『激ブライアンカナブンブン丸 ~Season II~』レポート

Brian the Sun×KANA-BOON、関西バンド2組の3年越し“待ち合わせ”

 「それぞれの長い音楽活動の分岐点で同じ場所に居れる事を嬉しく思うと同時に、しばらくしたら違う道に進むやろうから、またずっと遠くのどっかで待ち合わせしよう。」(森良太[Brian the Sun/Vo.&Gt.]

 9月21日、東京・新宿LOFTで行なわれた『激ブライアンカナブンブン丸 ~Season II~』は、Brian the SunとKANA-BOONという関西出身2バンドによる、待ちに待った“待ち合わせの場”だった。

 今回が「Season II」と銘打たれているように、2バンドによる第一回目の同イベントは、2013年の6月16日に行なわれていた。当時はまだBrian the SunもKANA-BOONもメジャーデビュー前。筆者はこのときも会場に足を運んでおり、共に若さと勢いを前面に押し出したライブで、満員のロフトを賑わせたことを覚えている。そこから3年が経ち、Brian the Sunもついに今年メジャーデビュー。新宿ロフトが40周年を迎えたこと、両バンドが再び同じ舞台に立ったことで、第二回が実現したというわけだ。

 普段から親交の深い2バンドは、KANA-BOONのレギュラー番組『もぎもぎKANA-BOON』(SPACE SHOWER TV)でも、このライブに向けたパフォーマンスを展開してきた。互いに筋トレ対決を行なったり、マイクパフォーマンス対決で本音をぶつけ合ったり、出順決めの腕相撲ではBrian the Sunが圧勝したり(この模様は当日会場でもオンエアされた)と、和気あいあいとした雰囲気でこの日を迎えた。

 

 ライブ冒頭は、前日に放送されたLINE LIVEの内容を受け、前説として2バンドそれぞれの“愛されキャラ”小泉貴裕(KANA-BOON/Dr.)と田中駿汰(Brian the Sun/Dr.&Cho.)が漫談を繰り広げ、会場の雰囲気を緩めたあと、1番手としてBrian the Sunが登場。「Sister」「Suitability」「Naked Blue」と、疾走感溢れるロックナンバーで最初から全力の演奏を繰り広げた。が、3年という年月を経たことが影響しているのか、再びこの場を迎えたことがうれしかったのか。4人からは前回のような力押しではなく、どこかこの熱狂を楽しんでいるような印象を受け、自然とこちらの表情も緩んでしまった。

 

 

 「3年前に2マンをやったとき、KANA-BOONはグイグイ来てたけど、別に売れてはなかった。でも、すぐどっか行ったよね」と、先にメジャーの舞台に行ったKANA-BOONに悪態を付きつつ、楽しそうに笑う森のMCから、「パワーポップ」「しゅがーでいず」「アレカラ」と新曲を交えながら勢いそのままに畳みかけると、森の弾き語りから「神曲」へ。

 以前のインタビューで白山治輝(Ba.&Cho.)が「『Brian the Sun』までは尖った曲が多かったんですけど、そのくらいの時期から、良太が自分の弾き語りで歌っていたような曲を持ってくるようになって(中略)、いろんな楽曲に挑戦できるようになりました」と語っていたように、「神曲」はその転機の象徴といえるアルバムにおいても一際輝きを放つ、歌とアレンジが見事なバランスで成り立ったポップ・ロックソング。この3年でBrian the Sunが手に入れた武器は本当に大きなものだと実感させられた。そしてその結晶といえるものが、後半に歌われた最新曲であり、Brian the Sun屈指のメロディアスな楽曲「Maybe」なのだ。(参考:Brian the Sunが語る“遅れてきたルーキー”の戦い方

 終盤は「彼女はゼロフィリア」「HEROES」「ロックンロールポップギャング」とライブ定番曲を次々と披露。最後に演奏された「ロックンロールポップギャング」前には、森が「PAさんもっと音上げて!」と要求し、爆音のなかでパフォーマンスを繰り広げたところで彼らの出番が終了した。

 

 KANA-BOONについて書く前に、時間を少し巻き戻す。ライブ中盤、Brian the Sunは「ゆらゆらするやつでもなければフルドライブするやつでもありません」と前置きし、KANA-BOONの「MUSiC」を複雑なアレンジでカバーしていた。森は披露前に「キッズの大好物が四つ打ちやって知ってるで。でも俺らは8ビートの曲ばっか書くねん」とあっさり話していたが、両バンドの音楽における一番明確な違いはここにあるのかもしれない。

 

 UKのロックバンドに憧れて8ビートと複雑なアレンジを志向したBrian the Sunと、“気持ちの良いビート”を追求した先に四つ打ちのビートに一度は辿り着いたKANA-BOON。森の言葉を借りるなら「クラスで遊戯王カードが流行ってるときにマジック・ザ・ギャザリングをやってるようなやつが聴いてる」ような音楽性をベースにしながら、9年目にして歌の良さに改めて向き合ったBrian the Sunと、いち早くメインストリームに躍り出て、試行錯誤しながら自分たちの音を追求し、『Origin』で原点回帰を果たしたKANA-BOON。同郷・同世代だが、それぞれが別の方向を向いて鍛錬を続けたその先で、2バンドともアンサンブルを大事にしながら、シンプルに良い歌を届けることに到達し、この日のステージへたどり着いたというのも偶然にしては面白い。

関連記事