ブルーノ・マーズの最高傑作! 娯楽性に振り切った『24K・マジック』が爆発的に売れる理由
当のブルーノはといえば、例えばEDM流行りの反動というわけでもインディR&B流行りの反動というわけでもなさそうで、ただ自分が一番好きな音楽、フィットする音楽、染みついている音楽(ここが一番肝心。好きであっても染みついてなければここまでのものにはならない)を楽しんでやっているだけといったふう。奇をてらってる感がどこにもなく、実は得意中の得意だったけどこれまでアルバムでは解禁してこなかったところを今回は全面展開してみせました、といった感じだ。きっかけとなったのは言うまでもなくマーク・ロンソンとの「アップタウン・ファンク」で、その特大ヒット(全米14週連続1位!)が「一番好きなファンクを思い切ってやればいいんだ」という絶対的な確信と自信をもたらしたのだろう。やはり流行はノルのではなく、作った者が一番強いと実感させられる。
40代・50代の食いつきの凄さを先に書いたが、ブルーノのグッドメロディに対するこだわりや、影響を受けた往年のサウンドのテイストを咀嚼しながら現代的な輝きとグルーブを立ち現わせるやり方は、もちろん若いリスナーたちも魅了。この作品で生まれて初めてニュー・ジャック・スウィングを聴き、これで踊ってみようと思った人も少なくないかもしれない。そういう意味では親子二代で楽しめるいまどき珍しいアルバムでもあるわけで、彼も敬愛するマイケル・ジャクソンのあり方に、これでまた一歩近づいたとも言えるだろう。
ところでブルーノの最高傑作と言えるこの『24K・マジック』のちょうど1週間後、今度はザ・ウィークエンドの恐るべき新作が登場。『24K・マジック』とは対照的にダークでオルタナティブの最先端を行くアルバムだが、ブルーノとは異なる分野ながらもやはり80年代や90年代の様々な音楽の影響がコラージュ的に表れている。マイケルもプリンスもいまはもういないけど、この世界にはブルーノやザ・ウィークエンドがいる。退屈なんかするわけがない。
(文=内本順一)
■リリース情報
『24K・マジック』
発売:2016年11月18日
価格:¥1,980 + 税
<収録曲>
1. 24K Magic / 24K・マジック
2. Chunky / チャンキー
3. Perm / パーマ
4. That's What I Like / ザッツ・ホワット・アイ・ライク
5. Versace On The Floor / ヴェルサーチ・オン・ザ・フロア
6. Straight Up & Down / ストレイト・アップ・アンド・ダウン
7. Calling All My Lovelies / コ-リング・オール・マイ・ラヴリーズ
8. Finesse / フィネス
9. Too Good To Say Goodbye / トゥー・グッド・トゥ・セイ・グッバイ(さよならは言えなくて)