来日単独公演記念インタビュー

ニュー・オーダー来日インタビュー:B・サムナーが語るバンドキャリアとイアン・カーティス

 

「イアンは花火のように一瞬ものすごく眩しく輝いて、僕はロウソクの火のように長く灯っている光」

――昔のニュー・オーダーの曲はピーター・フックのベースが欠かせない要素で、観客はそれこみで楽曲を記憶してると思います。若いおふたりはそういう曲を演奏しなきゃいけないプレッシャーみたいなものは感じますか。

トム:ベースラインだけを気にしてるわけじゃなく、曲全体を考えながら演奏してるから、余計なプレッシャーを感じることはないよ。ニュー・オーダーでベーシストとして働いて、とても居心地がいいしやりがいもある。今このバンドは5人一体となって前に進んでいると感じているよ。

――バーナードにお聞きします。ジョイ・ディヴィジョン以来、あなたは数多くの盟友と言える人たちを失ってきました。イアン・カーティス、マーティン・ハネット、ロブ・グレットン、トニー・ウィルソン、そしてピーター・フックまで。バンドに対する熱意が薄れた時期もあったと思うんです。でもあなたは今でもニュー・オーダーを続けている。その最大のモチベーションはなんでしょうか。

バーナード:うん、いい質問だ。……楽しいから、かな。ほかにやることがないっていうこともある(笑)。僕はクリエイティヴな人間だから、このライフスタイルが気に入っている。音楽をやめてゴルフを始めるってわけにもいかないだろう?(笑)

――でも音楽はニュー・オーダーでなくてもできるわけで。

バーナード:そうだね。確かに1人でやっていく方が気楽だと感じることはある。自分の好きなことだけできるわけだから。でも人の期待に応えたり、ほかのメンバーの反応を多少は気にしながら作る面白みというのもあるんだよね。難しさもあるけど、それも挑戦しがいがある。ひとつ考えているのは、自分が今まで影響受けた楽曲のカヴァー集を出してみたい。そうすれば歌詞を考えなくて済むからね(笑)。

――観客の期待に応えなきゃいけない、とおっしゃいますが、たぶん30年前のあなたなら、そういうことは考えなかったと思うんです。どこかで考え方が変わってきたところはあるんでしょうか。

バーナード:うーん……期待に応えなきゃいけない、というか気にしなきゃいけない相手というのは、対お客さん、というよりは対バンド内なんだよね。みんなやりたいことが少しずつ違うから、相手も立てなきゃいけないし、その駆け引きもある。だから特にアルバムを作るときはすごくストレスがたまる。時間もかかるしね。それを発散するために飲む。(溜息)そうして飲み続けると、アルバムができあがるころにはカラダがガタガタになってるわけ。だからバンドは難しい。難しい人を相手にするのはとにかく大変だ。そのために精神的にギリギリにところまで追い込まれることもある。それぐらいバンドをやっていくのは大変なんだよ。

――今のバンドでそんなに難しい人がいるんですか。

バーナード:えー(笑)。まあ……過去にはいたんだよ、たぶんね(笑)

――なるほど(笑)。あなたは長いこと音楽をやってきて、大概のバンドが目標にし目指していることは、あらかた達成してきたと思うんです。今後の音楽人生において、何か目指すところはありますか。

バーナード:幸せであること、かな。まあそれは人間みな目指すところだけど。去年のクリスマスから、いろんなポップ/ロック・スターが死んでるけど、少しでも長生きしたいもんだね(笑)。今年はいろんな人が亡くなってショックが大きいよ。死生観ってものを考えるようになったね。

――では最後に。これはあまりにも仮定の質問でありすぎるんですが、もしイアン・カーティスが亡くならず生きていたら、どうなっていたと思いますか。

バーナード:あー、たぶん彼はこういうライフスタイルは続けていられなかったと思うよ。健康面で限界があって、耐えられなかったんじゃないかな。おそらく遅かれ早かれ音楽活動からは引退して、作家になっていたと思う。でもひとりでやる作家活動では目標が見いだせず、またメンバーを集めてバンドでやるようになったかもね。

 

――じゃあどのみちあなたが歌うようになるのは必然だったということでしょうか。

バーナード:いやいや、それはない。僕はバンドで歌いたいなんて一度も思ったことはない。すごく詩的な表現をすると、イアンは花火のように一瞬ものすごく眩しく輝いて、僕はロウソクの火のように長く灯っている光なんだ。イアンは2人いた。僕らの知っているイアンは僕らと同じように普通で、陽気で、いい奴だった。一般に彼は(ダークな雰囲気の)アーティスト写真のイメージで語られがちなんだけど、ああいう風に鬱になって落ち込んでいたのは、ほんの一カ月かそこらだけなんだよ。でも同時に、彼の書く歌詞に見られるようなダークな一面も持っていた。本当のイアンはどっちかわからないけど、ああいうダークな世界をずっと書き続けることは不可能だったと僕は思う。なんらかの形で、あの暗い世界から脱却していたはずだ。でももし抜け出せたとしても、歌詞を書くインスピレーションがなくなってしまったかもしれない。どのみち彼は死ぬことでそこから抜け出してしまったんだけどね。

(取材・文=小野島大/写真=小原泰広)

■リリース情報
『Music Complete』
定価:2,300円(税抜)
※ボーナス・トラック1曲収録

1. Restless
2. Singularity
3. Plastic
4. Tutti Frutti
5. People On The High Line
6. Stray Dog
7. Academic
8. Nothing But A Fool
9. Unlearn This Hatred
10. The Game
11. Superheated
12. Restless-Extended Bonus Mix(日本盤ボーナス・トラック)

『Music Complete:風呂敷ボックス・セット』 (3枚組CD+カセットテープ+風呂敷 / 限定BOX)
定価:6,000円(税抜)

【ボックス・セット内容】
ピーター・サヴィル氏デザイン風呂敷

アルバム『ミュージック・コンプリート』(カセット・テープ)

CD1
1st シングル「レストレス」EP(CD) 全7 曲/ Time 47:05
1. Single Version
2. Extended 12″ Mix
3. Agoria Remix
4. xxxy Build Up Mix
5. RAC Mix
6. Andrew Weatherall Remix
7. Agoria Dub (初CD化)

CD2
2nd シングル「トゥッティ・フルッティ」EP(CD) 全8 曲/ Time 65:55
1. Single Version
2. 12″Extended Mix 2
3. Hot Chip Remix
4. Tom Trago' s Crazy Days Remix
5. Richy Ahmed Remix
6. Hallo Halo Remix
7. Tom Rowlands Remix
8. Ishino Takkyu Remix (初CD化)

CD3
3rd シングル「シンギュラリティ」EP(CD) 全6 曲/ Time 41:05
1. single edit
2. extended mix
3. erol alkan' s stripped mix
4. mark reeder' s duality remix
5. JS Zeiter Remix
6. JS Zeiter Instrumental (初CD化)

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