AAA、indigo la End、ハンバート ハンバート、SHE'S、堂本剛…6月8日発売新譜の注目作は?

indigo la End『藍色ミュージック』(AL)

 ミュージシャンの人生や心情、ましてや恋愛事情と作品と結びつけるのはまさに下衆の極みだと自分に言い聞かせ(自らの個人史に絡み取られず、そこから自由になろうとする行為が表現の本質であってほしいので)、せめてこのバンドはできるだけ余計な情報をシャットアウトして接しようと思っていたのだが、洗練されたファンクネスのなかで安らいだメロディがじんわりと伝わってくる「ココロネ」を聴いた瞬間、そんな雑念はどこかに吹き飛んでしまった。2010年の活動スタートして以来、普遍的なポップミュージックを志向してきたindigo la Endだが、後藤亮介(Ba)と佐藤栄太郎(Dr)によるブラックミュージック経由のリズムセクション、歌心を備えた長田カーティスのギターフレーズ、そして、独特のグルーヴと抒情的な心象風景を共存させた川谷絵音のソングライティングのバランスは本作によって一気に向上した感がある。ここ数年におけるシティポップの潮流との距離の取り方も絶妙。何度も言うが、音楽だけに向き合ってもらえれば、その良さは確実に実感できると思う。

indigo la End 「藍色好きさ」

AAA『NEW』(SG)

 デビューからの10年を振り返る『AAAぴあ』というムック本で既存のシングル50作をレビューさせてもらったのだが、トランス、ミクスチャーロック、エレクトロ、EDMからメロコアまで、その時期のトレンドを意識したサウンドメイクとメンバー個々のキャラクターを活かした構成がとても見事でまったく飽きることがなかった。51作目のシングルとなる『NEW』では80年代R&B系ダンス・トラックのテイストを下敷きにしつつ(抑制されたエレクトロ系のリズムとアコースティックギターのバランスが素晴らしい)、夏の始まりのワクワクをわかりやすく描いたリリック、「We got it!」「Brand-new feeling!」というキャッチーすぎるサビのフレーズを含め、リスナー・フレンドリーなサマーチューンに仕上げている。AAAのイメージを引き受けつつ、少しだけ新しい要素を入れる。これを丁寧に続けてきたことが、現在の彼らの成功の要因だろう。そして、ほとんどテレビ稼働をしないまま、ついに大阪・京セラドーム公演(11月12日、13日)も決定。メンバーのタレント性の高さがいちばんの魅力だとは思うが、“曲がいい”“ライブがたのしい”という条件がそろわないとこんなことは実現できない。

AAA 「NEW」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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