“サイファー”なぜ全国的ムーブメントに? 現役ラッパーに訊く、発祥の経緯と面白さ

“サイファー”の発祥と面白さ

 現在では、夜の駅前を拠点にしているイメージが強いサイファーだが、“昼の青空の下”でラップを楽しみたいということが起源だったよう。また、サイファーが全国各地に広がっている背景について、ダースレイダー氏は「ラップ人口の増加」と「SNSの普及」の2点を挙げる。

「昔は、学校に1人いればいいくらいだったHIPHOP人口が『高校生ラップ選手権』ができて増えてきている。ラップはお金をかけずに始めることができますしね。そして、今はSNSがあるのでサイファーの告知がしやすくなった。ACEが中心になってやっている渋谷サイファーもTwitterでよく告知していますよね。昔も、ネットの掲示板を使って告知していましたけど、SNSによって告知が広まりやすくなり、元々知らなかった人もサイファーの現場に出会えるようになった。誰でもできることだから、自ら発信してサイファーを始める人が増えたんだと思います」

 『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』は、日本全国の高校生がフリースタイルラップでMCバトルを行う、2012年から開催されている大会だ。BSスカパー!で放送されているバラエティー番組『BAZOOKA!!!』内のコーナーから派生した企画で、開催を重ねるごとに年々、会場の規模を大きくしていることからも、HIPHOP人口の拡大が伺える。

 さらに、ダースレイダー氏は、サイファーが各地に拡がりを見せていることに、ある面白さを感じていると続ける。

「サイファーってどの場所も同じことをしているわけではなくて、各地ごとのスタイルができている。大阪の梅田サイファーが独特なスタイルを確立していたり、各地域によって言葉のノせ方の違いがあったり、その街の雰囲気をラップに取り入れていたりします。地方に行った際に、各地のサイファーに遊びに寄ると、新しい気付きや自分が思ってもいなかったラップが口から自然と出たり、相互反応が起きるのも面白いです」

 最後にダースレイダー氏は、サイファーというカルチャーについて「遊びのひとつとして、子どもたちがボールがあったらサッカーをやるみたいに、何人か集まったらラップを楽しむみたいな流れになればいいなと。お金もかからないし、どこでもすぐにできることなので。学校が違う子同士で友達になれる手段でもある」と今後の楽しみ方を提案した。

 6月21日に放送された『ZIP!』(日本テレビ)の「フリースタイルラップ特集」では、高校生が昼休みや放課後にサイファーを行っている模様が放送され、大学生、社会人もラップを披露し楽しんでいる様子が伝えられていた。ラッパーたちの表現の場として発展してきたアンダーグラウンドな文化は今、幅広い世代が関わるコミュニケーション手段のひとつへと広がりを見せている。

(取材・文=大和田茉椰)

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