カフェ・カンパニー楠本修二郎×InterFM897奈須裕之×KKBOX山本雅美が語り合う、食とラジオと音楽ストリーミングの未来

『897 Selectors』に学ぶ、食とラジオと音楽配信の親和性

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「“ローカルな丁寧さ”みたいなことを表現していくと面白いのかも」(楠本)

――国内外に、といえば『KKBOX』は自社のサービスや『TOKYO MUSIC BOX』を通じて、カフェ・カンパニーは店舗展開や流通などで海外へのリーチを広げていますよね。言語の壁があるので、ラジオは難しいかもしれませんが、お三方は今後の展開について、国内外でそれぞれどうアプローチをしようと考えていますか?

楠本:僕の原点はハワイや西海岸の文化なのですが、このあたりは食文化がごちゃまぜになっていて楽しいんです。BEAMSの設楽(洋)さんはもともとアパレルをやるつもりはなかったけれど、このライフスタイルを日本に持ってきたいと思ったときに、運ぶことができたのがTシャツだったから今の業態になっているそうで。音楽も電波やレコードなど、様々な手段で国境を超えられたから、世界を変えられるほどボーダレスなものになった。でも、“食”に関しては、食材を持っていけないので同じようにはいかない(笑)。だから各国で食文化はドメスティックなものとしてあり続けるし、価値の交換をすると面白い。

奈須:僕も同じ感覚です。例えば、旅行で台湾にいったときにラジオを付けるのも、全英のヒットチャートを聴きたいわけじゃない。地元の音楽を聴きたいし、それでこそ行った価値があると思うんです。ラジオ自体もアメリカ文化へのリスペクトがあって機能しているものなのですが、難しいところは無理に合わせるのではなく、独自のコミュニティとして展開していったほうが、最終的に世界から注目され、よりグローバルなものになっていくと思うんです。

楠本:「音楽は国境を超える」というのは共通認識だけど、逆に「超ローカルなものですよ」と謳っていく視点は新しいのかもしれないですね。

山本:面白いですね。僕らもアジア圏から世界へ、ということをずっと考えていたので、そういう考え方もあるのかと気づかされました。楠本さんは先ほど「食は持ち出せない」という話をしていましたが、ならば世界で展開するにあたって、それ以外の部分、例えば接客サービスなどの“おもてなし”を持ち出していくのでしょうか?

楠本:僕ら自体が、しっかりお客様をおもてなしできているのかはわかりませんが、「お客様は神様」と思わず、リスペクトを込めて、“最も大切な仲間”だと意識するようにしています。だからこそ「このBGMは気に入ってくれるかな、料理の出し方はこうしたほうが喜ばれるかな」と考えるし、「客単価に合ったサービスを」という思考には至らないと思うんです。

――どのようにして、その考え方に行きついたのでしょうか。

楠本:僕は歴史と文化に関する知識を、竹村真一さん(京都造形芸術大学教授)から学んだのですが、彼は聖徳太子が史実として「7人の話を同時に聞いた」と語られていることについて、「“彼が7か国語を話すことのできるグローバルパーソンだった”という意味なのではないか」と仮説を唱えていて。彼の「和を以て貴しとなす」という言葉の「和」は、「和国」の「和」ではなく、ハーモナイズ(調和)の「和」ではないかと。そこから「和を以て貴しとなす」→「わ“をも”っ“て”たっとしと“なす”」→「をもてなす」→「おもてなし」と崩していったのが「おもてなし」の語源だろうから、海外の人に対して自国の文化を押し付けるのではなく、「リスペクトし合って調和することが最大限のおもてなし」なのではと気づき、会社のメンバーにはそう伝えるようにしています。

山本:この考え方は、いろいろなもののヒントになりそうですね。

――なるほど、興味深い考え方ですね。ありがとうございます。

楠本:ここまで話してきて思ったことなんですが、食と音楽をより紐づけていくにあたって、先ほど奈須さんがおっしゃっていた「音楽は世界共通でもあり、超ローカルなものだ」という考えが大きなポイントになりそうです。例えば、京都というエリアで聴くことで最大限にその魅力が引き出される音楽と、その地域でしか食べることのできない料理をワンパックにして提供する。そのような“ローカルな丁寧さ”みたいなことを表現していくと面白いのかもしれないと思いました。

山本・奈須:おもしろいですね、やりましょう!

(取材・文=中村拓海/写真=池田真理)

■楠本修二郎
カフェ・カンパニー代表取締役社長。
2001年、カフェ・カンパニーを設立し、代表取締役社長に就任。“コミュニティの創造”を テーマに現在、国内外で約100店を運営する他、地域活性化事業、商業施設のプロデュース等を手がける。2010年からはクールジャパン関係の政府委員を歴任。(一社)東の食の会代表理事/(一財)Next Wisdom Foundation 代表理事/東京発の収穫祭「東京ハーヴェスト」代表理事を務める。

■奈須裕之
音楽専門局 InterFM897 事業部所属。
1973年生まれ。大学時代にラジオ局でアルバイトをした事がきっかけでラジオディレクターになる。
2012年からInterFM897に勤務。

■山本雅美
1990年ビクターエンタテインメント入社。スピードスターレーベル、マーケティング本部副本部長を経て、2008年にアミューズとKDDI合弁の音楽レーベル&マネジメント会社A-Sketchの設立に参画。同社取締役を経て2015年4月より現職。

■サービス情報
『KKBOX』
日本をはじめアジア6カ国で展開するアジア最大の定額制音楽配信サービス。
スマートフォン、パソコン、タブレットなどで、いつで もどこでも1,500万曲以上の多彩なラインアップの楽曲を聴き放題で楽しむこと ができるだけでなく、4,000曲をキャッシュ(一時保存)できるので通信環境を気にすることなく音楽を楽しむことが可能。
また、離れたユーザー同士でリアルタイムに同じ楽曲を聴きながらチャットを楽しむことができる「Listen with(一緒に聴く)」 といった
ソーシャルコミュニケーション機能も注目されており、現在は1カ月間無料でサービスを使用することができる。

KKBOX公式サイト
※「KKBOX」国内初のTVCM好評OA中!

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