ライブハウス・バンドが行う「全都道府県ツアー」の実態ーー兵庫慎司がフラカンを例に考える

ライブハウスバンド「全都道府県ツアー」の実態

 クリス・ハート。吉田山田。SKE48。ORANGE RANGE。Aqua Timez。OKAMOTO’S。倖田來未。MY FIRST STORY。

 フラワーカンパニーズが、今年1年かけて『47都道府県ワンマンツアー 夢のおかわり2016』を行っている。これを書いている現在は、7月9日沖縄・桜坂セントラルでその前半戦が終了したところで、僕はそのうち横浜・名古屋・東京・沖縄に行ったもんで、そういや今年OKAMOTO’Sも全都道府県ツアーやってるよな、他のミュージシャンはどうなのかな、と、「47都道府県ツアー 2016」で検索をかけてみたら、これだけ名前が出てきた。

 フラカンの場合は、昨年12月19日に結成26年目にして初の日本武道館ワンマンを行い、そこに日本全国から集まってくれたファンへのお礼として、今年はこっちから各地に会いに行くーーという趣旨で、この全都道府県ツアーを開催している。フラカンに先駆けること2年前、2014年1月に初の日本武道館ワンマンを行い、その後全都道府県ツアーを行った先輩、怒髪天に倣ったとも言える。

 ちなみに、ORANGE RANGEは結成15周年を記念しての全都道府県ツアー。OKAMOTO’Sは何周年とかいうお題目はないが、Netflixで公開されたドラマ『火花』のテーマソング『BROTHER』を6月1日にリリースしてから、ツアーをスタートしている。

 他のアーティストも含めて見ると、最初から最後まで今年で完結している人、昨年から今年にかけて行っている人、今年から来年にかけての人、と、時期はさまざま。

 フラカンの場合は、2月から7月までで32都道府県・36本を回り、夏フェス等をはさんで9月から12月までかけて残りを回るスケジュール。なお、32都道府県なのに36本なのは、大阪・横浜・東京は2デイズだったり、北海道は函館と札幌で行ったりしたため。さらに、後半戦の途中で、このツアーとは別のアコースティック・ツアー『フォークの爆発』全5本もはさまっていたりする。

 ただ、メンバーにきいたところによると、全都道府県ツアーを行っている今年の方が、例年よりもライブの本数は少なくなる見込みだという。「だって、1年かけて47カ所で、複数回やる都市を合わせても60とかでしょ。基本、週末で組んでるツアーだし、そこにイベントとかゲストとかが何本か増えたとしても、普段よりはゆるいよね」だそうです。年間100本オーバーのツアーを何年も続けてきたバンドなんだから、まあ、確かにそうだ。

 たとえば僕が子供の頃の1980年代だったら、先に挙げた名前の中で、このように47都道府県を回るツアーが可能なのは、もっとしぼられるだろう。要は、ホール規模で回れるアーティストに限られる、ということだ。

 まだ地方にライブハウス文化が根付いていなかったし、邦楽ロック・ファンの総数がそこまで多くなかった20年前〜30年前に、全都道府県ツアーを行うことができたのは、たとえば浜田省吾などといったビッグ・ネームに限られていた。つまり、とても人気があって全国にしっかり基盤のあるアーティストだけだった。それが……いつ頃からだろうか、2000年あたりがその境なのではないかと思うが、ライブハウス規模で全都道府県を回るツアーを、ロック・バンドが行うことが、だんだん可能になっていった。僕が憶えているのは、メジャー在籍時代のSCOOBIE DOが、全都道府県ツアーを行っていたことだ。サニーデイ・サービスが解散し、裏方に回ったベースの田中貴がSCOOBIE DOのマネージャーをやっていた頃だから、2000年代前半だと思う。

 なお、現在、再結成したサニーデイ・サービスでベースを弾きながらラーメン評論家としても活動している田中貴は、これまでに全都道府県のラーメンを食べているというとんでもない情報量がその売りのひとつだが、「全都道府県食べた」経験の最初は、このSCOOBIE DOのツアーの時だと思う。

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