挫・人間『非現実派宣言』インタビュー

挫・人間 下川リオ × 姫乃たま『非現実派宣言』特別対談 「現実を非現実で塗りつぶしていく感じ」

姫乃「我々、ポケモン世代ですよね」

 

姫乃:2曲目「ゲームボーイズメモリー」は、シティポップらしい爽やかなサウンドに、えー、爽やかとは言いがたい歌詞が流行りのラップに乗って……。

下川:いま、シティポップって流行ってるんですよね。でもシティってつくもの全部、なんとなく怖いです。ラップも流行ってますけど、僕のやってるあれは、家の中でみゃんみゃん叫んでみて、後から歌詞をつけてるだけなんです。そう、そもそも最初はタイトルが、「ポケモン言えるから」でした。全然シティポップ感がない。歌詞を作る時ってノスタルジックな気持ちになって、昔好きだったゲームとか漫画に心がリンクしちゃうんです。ほら、僕たちってポケモンと一緒に育ってきたじゃないですか。

姫乃:我々、ポケモン世代ですよね。

下川:いま地元の同級生達がばりばり結婚してるんですよ。結婚しなくても、就職して車持ってたり。それで25才になった僕が何してるかっていうと、ポケモンGOですよ。配信日に自転車で新宿御苑に行ってポケモンゲットしまくりました。Facebook見てるとそんなことしてるの同級生で僕だけなんですよ。それで、僕は昼出歩けないから、夜にお散歩して、すごい遠くまで行って、朝日に照らされながら帰り道で、部活の朝練に通う中学生とか、登校中の小学生とすれ違うんです。そんなとき僕は、とんでもないところまで来てしまったなって思うんです。でも、僕は「いまでもポケモン言えるから!」って自分を肯定したい。

姫乃:次の「☆君☆と☆メ☆タ☆モ☆る☆」では、下川君が女性になりきることで自分を肯定できている気がします!

下川:まあ、前作の「お兄ちゃんだぁいすき」で、僕は妹になったわけですけど、そろそろ女としての僕はアイドルやりたいなあと。(参考:挫・人間の下川リオが語る、サブカルの屈折「素敵なお兄ちゃんは、僕のことなんか好きにならない」

姫乃:アイドル。

下川:アイドル。アイドルさんとよく対バンさせてもらうんですけど、お客さんが、ぱんっぱぱんっひゅー!ってやるヤツあるじゃないですか。

姫乃:PPPHっていうヲタ芸ですね! あります。

下川:それだけを思って作りました。

姫乃:えっ、なるほど。

下川:これ土壇場でもう一曲収録することになって、二週間くらいで作った曲なんです。

姫乃:土壇場で湧き出てきた下川さんの素の欲望が、アイドルになってPPPHされたいということだったんですね。

下川:そうです。僕は本当に女になりきって歌っているのですが、我に返って聞いたら、めちゃくちゃ気持ち悪いんですよね。ほんと、ゾッとする。親に一番聞かせられない曲です。でも僕、面白いことがやりたいと思ってバンドやってるんですけど、バンドって楽器置いた時の方が面白いじゃないですか。こいつらとうとう辞めたか……みたいな。それで打ち込み中心の、“楽器を置く”曲を作ったんです。

 

姫乃:楽器でモテようとするGLAYのコピバン野郎は許せないですね。(「何故だ!!!」の歌詞、「初恋のキミはGLAYのコピバン野郎に恋だ! 合体だ! もうダメだ!」より)

下川:僕が駆逐しようと思ってます。高校の時、文化祭のバンドオーディションで、セックス・ピストルズのカバーをしたら、GLAYのコピバンのほうが受かったんです。しかも僕はクラスで、「下川が謎の呪文唱えてる」って言われてて、GLAYのコピバンは最後の曲だけ「リンダリンダ」やってめっちゃ盛り上がってたんですよ! 僕、「ノーフューチャー!!!」って叫びながら、「それ、俺のことだあああ!!」って。

姫乃:まさに4曲目「人生地獄絵図」ですね。

下川:ほんと、それに尽きると思って。

姫乃:でも曲調はポジティブ。あと、歌詞にフラッシュ動画の話題が出ていて世代を感じました。ちょっと懐かしさと妙な恥ずかしさでジタバタした。

下川:メンバー全員、小学生の時にフラッシュにハマってたことがわかったんですよ! 僕たちめちゃくちゃ仲良いんで、ツアー行く車の中で100時間とかノンストップで喋り続けるんですけど、たまに自分たちだけが面白い謎のギャグみたいなものが開発されるんです。その中で、「テレビもねえ、ラジオもねえ、でもパソコンあるあるぅ! パソコンあるあるぅ!!」って叫ぶとめちゃくちゃ面白いことに気づいて、「これハードコアな音楽に合わせたら面白いね」って馬鹿話が実現してしまいました。そして、もう誰も知らないフラッシュのことを大声で歌う自分の声を聞いて、「もう俺はダメだあっ……」と思ったら、サビの「人生地獄絵図~♪」がするっと出てきました。

姫乃:制作に時間がかかった曲ってありますか?

下川:煮詰まることはなかったかもしれないです。そもそも悩むようなことしてない。本当に好きなことだけできました。

姫乃:私はもう「世の中に何か言いたい」みたいな感情が一段落したのですが、挫・人間の曲を聞くと思い出すものがあります。具体的には、みんな死ねえええってなります。

下川:年々、アクは強くなるばかりです。

姫乃:ふふっ、ふふふふ……。

下川:ふふっ、ふふふふ……。

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