欅坂46が“けやき坂”で見せた1年目の集大成、そして今後の可能性

 

 4曲目には菅井をセンターとし、両脇を志田愛佳と渡邊理佐、さらに外側を守屋と渡辺梨加が固める「青空が違う」を“ほぼ”初披露(この時点では8月13日の名古屋握手会会場でのみ披露されていた)。楽曲を手掛けたのは、作曲・杉山勝彦、作編曲・杉山&有木竜郎という、乃木坂46ファンにとっては「君の名は希望」や「きっかけ」など、数々の代表曲でおなじみのコンビ。四つ打ちのビートとストリングスが切なくもポップに絡み合うアレンジは、乃木坂46に提供されて「これぞ乃木坂!」と称賛されてもおかしくない良曲だ。乃木坂46にとっては王道ともいえる楽曲でも、シリアスかつ前衛的なイメージの強い欅坂46に手渡されると、違った新鮮さに映ると同時に、彼女たちが“坂道シリーズ”という繋がりを持っていることを改めて認識させられる。乃木坂46がアイドルグループとして確固たる地位を確立し、欅坂46が革新をもたらす存在として認知され始めた今だからこそ、2グループを繋ぎとめる「青空が違う」が、このタイミングで欅坂46に渡されたことの意味合いは大きい。

 鈴本がMCで「この曲の振付は、欅坂の中でも特に難しい」と語ったのは、5曲目の「語るなら未来を…」。振付や雰囲気は6曲目に披露された「サイレントマジョリティー」と同じカテゴリに入ってくるものだが、楽曲は90sのJ-POPを彷彿とさせるチープな音色のシンセサイザーが特徴的で、乃木坂46の「世界で一番孤独なLOVER」に近しい印象を受けるもの。バグベア(「サイレントマジョリティー」)とPENGUINS PROJECT(「語るなら未来を…」)といった気鋭の若手作家を作曲に、久下真音(「サイレントマジョリティー」)と佐々木望(Soulife・「語るなら未来を…」)という絶妙なバランス感覚を持つ中堅アレンジャーを起用する方向性は、この2曲によって「欅坂46」の王道スタイルとして確立された。

 

 2度目の「世界には愛しかない」が披露されたアンコールで、小林は「2年目は、1年目のときよりも大きな場所で大きなライブがしたい。たくさんの人に勇気を与えられるグループになりたい」と語り、平手は「この1年、私たちはたくさんの出来事をすごいスピードで経験させていただきました。これからも感謝の気持ちを忘れずに、坂を1つひとつ上っていきたい」と決意を新たにした。

 乃木坂46の方法論を踏襲しながら1作目を大ヒットさせ、その結果に慢心せず、さらなる挑戦を続けながら独自の色を作り出す欅坂46は、アイドルシーンにおいて他の追随を許さないほどの強度を誇る。相変わらずといえる緩やかなMCはいまだ健在だが、彼女たちが1年目の集大成を見せたこの日のライブは、その理由を目と耳にしっかりと理解させるには十分すぎる50分間だった。

(取材・文=中村拓海/写真提供=(C)tv asahi)

※記事初出時、一部表現に誤りがございました。訂正してお詫びいたします。

■放送情報
『テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION 音楽ライブ』
今秋・CSテレ朝チャンネル1で放送決定
詳しくはこちら(http://www.tv-asahi.co.jp/ch/summerstation_live/

■セットリスト
1.渋谷川
2.世界には愛しかない
3.手を繋いで帰ろうか
4.青空が違う
5.語るなら未来を…
6.サイレントマジョリティー
En1.世界には愛しかない

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