夏代孝明が語る、歌への向き合い方と楽しさ「人それぞれ違うし、まったく個性のない人はいない」
各国代表のアマチュアシンガーによるカラオケ世界No.1決定戦『KARAOKE WORLD CHAMPIONSHIPS (以下、KWC)2016』。本年度は7月の東京大会(7月2日・渋谷クラブクアトロ)と大阪大会(7月16日。梅田amHALL)を勝ち抜いた出場者が8月に六本木ニコファーレで開催される決勝大会に進み、優勝者が決定する。勝者(男女各1名ずつ)には渡航費や宿泊費などをバックアップのもと、中国・マカオで行なわれるアジア大会およびカナダ・バンクーバーで開催の世界大会への出場権と賞金50万円が贈られる。なお、日本大会のエントリー期間は5月31日まで。まだエントリーを迷っている人もいることだろう。
そこで今回は、15年にアルバム『フィルライト』でメジャー・デビューし、5月25日に1stシングル『クロノグラフ』をリリースする夏代孝明に登場してもらい、歌やカラオケにまつわる「思い出」や「楽しさ」、そして自身の作詞曲を3曲収録するなど新たな試みが詰まった『クロノグラフ』の制作背景について語ってもらった。
原曲をそれぞれの歌い手の視点で解釈するニコニコ動画のコンテンツ「歌ってみた」の歌い手として人気を獲得した経緯を持つ夏代孝明は、キャリアを通して歌にまつわる表現方法に正面から向き合ってきたシンガーのひとり。そんな彼ならではの、歌への思いや、カラオケにまつわるエピソードを感じ取っていただければ幸いだ。(杉山仁)
「歌を練習していくときは、最初に誰かの真似から入っていく」
――夏代さんが歌うことに楽しさを感じはじめたのは、いつ頃のことだったんですか。
夏代孝明(以下夏代):小学生の頃ですね。合唱の授業で、僕がひとりだけ合唱向きじゃない歌い方をしていたんです。それを先生に指摘されたことで、友だちにも「孝明、歌下手だな」って言われたりして。でも、それが悔しくて居残りで先生に教えてもらっていたら、だんだん歌えるようになってきて、楽しみを見いだせたんです。最初は苦手だったけど、ちょっとずつ歌うことが好きになったという感じでした。その頃は、まさか今のようになるとは思っていなかったですが(笑)。
――意外な話ですね。では、最初に「歌いたい」と思ったポップ・ミュージックは?
夏代:中学に入って、(のちに『フィルライト』に「天体観測」のカバーを収録する)BUMP OF CHIKENさんや、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさん、RADWIMPSさんのコピーバンドを始めたんです。同じ世代の人たちが好きだったバンドを聴いていましたね。
――当時、カラオケにも行っていましたか?
夏代:行ってました。DAMの「精密採点Ⅱ」で90点以上を出せるか競うのがすごく流行っていて。94~5点ぐらいは出した記憶がありますね。でも、友だちの中には99点を出している子もいたので、当時は自分で歌が上手いとは思っていなくて。バンドのメンバーや、違うバンドのボーカルだけで集まって、放課後に行くことが多かったです。演歌を歌ったりもしたし、アニソンも好きで、当時は『デジモンアドベンチャー』のオープニングテーマである和田光司さんの「Butter-Fly」が、自分のなかで一番最高得点を獲得した楽曲だった気がします。
――ひとりで行くよりも、大勢で利用することの方が多かったんですね。
夏代:はい。ライブの前日にひとりで練習しに行ったりもしましたけど、学生生活を思い出すと、「友だちとカラオケに行った思い出」は自分の中ですごく大きいことなんです。人生で初めて自分ひとりだけの歌を聴いてもらったのもカラオケだったと思いますし。恥ずかしさを捨てきってみんなで楽しむというのは、大事な経験でしたね。
――今回のKWC2016はパフォーマンスも審査の対象となりますし、日本大会も本格的なライブ演出と大きなライブ会場で行なわれます。夏代さんがバンドとして初めて人前で歌った時は、上手くいったんですか。
夏代:最初は失敗ばかりでした。オチの部分で僕がギターを弾いて歌うだけのパート時に、コードを失敗したりして(笑)。いまでもライブの前日に、その時の光景を思い出すことがあるんです。僕はそのライブの様子を、観に来てくれていた友達の表情まで全部覚えていて。それが現在の自分に置き換わっている夢を見て、バッと起きることがあるんです。
――カラオケには自分で歌うだけでなく、「人の歌を聴く」という魅力もありますが、夏代さんは人の歌を聴くのも好きですか。
夏代:歌は人それぞれ違っていますし、まったく個性のない人っていないと思うんです。だから学生の時も、人の歌を聴いて「その歌い方、かっこいいかも」と思ったりしていました。人の歌を聴いて、自分の中にどれだけ取り入れるかを研究したりもしていて。
――中でも影響を受けた歌い手の方やボーカリストの方は?
夏代:まずはMr.Childrenの桜井和寿さん。
――ああ、その要素は夏代さんの歌からも感じられますね。特に高音で歌う時の雰囲気には通じる部分があると思います。
夏代:桜井さんは本当に好きなので、参考にさせていただいています。歌を練習していくときは、最初に誰かの真似から入っていくと思うんですけど、僕の場合はその入口が桜井さんでした。ほかにはBUMP OF CHICKENの藤原基央さんや秦基博さん。「歌ってみた」の歌い手さんだと、最初に聴いて衝撃を受けたのはhalyosyさんの「メルト」ですね。その影響も僕の中では大きいです。Mr.Childrenさんの曲は、カラオケでもよく歌っていましたね。その頃は、「桜井さんはここをこう歌ってたな」ということを思い出しながら練習していたんです。
――夏代さんがボーカリストとして歌い方を学んでいく中で、カラオケは大きな役割を果たしていたんですね。
夏代:そうですね。いつも隣合わせというか、ずっとそばにあった存在でした。
――どれくらいの頻度で行っていたんですか?
夏代:当時はもう、毎日くらい行ってました。部活みたいに、学校が終わったらみんなで「行こう!」という感じで。自分の歌が上手いとは思っていなかったですけど、みんなそれぞれプライドは持っていたような気がしますね(笑)。