姫乃たま『潜行 ~地下アイドルの人に言えない生活』発売記念
寺嶋由芙×姫乃たまが語る、それぞれのアイドル活動 寺嶋「ファンには幸せになってほしい」
「“ファンの皆さん”って呼ぶのは照れちゃう。おこがましい感じもして」(寺嶋)
寺嶋:当時に比べると、最近はヲタ同士のコミュニティーが広がっている感じがする。あと、一見オタクっぽくない人も増えたかも。以前のヲタクは、ファッションも含めて楽しんでいる人が多かったけど。
姫乃:「寺嶋由芙命!」みたいな法被を着てね。
寺嶋:そうそう(笑)。いなくなったよね? 由芙Tシャツを着てはいながらも、そのまま街を歩けそうな格好のお客さんが増えた。あと近年、雑誌のアイドル特集みたいなやつも増えた気がするし、アイドルがより一般化してきたんだなぁって。
姫乃:ああ、わかる。当時にはあった、駆け出しのアイドルが集まってるライブの雰囲気って、いまはもうないよね。それって私の活動形態が変わってきたからそう感じるのか、アイドルシーン全体がそうなっているのか、どうなんだろう。
寺嶋:でも、ライトなヲタクは確実に増えてる。
姫乃:確かに!
寺嶋:「身も心も」みたいなヲタクが少なくなってきたんだよ。
姫乃:うんうん。そう言えば由芙ちゃんはファンのことのヲタクって結構バシっと呼ぶけど、それって、なにか理由があるの?
寺嶋:ああ、たとえばBiSだと“研究員さん”、PASSPO☆さんだと“パッセンジャー”みたいなグループごとの呼び名があるよね。私、自分のファンは“ゆふぃすと”って……優しく呼びたい時だけ使ってるんだけど(笑)。やっぱりいまの規模で「ゆふぃすとの皆さん」みたいに言っても、何のこっちゃの人が多いかと。
姫乃:へえ、意外だ……。そういう実感があるの?
寺嶋:うん、わからないと思う。それに、“ファンの皆さん”って呼ぶのは照れちゃうんだ。おこがましい感じもして。
姫乃:それ、わかります!
寺嶋:それでヲタクって呼んでるの。
姫乃:なるほど。私は昔、ヲタクって呼んだら「ヲタクじゃない!」って怒っちゃうファンがいたから、呼べなくなっちゃって。5、6年前は、まだ00年代のヲタクのイメージを引きずっている人が多かったのかなと思うんだけど。
寺嶋:私も当時は呼べなかったよ。
姫乃:あ、やっぱりそうなのね?
寺嶋:いまは逆に「ヲタクの俺カッコイイ」みたいな人がたくさん出てきたから、心境が変わってきて。
姫乃:うんうん。由芙ちゃんって、自分で地下アイドルを名乗っていた時期はあるんだっけ?
寺嶋:うーん、一応、地下アイドルではあったんだけど、姫乃ちゃんみたいに堂々と地下アイドルを標榜するよりは、全然まだ知られていないので……みたいに謙遜して言うための肩書きとして。ヲタクの中には、気を遣って「ライブアイドル」ってキレイめに呼んでくれる人もいるんだけど。
姫乃:ああ(笑)。ヲタクがヲタクって呼ばれて怒るのと一緒で、「私は地下アイドルじゃないから!」って怒る人がいるからね。
寺嶋:いるいる!
姫乃:もうさ、本当は地下アイドルなんて一言で説明できないから、私が原稿とかで「いやあ、売れていないアイドルで……」とかってお茶を濁して説明してると、猛烈に怒ってくるんですよ。「売れてな……くない!」って(笑)。あと「◯◯アーティスト」みたいにアイドルじゃなくてアーティストだって自称する人もいて、その辺また根が深い。
寺嶋:根が深い(笑)。あの現場って、個人のこだわりが発揮される場所でもあるよね。