検索しても出てこない『FINAL』の核心 TM NETWORKの30年の軌跡を辿る

TM NETWORK30年の軌跡を辿る

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 だから、2人だけはそれとなく思っていただろう。ウツ、どこかでやるな、と。しかし、スタッフはまったく知らないから、「Here, There & Everywhere」のイントロが始まるまで、ギターの音をオフにしたままだったのではないだろうか。おかげで歌うに歌えなかったと推測できる。いや、単に教えてもらったギター・コードを忘れただけかもしれないが…。ムニャムニャと、宇都宮隆のサプライズは未遂に終わった。そんな事情を踏まえると、木根尚登と葛城哲哉の笑顔が実に可笑しい。

 やっちゃった。宇都宮隆が見せた照れ笑い。1988年の大晦日が甦る。紅白歌合戦で「COME ON EVERYBODY」の歌詞を間違えたときの表情が甦る。素の表情は、何年経っても、何歳になっても、変わらないものらしい。きっと子供の頃も同じ顔で照れ臭そうに笑っていたのだろう。一方、小室哲哉は、慌てず騒がず。もしかしたら「ELECTRIC PROPHET」のコードを弾こうとした?と思える動きも見せているし、「やんないのね」という素の笑みも見ることができる。

 駆け足になるが、ここらで『TM NETWORK 30th FINAL』までの流れを再確認しておこう。

 2012年から始まった30周年プロジェクト。1話完結型ではなく、バトンを渡していくように物語が続くシリーズ型だ。武道館公演では、まず「潜伏者」という設定を提示。

 続く2013年7月のFINAL MISSION -START investigation-では、潜伏者とはいかなる者たちなのかを明示。しかも、宇都宮隆復帰を最高の形にすべく、小室哲哉は考え抜いた。頭のなかにあるコンサート脚本を何百回も書き直したことだろう。

 脚本が固まり、リハーサルが具体的に動き出すと、オープニングで登場する木根尚登に、「ここでクスリとでも笑いが起きたら、すべてが失敗になるから」と、プロデューサーとして、または演出家として、今までにないプレッシャーをかけたこともあった。また、自らも潜伏者の一人を演じ、ステージ上では、無機質な表情に徹した。

 起承転結の転にあたるのが2014年の春ツアー。物語の場所を宇宙へ転じ、今まで登場していなかったロボット(人工生命体)を出現させる。まさに転にふさわしい展開だ。

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 その30th 1984~ the beginning of the endを終えると、小室哲哉は、小説の執筆に入った。振り返ると、この執筆も唐突ではない。目的は明確だった。継続中の物語に厚みを持たせ、結末へと加速させるためだ。

 小説の最初の仮題は『CAROL2』。結果的には、『QUIT30』となった組曲の仮題も同じ。あくまでも予測だが、この時点で小室哲哉には、シリーズの結末となる2015年2月が見えていたのではないだろうか。30th 1984~ QUIT30 HUGE DATAのラストシーンに、一人だけタイムマシンに乗り、先回りして来たのかもしれない。

 蛇足ながら、起承転結の転2ともいえるのが2014年秋ツアー。結が2015年2月の30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA。見事な起承転結、見事な着地だった。

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