『Beautiful Flight』リリースインタビュー

H ZETTRIOの自由なインストはどんな発想から生まれたか?──H ZETT Mにキャリア含めて訊く

 決してPE’Zのヒイズミマサユ機ではないH ZETT M(ピアノ)のソロから派生したトリオ・バンド、H ZETTRIO──H ZETT Mに加え、決してPE’ZのNireharaではないH ZETT NIRE(ベース)と、決してPE’Zの航ではないH ZETT KOUの3人からなるこのインスト・バンドが、セカンドアルバム『Beautiful Flight』を11月4日にリリースした。ジャズという前提にもポップスという形式にもロックという様式美にも縛られない、軽やかで、自由で、アバンギャルドなのにとても間口が広くて楽しさに満ちた、このピアノ主体のインストゥルメンタルは、どのような発想と技術から生まれてくるものなのか。なお、すでに知られているように、PE’Zは12月19日・東京・昭和女子大学人見記念講堂でのワンマンをもって解散する。その事実が彼らの音楽に与える影響まで含めて、H ZETT Mに訊いた。

 

「バンドでスペインサッカーみたいなことをやりたい」

──このタイミングでアルバムを出そうと思われた理由を教えていただけますか。

H ZETT M:H ZETTRIOという3人の活動が勢いに乗ってきているという、その流れでのことですね。曲を作って、レコーディングして、配信して、という連続の流れですね。

──個人としては、あちこちですごいミュージシャンと一緒にやってきた経験があるじゃないですか。それでもこのメンバーふたりというのは特別なものがあります?

H ZETT M:そうですね。やりやすさは格別というか。一応設定としては別人みたいな感じになってるんですけども(笑)、ずっと一緒にやってきたというのが、阿吽の呼吸を生み出すのかな、という。サッカーで言うパス回しが速くできるみたいな、その点においてやりやすいというか。バンドでスペインサッカーみたいなことをやりたいというか、パス回しをして、相手を翻弄して、「ハアッ!」みたいなのがやりたいというか。

──H ZETT Mさんって、バンド外の仕事も多いじゃないですか。ああいう時ってわりと指定されるものですか? それとも、おまかせの方が多いですか?

H ZETT M:おまかせが多いです。「曲のここの箇所で暴れてください」っていうのがいちばん多いですね。「まじめに弾いてください」っていう人はあんまりいないですね(笑)。

 

「中1の時、一回挫折したんですよ」

──そういう、「暴れてください」って言われるような、H ZETT Mさんの今のスタイルは、どういう過程でできていったものなんでしょう。子供の時はちゃんと弾いてたでしょ?

H ZETT M:ちゃんと弾いてましたね。レッスンもみっちりやってましたね。それが習慣になっていて。今やれているのは、その時の貯金のおかげだと思うんですけど。

──その貯金は何年くらい貯めたんですか?

H ZETT M:小学校に入ってから、中学を卒業するくらいまでですかね。で、曲はその最初の頃、5,6歳くらいから作っていて。最初は五線譜に適当に丸をつけて弾いてたんですけど、ここに書くとこの音になるというのをだんだん知って、そこをめがけて書くようになって。で、先生に見せて直してもらって、また作って……っていうので、だんだん曲らしくなっていって。それを貯めていくという。

──それは人に聴かせたりは?

H ZETT M:ピアノの発表会があるたびに弾いてましたね。

──へえー。そんな小学生いないでしょ。

H ZETT M:いや、オリジナルやる子はちらほらいたんです。そんなに多くはなかったかもしれませんけど。

──それが中学になるとどうなるんですか。

H ZETT M:そのピアノで弾くインスト曲がちょっと難解になってきて。ジャズとか聴くようになってきたので、それが入ってきて。エレクトーンも弾くようになっていたので、エレクトーンで曲を作ってましたね。最初にエレクトーンで作ったのは、ピアノの延長で、ゆるいポップスみたいな曲なんですけど。中1の時、それでコンクールに出たら、ほかの人たちのレベルがものすごく高くてですね、一回挫折したんですよ。ジャズをバリバリ弾くとか、速弾きの人が多かったんです。人にすごいと思わせなければ、コンクールも勝ち上がれないし注目されない、と思って、次の年に速弾きの曲を作ったんですよ。プログレッシブなフュージョンみたいなのに、ちょっとチック・コリアも入ってくるような。そういうわけのわかんない感を意識したのが、中2ですね。

──それでコンクールは?

H ZETT M:勝ち上がりました(笑)。全国大会まで行って。

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