夢アド仕掛け人が語るグループ戦略、そして『舞いジェネ!』のメッセージ「ここからがわたしたちの時代だ!」

夢アド仕掛け人が語る時代とアイドル

「『舞いジェネ!』はターニングポイントとなる」(薮下晃正)

——『サマーヌード・アドレセンス』のルーツが今回の『舞いジェネ!』にまで繋がっていたわけですが、そんな同曲についても構想からうかがってみたいです。

伊藤:「アイドルグループの3rdシングルは重要」だという定説があって、まずそこを意識しました。スタッフ内でもお互いの手札やその切り方がわかってきた頃で、1番脂が乗っている時期なので、ファンの方が1番盛り上がれる曲を考えたんです。これまでの夢アドはギターロック調の楽曲が多かったんですが、そこから抜け出て踊れる楽曲はディスコナンバー。まずここが決まりました。

薮下:僕は夢アドについては、常に変化し続けることをアイドルとしてのメソッドにしていきたいと思ってきました。夢アドらしさを考えていた時、元々「思春期解放戦線」みたいなアグレッシブなテーマが期初にあったことを思い出したんです。10代の革命応援ソングをイメージした際に、そこに合う音楽としてもディスコはぴったりだろうと。一方でアイドルソングというジャンルにおいてレイド・バックしたディスコナンバーはこれまでにも数え切れないほどあったわけで、そのクリシェからどう逸脱するかで悩みましたね。

伊藤:もう一方の革命といったテーマについては、思春期である彼女たちが自分たちの世代を鼓舞するという姿勢を打ち出していくことを描きたいと思いました。ちょうどそんな話をしていた時に、18歳の参政権や、安保に対してのSEALDsの活動が話題になっていたんです。

——何かを刷新するために、同世代に対して強く呼びかけていく、と。

薮下:政治的なイデオロギーは別としても、SEALDsについてはユースカルチャーとしてのパワーをすごく感じていて。10代から20代前半の若者が嫌なものに対してちゃんと思考し、直接的に行動していることに衝撃を受けたんです。

——世の中の大きな動きに対して、リスクがあっても自分たちの価値観を表明するということですよね。

薮下:世代的にも夢アドのメンバーが国会前でスピーチしてても、おかしくないのかもしれない」とも考えましたね。デモという形式ではなかったとしても、10代の子たちが世の中に対して物申していく時代なんじゃないか? そんな風に思えた時に、じゃあどんな音楽がそこにハマるのか?例えば国会前のデモのコールみたいに聴く人たちを鼓舞していけるのかと。ここはかなり悩んだ部分です。

伊藤:インディーズ時代から含めた現時点での集大成という意味合いもあり、インディーズ時代に楽曲プロデュースを依頼していたagehaspringsさんにアレンジをオファーすることだけは決めていたんです。カルチャーとエンターテイメントとのコラボレーション、J-POP界きってのアレンジ集団agehaspringsさんにカルチャーとしての何を素材として加味するのか?それを判断するのに時間がかかりましたね。

薮下:そんな時に知人でもあるOKAMOTO’Sのレイジくんにどこかのイベントで偶然あって、彼らの『OPERA』という新しいアルバムのサンプルを手渡されたんです。これがロックオペラとして仕上がった、多彩な音楽性を感じさせる素晴らしいコンセプトアルバムだったんです。これだけ広い間口を有したOKAMOTO'Sだったらこれまでに無いアイドル・ソングを作ってくれるんじゃないかと思い曲をお願いして、agehaspringsさんと融合させてみることにしました。歌詞はオカモトショウくんにこれまで話したようなテーマを提案させてもらい一緒に練っていった感じです。

——今改めて歌詞を見てみると、印象的なフレーズがいくつも目に入りますね。

薮下:ショウくんとも「日本がもし終わっても」なんて過激なこと歌ったら怒られたりするんじゃないか、とか話していたんですが、意外と全然そんなことなかった(笑)。「ちょっと日本ってもうヤバいよね」「どうなっちゃうんだろう?」っていう空気感が生まれている中で、「大人たちの都合でそんな簡単に終わらせないよ、だってまだ思春期だもん!」というコンセプト。最近メンバーたちも現場で見ているとこの曲に感情移入して気持ちよく歌っているのも印象的です。

伊藤:何度も自分たちのグループ名が登場しますし、自分事として歌詞を歌えているんでしょうね。

薮下:当初の歌詞はもっと、彼女たちを神目線のアイドルの救世主的な形で描いていたですが、ちょっと待てよと。いきなりまだ新人アイドルの夢アドが代表して「がんばれ!」とか言っちゃうのはあまりにも僭越じゃない(笑)? ということで、敢えてアナグラムとしてグループ名を歌詞に組み込んでいくアイデアが生まれたんです。そこで「日本がもし終わっても夢みるアドレセンス」というフレーズが出てきて、これはロジックとしても通るし、キャッチーでいいんじゃないか、となっていったんです。

伊藤:奇しくも昨今色んなスキャンダルが乱立して、Twitterやソーシャルメディアでも話題になっている中で、色々な面で時代と符号している楽曲になったのは感慨深いです。「舞いジェネ!」というタイトルも、何度も深夜までみんなで考えあぐねた結果出てきましたよね。

薮下:イメージのもとになったのは、ショウくんが歌詞に入れこんでくれたThe Whoの『マイジェネレーション』でした。「大人が価値観を押し付けてくるけど、俺たちの時代はこれだ」という60年代のメッセージは、現代の日本においても普遍的であり『舞いジェネ!』でも踏襲しています。 タイトルは『マイジェネレーション』×『ラブジェネ』って感じの言葉遊びからですかね(笑)

伊藤:世相に対してアジテーションになっている歌詞は、同時に、アイドルシーンの文脈で言っても、まさに「ここからが夢アドの時代だ!」という高らかな宣言になっているような。

——すでにリリースイベントがスタートしていますが、現場ではどんな受け止められ方をしていますか?

伊藤:裏方のロジックはさておき、サビのフリにあわせてみんなが踊っているという事実が重要だと思っています。綿密に考えてリリースしたものが、理屈抜きで盛り上がる楽曲に仕上がったことは大きな成功だと思います。

薮下:これは勝手に思ってるんだけど、女の子にカラオケで「日本がもし終わっても」なんて歌ってもらえたらエモくないですか(笑)? すごくグッとくると思う。経済にしても政治にしても、ニュースなんて絶望的な話題しか今出てこないじゃないですか。そんな気分にピッタリと寄り沿っているダンスチューンなんじゃないかな。

——これからもイベントで、研ぎ澄まされていくのでしょうね。

薮下:『舞いジェネ!』は夢アドにとっておそらくターニングポイントとなる曲だということは、間違いないでしょうね。例えばモーニング娘。の『LOVEマシーン』なんかは、アイドル・ソングなのに洋楽テイストなディスコ・アレンジと当時の世相を反映したアグレッシヴな歌詞が共感を呼んでクラブでもガンガンかかりましたよね。そうやってアイドルの範疇に留まらない受け取られ方をしたことで、社会現象にまで広がっていった。そう考えると、夢アドのストーリーはこの『舞いジェネ!』から新たに始まっていくという予感があります。

伊藤:ディスカッションを繰り返しこれ以上はできない、というところまで突き詰められた純度の高い楽曲なので、リリースイベントが終わった後も、手厚く世の中にプレゼンテーションしていきたい。本当にアイドル文化って、とても楽しいものですし、生きがいになり得るんですよ。その楽しさを広めるためにも、ももクロが格闘技文化圏を、でんぱ組.incがネットカルチャーを巻き込んでいったように、他の文化圏の人たちに好きになってもらいたいです。

——逆に言えば、次のリリースがすごく難しくもあるのかな、とも感じます。

薮下:そうですね。ただ、次も広義な意味でダンスミュージックが大きなテーマにはなっていくでしょう。それはジャンルに固執するわけでは決してなく、例えばそれが所謂ロックだったとしても、もはや「ダンス」は絶対に欠かせない要素であるということです。ロキノン系のバンドで言えば、KANA-BOONとかKEYTALKでも4つ打ちのダンス・チューンはセット・リストから決して外せないものですよね。そういった意味でも、ダンスミュージックとしての要素を取り入れることで、アイドルソングでもポップスとしての汎用性を持ち得ると思うんですよ。

伊藤:夢アドのファンの子ってとてもいい子が多いんです。クラブで朝まで遊ぶみたいなことにはまだ少し抵抗があるけど、踊ってみたい。そんな子たちが踊れる楽曲をつくっていきたいです。

薮下:重要なのは常に時代の感覚を呼吸して変化し続けることです。個人的に好きなのが、知り合いの飲み屋の親父が「老舗のレシピがあったとしても、毎日素材も客も全ては変わるんだから、味の方も常に変化し続けないと同じ味は出せない」って言ってたこと。これはアーティストもそうで、一見安定しているように見える人ほど、試行錯誤を繰り返しているんです。夢アドも一つの形に固執しないことで、夢アドとしての魅力を維持する。そんなやり方をしていきたいですね。

——そんな変化の先にある、完成形みたいなものは想像されているんですか?

伊藤:夢アドの最終的なビジョンとしては、思春期を応援するという切り口におけるプラットフォームになれたらと思っています。何者かになりたくて夢みる人は年齢関係なくみんな思春期だと思ってて。夢アドというプラットフォームがどのジャンル、どの職種、どの媒体、どの作品とも符号するものになったらいい。

薮下:僕が、ティーンネイジ・ドリームという言葉を使っているのもその意味です。グループ名の通り、全ての人が「思春期を永遠に夢みる」ためのインフラとして機能していけたらおもしろいですよね。アメリカでは、ドラマや小説、音楽においてもヤングアダルトみたいなテーマがあるように儚いからこそ「永遠の10代」を夢想する、素晴らしい10代のまま死にたい!みたいな価値観が当たり前のようにあります。、日本にはそこまでの感覚はまだリアリティがないけど例えば、現メンバーが卒業した後もプラットフォームとして続け、ある種のヤングアダルトをテーマにしたアイドルのリアリティ・ショーのように見せていくこともできるのかもしれませんね。

伊藤:マーケティング的な観点から言うと、最終的には今の10代とどうコミュニケーションをとったらいいのかが、メディアや企業の人もわかりにくくなっている。強烈におもしろいものにしか今の若い子たちは紐付いてないんだけど、そのおもしろさが多様化しているのが現状です。そんな同世代の、文字通りアイドルとしての役割を夢アドが担えないかと思ってます。

薮下:重要なのは、どうやってそれをサスティナブルなものにするかでしょう。音楽業界全体を見ても、今やデバイスやマネタイズの手法が多様化している状況の煽りで、危機感ばかりが増長されてしまっている。その中では、どう売るのかではなく、それこそコンテンツ自体の魅力が全てであるという本質的な考え方に戻る必要があるかとも思います。一方で先のことが分からない時代であることを寧ろ楽しんで、現状の市場やコミュニティを意識しながら常に変化を続けるべきなのではと考えています。

(取材・文=武田俊)

■リリース情報
『舞いジェネ!』
発売:2016年1月20日
初回生産限定盤A~F、通常版 計7タイプ

【初回生産限定盤A】
(CD+DVD) ¥2,000(税込)
[CD]
1. 舞いジェネ!
2. 小さなストーリー
3. 舞いジェネ!(Instrumental)
4. 小さなストーリー(Instrumental)

[DVD]
1. 舞いジェネ!(Music Video)
2. 舞いジェネ!(Making of Music Video)
3. 荻野可鈴「トーキョー・デリシャス・ランデブー」 
4. 山田朱莉「ぴよぴよあかちゃむサンド」
5. 志田友美「Butterfly Effect」
6. 小林れい「OVERFLOW」
7. 京佳「シャークガール’99」

【初回生産限定盤B~F】
¥1,000(税込)
1. 舞いジェネ!
2. 各ソロ楽曲 ※下記参照
3. 舞いジェネ!(Instrumental)
4. 各ソロ楽曲(Instrumental)  ※下記参照

※各ソロ楽曲

B: 荻野可鈴「トーキョー・デリシャス・ランデブー」
C: 山田朱莉「ぴよぴよあかちゃむサンド」
D: 志田友美「Butterfly Effect」
E: 小林れい「OVERFLOW」
F: 京佳「シャークガール’99」

【通常盤】
¥1,000(税込) 
1. 舞いジェネ!
2. 小さなストーリー
3. 舞いジェネ!(Instrumental)
4. 小さなストーリー(Instrumental)

■ライブ情報
『夢アド春の3番勝負 ~Road to Zepp DiverCity~』
3月15日(火)“第1夜 ユメトモの新橋” w/Negicco
3月22日(火)“第2夜 ユメトモの汐留” w/バンドじゃないもん!
3月29日(火)“第3夜 ユメトモの竹芝” w/東京女子流
会場:下北沢GARDEN

■ワンマンツアー情報
5月14日(土)大阪 BIGCAT
5月28日(土)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
6月17日(金)Zepp DiverCity Tokyo

http://yumeado.com/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる