Uruの歌声は世代を超える? 柴那典が考察する、ネット経由の新たなブレイクの形

 新人女性シンガー、Uruが6月15日にシングル『星の中の君』でメジャーデビューを果たした。

 実は彼女、すでにネットではかなり多くのファンを掴んでいるシンガーである。活用したのはYouTubeとSNS。2013年よりJ-POPを中心にカバー曲を歌い、その動画を投稿することをスタート。100本を目標に公開してきたその歌声がSNSを介して徐々に広まり、総再生回数は4500万回以上を記録し、チャンネル登録者は14万人を超えた。

 とはいえ、「YouTubeに投稿したカバー動画をきっかけに注目を浴びてデビュー」というストーリー自体は、けっして新しいものではない。当時16歳だったジャスティン・ビーバーがYouTubeに投稿したクリス・ブラウンのカバー動画をきっかけにブレイクしたのは6年前、2010年のことだ。日本でも先例は沢山いる。

 「ソーシャルメディアを駆使して〜」とか「出身や年齢などほぼ全てのプロフィールが非公表の“謎のシンガー”として話題を呼び〜」みたいな戦略性や仕掛けの部分も、言ってしまえば、新しいところはない。これも先例は多い。

 ただ、筆者が「お!?」と思ったきっかけは、やはり歌声だった。吐息の成分が多く、しっとりとした感触。あまり張り上げたりしゃくりあげたりしない、ナチュラルな声。「透明感がある」とか「癒し系」という表現が似合うタイプの歌声だ。

 公開した中で最も再生回数の多い楽曲が中島みゆき「糸」であるのも象徴的で、こうしたバラードにとてもピッタリの歌声と言える。

糸  中島みゆき  COVER by Uru

 ちなみに、この「糸」という曲は、中島みゆきが92年にアルバム『EAST ASIA』に収録したナンバー。ファンの間では名曲と知られていたが、一般層にはほとんど広まっていなかった楽曲だ。しかし00年代後半以降のJ-POPカバー文化の広がりと共に徐々に知名度が拡大。人気が決定的になったのは2010年代に入ってからだ。

 こうなると、YouTubeでも楽曲名での検索や関連動画からカバー動画に辿り着く人も多くなる。そうした経路でUruを知った人もいるだろう。

 また、男性ボーカル曲のカバーが映えるのもUruの歌声の大きな特徴と言える。なかでも「ロビンソン」や「みなと」を公開しているスピッツとは相性がいい。本人自ら手掛けるピアノアレンジも歌の方向性とマッチしている。

ロビンソン スピッツ (白線流し挿入歌) ピアノアレンジ COVER by Uru

 SEKAI NO OWARIの「Dragon Night」カバーも印象的だ。オートチューンを駆使したEDMナンバーの原曲を落ち着いアレンジで歌い上げている。

Dragon Night / SEKAINO OWARI   Uru

 BUMP OF CHICKEN「ray」やUNISON SQUARE GARDEN「シュガーソングとビターステップ」、サカナクション「新宝島」などロックバンドのピアノカバーにも果敢に挑戦している。このあたりは本人の好みかも。

BUMP OF CHICKEN / ray COVER by Uru

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