寺嶋由芙が“ゆるキャラとの架け橋”に アイドルとしての「芯」を見せた代官山UNIT公演レポート

寺嶋由芙&ゆるキャラが見せた「芯」

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 そして本編ラストは、ゆるキャラ10体とともに、ヤマモトショウ作詞作曲の「ぜんぜん」。しんじょう君のギターが前に出たサウンドには、不意に「ぜんぜん(ふぇのたすver.)」を連想した。現在の「ぜんぜん」はrionos編曲だが、ソロ活動当初の寺嶋由芙は「ぜんぜん(ふぇのたすver.)」に近いアレンジで歌っていたのだ。このヴァージョンは、寺嶋由芙とふぇのたすによる「ゆふぃたす」名義のシングル『君が笑えば恋なのです』で聴くことができる。

 そして「ぜんぜん」では、アイドル、ゆるキャラ、生演奏に加えて、ファンがケチャで前に押し寄せる状況に。これもまた見たことのない光景だった。

 アンコールは寺嶋由芙がステージ袖に消えた瞬間から起きた。そのアンコールでは、10体のゆるキャラの名前もコールされていた。

 アンコールはまず、ヤマモトショウ作詞作曲、MOSAIC.WAV編曲で、BPM200を誇る打ち曲「ねらいうち」から。ミナミトモヤ作詞作曲の「好きがこぼれる」では、イントロのギターのフレーズをそのままファンが「ダダッ!ダダッ!ダダ!」と歌っていた。

 アンコールのこの2曲で、寺嶋由芙は再びアイドル現場の熱をゆるキャラファンに伝えようとしているのだな……と考えていると、「好きがこぼれる」の<ほら みて / わたしは ここにいるでしょ!>という歌詞の<ここにいるでしょ!>の部分がファンによって大合唱された。

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 2度目のアンコールは、まずスピッツの「楓」。編曲はGOOD BYE APRILだ。それを歌い終わると、寺嶋由芙は「気持ち下がってもらっていいですか?」と満員のフロアの空間を縦に開けさせて、そこにゆるキャラを並べていった。最後の「ぼくらの日曜日」では、ゆるキャラがいるフロアでファンが肩を組んで揺れるなかへ、寺嶋由芙自身も飛び込んでいった。アイドル、ゆるキャラ、両者のファンがフロアにいてギュウギュウになっているのは、この日のライブならではの光景だった。

 アイドルファンの側から見ると、この日はゆるキャラ10体の存在が非常に大きいライブだったが、寺嶋由芙はゆるキャラファンに向けても、終始アイドル現場の魅力を伝えようとしていた。それこそが寺嶋由芙というアイドルの「芯」の部分だろう。BiS脱退後に寺嶋由芙が『ミスiD』のオーディションを受けたとき、彼女が掲げていた将来の夢は「ゆるキャラ界とアイドル界の架け橋的存在になること」だった。具体的にイメージしづらかったその目標を、彼女はライブで具現化してしまったのだ。ちゃんと「アイドル」として。

 今回は、東名阪ツアーとして12月12日に大阪・OSAKA MUSE、13日に名古屋・ell.SIZEでも各2公演があるが、すべての公演内容が異なることが事前にアナウンスされている。ゆるキャラとともに内容は変化しても、そこではブレることなく「アイドル」を貫く寺嶋由芙の姿が見られるはずだ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■セットリスト
1.#ゆーふらいと 
2.初恋のシルエット
3.ふへへへへへへへ大作戦
4.ヒロインになりたい
5.contrast
6.ライク・ア・ヴァージン
7.赤いフリージア
8.気がつけば あなた
9.ロマンティック浮かれモード
10.負けないで w/全員
11.サライ w/全員
12.いやはや ふぃ~りんぐ w/全員
13.ゆる恋 w/オカザえもん・カパル・ふっかちゃん
14.猫になりたい! w/しんじょう君・豆乳・ペッカリー・みっけ
15.好きがはじまる w/ガタゴロウ・うなりくん・ササダンゴン
16.カンパニュラの憂鬱 w/全員
17.ぜんぜん w/全員
アンコール1
18.ねらいうち
19.好きがこぼれる
アンコール2
20.楓
21.ぼくらの日曜日 w/全員

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