夢みるアドレセンス・プロデューサーインタビュー

夢アド仕掛け人が語るグループ戦略、そして『舞いジェネ!』のメッセージ「ここからがわたしたちの時代だ!」

 2012年に結成され地道なインディーズでの活動を経て、2015年にメジャーデビューしたアイドルグループ、夢みるアドレセンス。ティーン誌のモデルを中心とした編成で、その高いビジュアルと、エッジの効いた音楽性で注目を集める彼女たちが2016年1月20日にリリースしたニューシングル『舞いジェネ!』は、豪華な制作陣でも話題となった。
 作詞・作曲にバンド・OKAMOTO’Sのオカモトショウ、編曲・サウンドプロデュースをagehaspringsが手がけ、レコーディングにはOKAMOTO’Sメンバーも参加したこのディスコナンバーには、どのようなプロデューサー陣の戦略と思想が込められていたのだろうか。

 今回は、結成段階から現在まで一貫してプロデュースを担当してきた伊藤公法氏に、グループアイドルとしてのコンセプトとその戦略を、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズのチーフプロデューサーであり、これまでスチャダラパーやゆらゆら帝国、フジファブリック、凛として時雨などを手掛けてきたチーフプロデューサーの薮下晃正氏に楽曲面でのプロデュース方針をそれぞれうかがった。(武田俊)

「『クラスにいそうな子』的なアイドルの売り方に、逆張りをする意識も」(伊藤公法)

——改めてですが、夢みるアドレセンス(以下、夢アド)のグループアイドルとしての活動経緯からうかがえますか。

伊藤:夢アドの場合は、まずメンバーありきでスタートしたんです。5人中4人が、『ピチレモン』というローティーン向けのファッション誌でモデルをやっていて。1万人に1人とも言われるポテンシャルを持った彼女たちを、どうアイドルとしてプロデュースするかが、最初の課題でした。

——グループアイドルのブランディングとして「クラスにいそうな子」というものがありますが、夢アドの立ち位置はその真逆とも言えます。

伊藤:例えば、中学の頃、同級生の女子で、すこし話しかけにくいタイプの、クラスの男子ではなく隣の高校の先輩と仲がいいような女子っていましたよね。大体3限終わりに制服を着崩して教室に入ってくる、みたいな。すごく話しかけにくいんだけど案外頑張って話して見ると、意外と優しくてめちゃくちゃイイヤツっていう(笑)。そういう女の子のポジションが、いまのアイドルシーンの中にあったらおもしろいなと。僕自身、そういう子と話せなかった経験もあり(笑)。それを何かいい形にできないか、というイメージから、思春期を意味するアドレセンスを冠したグループ名にしたんです。

——男性なら、誰しもが身に覚えのありそうなエピソードですね(笑)。

伊藤:また一方で、「クラスにいそうな子」的なアイドルの売り方に逆張りする意識も持っていました。2012年に結成し、地道にインディーズ活動を続ける中で徐々にファンも増えていったんですが、特徴的なのがファン層のあり方なんです。

——他のアイドルグループとは異なるんですか?

伊藤:夢アドの無料ファンクラブ会員は、男性と女性の割合が6:4。まず女性の割合がとても多い。この女性ファンの多くが11、2歳の頃に『ピチレモン』読者で、夢アドメンバーからおしゃれの楽しさを学んだという方がすごく多い。イベントなどで他のアイドルグループと楽屋をご一緒すると、「ずっとファンでした!」みたいな会話も巻き起こっているんですよ。

——初発の時点から、同世代の女性ファンがついてきていると。

伊藤:個人的に忘れられないのが、大阪の比較的小さな規模のインストアイベントの際に、同世代の女の子のファンがひとりで来ていて、涙を流しながら彼女たちのステージを観ていたことですね。

——インストアということは、特に照明もない明るい場でライブしているわけですよね?

伊藤:そうなんです。「ここまで情熱的なファンがいるのか!」って驚きました。でも考えてみると、それが夢アドの本質なんじゃないかと思って。

——楽曲面でのプロデュースをされている薮下さんには、夢アドらしさはどう写ったんでしょうか?

薮下:自分はこれまでロックバンドを始めとするシンガー・ソング・ライターを中心にプロデュースしてきたので、アイドルについては正直門外漢でした。そんな中、同世代の音楽業界人の中でもアイドルにハマる人がここ数年凄く多くなっていて。おそらくAKB48やももいろクローバーZに端を発しつつ、BiSやでんぱ組.incなど、ロックフェスに出演するアイドルも現れ、まさにジャンルをクロスオーバーする熱量というものが生まれていた。そんなアイドルカルチャーに興味を持ちながらも、ズバッとはハマれない感覚がありました。

——どういう部分に違和感を感じたんですか?

薮下:違和感というより、僕らのような職業プロデューサーではなく、やはりアイドルに強い強迫観念を持った方が手綱を引いていくべきジャンルだと感じていたんです。でも、初めて夢アドを見た時にそのフォトジェニックな演者としてのポテンシャルの高さに驚きました。アイドルはこうあるべきみたいな固定観念があまり感じられず、モデル出身の女の子たちが何か新しいカルチャーを作ろうとしている。そんな気がしたんですよね。

——特定の色を持ちすぎていないというわけですね。

薮下:そう、良い意味でアイドルとしてのアイデンティティがはっきりしていなくて、見方によっては乃木坂46のような側面もあるし、私立恵比寿中学のような側面もある。個々のモデル、役者としてのポテンシャルと、グループとしてのレンジの広さに魅力を感じたんです。その反面、最終的に何をやりたいのかが解りにくかった。

伊藤:そんな薮下さんの客観的な考えを聞きながら、一緒にディスカッションを重ねていくことで、どう打ち出していくかを固めていったんです。この過程がとても重要。というのも、アイドルグループってスタッフの戦略とモチベーションの影響を受けやすいんですよね。

薮下:ダイレクトに戦略が反映するジャンルだけに、仮にうまくいってないアイドルグループがあるとしたら、それは当人以上にスタッフの考え方に問題があるケースが多いように思います。それを避けるためにも慎重に理論武装をし、コンセプトをユニークなものに仕上げていく必要があります。

伊藤:身内で褒め合うつもりはありませんが、彼女たちのキャリアの中で明確に潮目が変わったな、と思ったのがソニー・ミュージックさんとご一緒させていただいた2015年。様々なアイデアを、多角的に検証することができるようになったことがとても大きかったんです。

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