羽生結弦は“和”、浅田真央はジャズ! 各選手のフィギュア最新使用曲の傾向とは?

 また、FSではYOSHIKI(X JAPAN)が1999年、天皇陛下御即位10年の奉祝曲として作曲した「Anniversary」を演じる。この原稿を書いている時点ではまだ未公開となっているプログラムだが、この7分を超える壮大なオーケストラ楽曲を名振付師、ローリー・ニコルがどうプログラム構成してくるのか、非常に気になるところ。余談だがX JAPAN関連の楽曲は、現在宮原知子らのコーチを勤める田村岳斗(「紅」「Rocket Dive(hide with spread beaver)」など)や浅田舞(「amethyst」)により、これまでもプログラムで使用されている。

 さて、女子の注目選手を見てみよう。まず、先シーズン全日本女王に輝き、初出場の世界選手権で銀メダルを獲得した宮原知子。今シーズンのSPは「ファイヤー・ダンス(『リバー・ダンス』より)」。舞台「リバー・ダンス」を構成する楽曲である「ファイヤー・ダンス」は、アイルランドミュージックを根源として、フラメンコなどの多彩な音楽要素が組み込まれた舞台音楽。先シーズンのオリエンタリズムに溢れたFS「ミス・サイゴン」に続き、今シーズンも土着色溢れる音楽を演じる。

 FSはフランツ・リストの代表作「ため息」を演じる。ピアノの優雅な旋律が宮原の細やかで丁寧なスケーティングと絶妙にマッチした、早くも名作の予感が高まる美しいプログラムだ。

 続いて、先シーズングランプリシリーズ・ロステレコム杯で優勝するなど、一躍トップ選手の仲間入りを果たした本郷理華。今シーズンのSPは2014年に引退した所属クラブの先輩、鈴木明子の振付による「キダム(『シルク・ドゥ・ソレイユ』より)」。夢の世界を表現する幻想的な音楽に乗せ、メイクや衣装でもサーカスの世界観を再現する、非常にアバンギャルドな作品となった。

 FSは「リバー・ダンス(『リバー・ダンス』より)」。奇しくも宮原と同様、アイリッシュダンスの世界に挑戦する。振付を担当した宮本賢二作品らしいトランジション(繋ぎ)の濃いプログラムだが、タップを取り入れたダンサブルなプログラムに仕上がっている。

 そしてやはり、今シーズンはこの人のカムバックをなくして語れないのが浅田真央だ。一年間の休養ののち、競技復帰の道を選んだ浅田の新SPは「素敵なあなた」。原曲は1932年にショロム・セクンダにより、ミュージカル用に作曲されたジャズのスタンダード・ナンバーである。数多くのアーティストにカバーされている名曲で、浅田がどのバージョンを使用するのかはまだ明らかになっていないが、“もう一度言わせて、あなたはこの世界で一番美しい”と歌い上げるこの曲は、振付を担当したローリー・ニコルから浅田へのメッセージなのかもしれない。

 FSはジャコモ・プッチーニ作曲「蝶々夫人(オペラ『蝶々夫人』より)」。「蝶々夫人」は明治時代の長崎を舞台にひとりの日本女性の悲劇を描いた、日本で最も有名なオペラのひとつ。背景の通り、日本的で情緒的な旋律が随所に見られる作品でもある。SPで軽快なジャズ、そしてFSでは重厚感のあるドラマを演じ再スタートを切る浅田の、新たな挑戦を見守りたい。

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