森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.7
NEWSの新曲はアイドルソングの王道を行く? 7月13日発売の注目新譜5選
清 竜人25『アバンチュールしようよ』(SG)
一夫多妻制アイドルという意外すぎるコンセプトで登場した清竜人25は、どこか殺伐としたアイドルシーンにおいて“なんだかいつも幸せそう”というイメージを生み出しながら支持を広げ、今年4月には中野サンプラザ公演を成功させるなど確実に活動の規模を拡大。グループの幸福感を全面的にアピールした『LOVE&WIFE&PEACE』に続く2016年2枚目のシングル『アバンチュールしようよ♡』からも、現在の清と夫人たちの好調ぶり(幸せぶり)がムンムンと伝わってくる。“俺とアバンチュールしようよ”という清のセクシーなつぶやきにリードされたこの曲は、1970年代のソウル〜ディスコ・ミュージックを換骨奪胎、きわめて現代的なアイドルポップへと昇華したナンバー。「TPOなどくだらないね」「BPMは下げられないね」というフレーズとともに体を揺らしているとつい「“楽しむことが最大の復讐”ってホントかもな」などと思ってしまう。その中心にあるのはもちろん、清の卓越したソングライティングとプロデュースワーク。ポップス・クリエイターとしての彼の才能を活かす装置として、このプロジェクトはさらに機能し始めている。
ASIAN KUNG-FU GENERATION『ブラッドサーキュレーター』(SG)
「Right Now」「Re:Re:」に続く、バンド結成20周年イヤー第3弾シングル「ブラッドサーキュレーター」は、TVアニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニングテーマとして制作されたナンバー。アジカンが『NARUTO』のオープニングテーマを手がけるのは「遥か彼方」以来、約13年ぶり。後藤は「僕らはNARUTOという作品を特別に思っています」というコメントを発表していて、アニメ・タイアップという現在のメジャーシーンに不可欠な要素とも意味のある関係を築いていることを示唆している。「ブラッドサーキュレーター」は重厚さと鋭さを共存させたギター・フレーズからスタートするロック・チューン。アルバム『Wonder Future』(2015年)で体現したダイナミズムに溢れたサウンドメイクを継承しつつ、開放感のあるサビのメロディ、<歩みを止めないで/希望を捨てないで>という直接的なリリックを含め、わかりやすくアジカンらしさをアピールする楽曲に仕上がっている。20周年のタイミングに合わせ、過去の活動と上手く繋げながら、あくまでも“2016年のアジカン”を高い精度で表現する。知性と衝動のせめぎ合いこそが、このバンドのキモなのだと改めて実感させられるシングルだと思う。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。