ビルボード年間チャートに見る2015年のリアルヒット 三代目JSB「R.Y.U.S.E.I.」が2年越しで頂点に?

ビルボード年間チャートを分析

 ついでにアルバムチャートにも言及しておくと、1位はDREAMS COME TRUEのベストアルバムである。この結果は判断の難しいものだが、あえて率直な言い方をさせてもらうと、1997年くらいに戻ってしまったような悩ましいものだと言うことができる。つまり年間で最も高く評価されるアルバムのアーティストがドリカムであるというのは、90年代後半以降、彼らに取って代わるアーティストが出ていないことのように思えるのだ。もちろんその後も音楽産業はいろんな時期を経てきたのだが、ことシングルが注目される傾向にある最近の音楽チャートの状況を鑑みるに、アルバムのチャートももう少し大きな変化が実感できるものであってくれたらというのが正直なところ。EXILEファミリーが超ロングヒットで短期的なCD売り上げの勝負から脱し始めた今年、単に売り上げだけでなく純粋な楽曲の良さもさらに見直される傾向にある。だからこそ、しっかりと腰を落ち着けて聴くことができる良質のオリジナルアルバムにも評価が集まり、さらにそれが音楽産業の「今」を感じさせる新しいミュージシャンの手によるものであってほしい。というより、2016年はそういう年になってくれるのではないか。多分に願望を込めつつ、そう思わされるところである。

 ともあれ複合形式によって、今年の動向がよりよくわかるチャートではあった。ただ、リスナーの中にはそれでも結果に納得がいかないという人もいるだろう。しかしビルボード・ジャパンはこの結果を踏まえつつTwitterと第一興商のカラオケで歌唱をした回数が有効ポイントとなる一般投票企画もやっていて、より一般リスナーの声を積極的にチャートに採り入れようとしているようだ。そんなわけで、納得がいかない場合はそちらで投票するのもアリかと。

■さやわか
ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』『一〇年代文化論』『キャラの思考法: 現代文化論のアップグレード』がある。Twitter

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