴソング』の余韻がひとつになったこの新曲は、「“誰が聴いてもいい曲”という作品を自分でも作ってみたい」(シングル「Soup」のインタビューより)という意志によって生まれた最初の成果と言っていいだろう。
さらにドラマ『ラヴソング』の主題歌「Soup」を披露した後、「終盤、盛り上がっていきましょう! みなさん、立ってみますか?」と促し、「BABY」「Station」そして彼女の楽曲のなかでもっともポップな手触りを持った『「かわいい」』を演奏。積極的にオーディエンスとの一体感を生み出そうとする演出も、彼女にとっては初めてのトライだ。
アンコールの1曲目は弾き語りによる「500マイル」。さらにツアーグッズの紹介、観客とのおしゃべりの時間をたっぷり取った後、「ファンのみなさんのことを思って書きました」という「お月さま」によってライブは終了した。
ツアー前のインタビューで「ドラマで初めて藤原さくらのことを知ってくれて、私の音楽にも興味を持ってくれた人たちが来てくれるんだったら、期待を裏切らないようにしたいですね。『音楽をやっている藤原さくらも楽しそうでしょ?』というところを見てもらいたいので」と語っていた彼女。自らの音楽スタイルをさらに深めながら、幅広い層のリスナーが自然に楽しめるステージを体現した13箇所14公演のこのツアーを経て、彼女の音楽は新たなフェーズに入っていくはず。2017年2月には大阪と東京で『藤原さくら Special Live 2017』が開催される。この日のMCでは新しい曲を作ってライブをしたいと語っていた藤原さくら。そこで生み出される楽曲を心待ちにしていたいと思う。
(文=森朋之/写真=Shinichi Kawashima, Yusuke Takamura)
■セットリスト
1.We are You are
2.Walking on the clouds
3.愛の街
4.I wanna go out
5.maybe maybe
6.Ellie
7.Give me a break
8.Oh Boy!
9.Cigarette butts
10.Just one girl
11.好きよ 好きよ 好きよ
12.新曲
13.Soup
14.BABY
15.Station
16.「かわいい」
EN1.500マイル
EN2.お月さま
■ライブ情報
『藤原さくら Special Live 2017』
2月3日(金)大阪・NHK大阪ホール 18:00/19:00
2月18日(土) 東京・オーチャードホール 17:00/18:00