電気グルーヴやケミカルを彷彿とさせる? ピノキオピーのライブ盤が示す、ボカロの新たな可能性
そして、ピノキオピーが他のニコ動出身のアーティストとも、海外のダンスユニットとも異なるのは、やはりピノキオピー自身がボカロと共に歌うということ。BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKUの「ray」や、安室奈美恵の「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」など、J-POP/ROCKのアーティストが初音ミクとコラボしてデュエットしたことも記憶に新しいが、いわばピノキオピーもこれと似たスタイル。しかし、ニコ動出身アーティストでこのスタイルというのは珍しい。オリジナルでは全編ボーカロイドが歌っている楽曲を、ときにユニゾン、ときに掛け合い、ときにピノキオピーが単独で歌うことによって、普通のボカロPのライブではありえない空間が生まれている。
また、オリジナルキャラクターの「アイマイナちゃん」や「どうしてちゃん」が象徴しているように、世の中の曖昧さや疑問、矛盾などを複数の視点からあぶり出すピノキオピーの詞世界は、客観的に描かれているがゆえに、ボカロに歌わせることに意味がある。しかし、ピノキオピーは人前に出ることが苦手で、家で漫画を読んだり音楽を聴いてばかりいたという過去の自分や、自分に似たリスナーに向けて曲を作っている意識もあると言う。だからこそ、ライブでピノキオピー自身が歌うことによって、そこにフロアとのダイレクトなつながりが生まれるのだ。例えば、「空想しょうもない日々」の〈くそしょうもない日々は続く〉や、「ぼくも屑だから」の〈ぼくも屑だから〉、「Last Continue」の〈あの日に戻れたらいいのにな〉〈あの日は助けちゃくれないんだ〉といった歌詞をオーディエンスと共に合唱する場面は、非常にエモーショナルでグッとくる。画面を飛び越えてダイレクトに繋がりを感じたいというその想いは、バンドというスタイルで自らが歌うことを選んだ米津玄師やヒトリエのwowakaとも、何ら変わりのないものだと言っていいだろう。
ピノキオピーは来年以降もライブ活動を積極的に行い、当面の目標はフジロックへの出演だと語る。途中で名前を挙げたダンスユニットたちが名演を繰り広げた苗場のステージで、いつか初音ミクとピノキオピーが祭りを繰り広げることを期待したい。
(文=金子厚武)
■リリース情報
ピノキオピー『祭りだヘイカモン』
発売日:12月9日
初回限定盤
価格:¥3,700+税
仕様:CD+DVD(副音声あり)
・8Pブックレット
・スーパージュエル・ボックス
・封入特典:家紋ステッカー
通常盤
価格:¥2,000+税(CDのみ)
<収録曲>
10月6日開催『祭りだヘイカモン』at shibuya club asia 全編再構築ライヴアレンジバージョン
1.敵か味方かピノキオピーか
2.ありふれたせかいせいふく
3.空想しょうもない日々
4.アイマイナ
5.ぼくも屑だから
6.昨日、パンを食べました
7.頓珍漢の宴
8.腐れ外道とチョコレゐト
9.Last Continue
10.祭りだヘイカモン
11.マッシュルームマザー
12.ラブソングを殺さないで
13.すろぉもぉしょん
14.こあ
15.どうしてちゃんのテーマ
<DVD収録内容>
10月6日開催『祭りだヘイカモン』at shibuya club asia 全編収録
1.敵か味方かピノキオピーか
2.ありふれたせかいせいふく
3.空想しょうもない日々
4.アイマイナ
5.ぼくも屑だから
〜MC〜
6.昨日、パンを食べました
7.頓珍漢の宴
8.腐れ外道とチョコレゐト
9.Last Continue
〜MC〜
10.祭りだヘイカモン
11.マッシュルームマザー
12.ラブソングを殺さないで
13.すろぉもぉしょん
〜アンコール〜
14.こあ
15.どうしてちゃんのテーマ
※副音声:オーディオコメンタリー
(VOCALOIDならびにボーカロイドはヤマハ株式会社の登録商標です)
■関連リンク
U/M/A/A HP
http://www.umaa.net/what/matsuridaheycomeon.html