『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー

Flower、三代目JSB、乃木坂46ら手掛ける作曲家・Hiroki Sagawaインタビュー “ヨナ抜き音階”の効果的な使い方とは?

 

――和のテイストの原点がユーミンということですが、最先端のミクスチャーも作っているなかで、今風のポップスの原点はどこにあるのでしょうか?

Hiroki Sagawa:インディーズのアーティストから得たものが大きいですね。例えばダンスミュージックひとつとっても、インディーズの人たちはいろんなアプローチをしていますから。いま、クロスオーバーできているのは、当時の経験があったからだと思います。結果オーライ、というか。メジャーなアーティストだと、Nujabesの影響は大きいと思います。<IN YA MELLOW TONE>シリーズなども、ジャジーヒップホップの要素があって。

――最初にSagawaさんの曲を聴いたとき、確かにNujabes的なイメージは感じました。

Hiroki Sagawa:そうなんですよね。より歌謡的な要素が強いのは、やっぱり子どものころに母親に聞かされていたユーミンの影響で。自分にしかできないことを追求するというのは、これまで培ってきたものに素直になることだと思うんです。自信を持って「こういう音楽をやっています」と言えるというか。

――どうやったらコンペに通るか、と悩んでいる若い作曲家も多いと思います。Sagawaさんは、どんなところを突破口にしてきたのでしょうか。

Hiroki Sagawa:僕はきっちりコンペの内容に合わせるのが本当に苦手なんです。例えば「明るい曲」という発注があっても、得意なのは切ない曲だから、どっちつかずのものになってしまって。一応明るいメロディを意識しても、内面にある好みが悲しいメロディで、「こっちの方がカッコいいでしょ」と思ってしまうんですよね。ただ、発注に合わせるよりも、自分がいいと思ったことをやり続ける、ブレないことが大事だと思うんです。それでコンペに落ちたとしても、中途半端なものを出すよりよっぽどいい。発注と真逆の内容でも、めちゃくちゃいい曲が作れるんだったら、別のところで使ってもらえる可能性もありますから。

Hiroki Sagawa:僕もいまだにブレそうになるときがあるんです。そういうときは一度休憩して、「自分がやりたいことは何なのか」と考える。依頼された内容になるべく沿うことはもちろん大事だけれど、作家の個性が入って初めていいものができると信じているから、個性は消しちゃいけないと思っています。ただ、これは本当に人それぞれで、「発注に完璧に応えるべきだ」という気持ちも、すごくよく分かります。

――幅広い作風で、いい曲を書く方もいますね。

Hiroki Sagawa:そうなんです。ただ僕のポリシーとして、例えば友だちが聴いたときに、なんとなく「あいつの曲だな」と分かるようにはしていきたいですね。

――仕事が重なって詰まっているときに、モチベーションをどう保つか、ということも伺いたいと思います。

Hiroki Sagawa:それは難しくて、僕自身もけっこう知りたいところですね(笑)。とにかく根性という部分もありますけど、時間がなくても息抜きに散歩をしたり、というのは心がけています。時間がないからといって詰め込んで続けているより、気分転換の時間を取った方が結果的に早かった、ということもあって。ただ、そのまま遊びに行っちゃいけない(笑)。気を抜きすぎず、フラッと出かけるくらいがいいんです。

後編【「自分の曲で2万5000人が盛り上がっていると、頑張ろうと思える」Hiroki Sagawaが語る音楽作家としてのやりがいと苦しみ】へ続く

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