羽生結弦は“和”、浅田真央はジャズ! 各選手のフィギュア最新使用曲の傾向とは?

 いよいよ今年もフィギュアスケートシーズンが到来。一部のB級試合は既にスタートしているが、日本における本格的なシーズンは本日開催のジャパン・オープンから始まるといってもいいだろう。今回は、今シーズン注目選手の使用楽曲から、それぞれの2015−2016シーズンの展望を描いてみる。

 まずは男子。なんといっても注目されるのは、やはりワールドチャンピオンの奪還をはかるエース・羽生結弦だ。今シーズンのショートプログラム(以下、SP)は先シーズンからの持ち越しとなるショパン作曲「バラード第1番」。ソチ五輪で金メダルを獲得した2013−2014シーズンのSP「パリの散歩道」から一転し、繊細で内面的な世界をリンクに描くことに成功したプログラムである。荘厳なイントロダクションから物憂げなモノローグのような序盤、そして終盤の劇的な展開へと楽曲内のコントラストをリンクに描きながら、ピアノ曲ならではの音の余白まで丁寧に表現したこのプログラムは、技術面のみならず演技構成の面においても非常に評価の高い作品となった。2年目となる今シーズンでは、先シーズン数々のアクシデントにより挑戦が叶わなかった高難度の構成への挑戦とともに、音楽解釈など表現面の更なる進化にも注目したいところ。

 フリースケーティング(以下、FS)では、2001年野村萬斎主演で話題となった映画『陰陽師』のサウンドトラックから、「SEIMEI」と題し安倍晴明を演じる。侍や古事記など、ジャパネスクを前面に押し出したプログラムはこれまでも他の選手で制作されてきたが、羽生が競技用プログラムで“和”というテーマを選択してきたことは、その意外性から大きなトピックスとなった。今回初めて楽曲編集にも携わったという羽生だが、カナダの振付師・シェイ=リーン・ボーンとともに作り上げた“和”の世界を、ジャッジ、そして世界中の観客を魅せる表現として完成させることができるのか。今シーズンも羽生から目が離せない。

 そしてこちらも注目なのが、先シーズンのジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア選手権を制し、全日本選手権ではジュニア選手ながら羽生に次ぐ2位に輝いた宇野昌磨だ。シニアデビューとなる今シーズンのSPは、ネイティブアメリカンの民族音楽と現代のダンスミュージックが融合した独自のスタイルを確立するアーティスト、セイクレッド・スピリットの「レジェンド・ワールド」。シーズンに先駆けアイスショーで初披露された際、会場を大きくどよめかせたこのプログラムは、競技用プログラムとしては珍しい四つ打ちの重低音がリンクに響く、非常に画期的でクールな作品となっている。

 FSでは、「誰も寝てはならぬ(歌劇『トゥーランドット』より)」にチャレンジする。トリノ五輪で荒川静香が金メダルを獲得した楽曲としても未だ印象強い一曲だが、いわばフィギュアの超王道でもあるこの曲をシニアデビューのシーズンに敢えてセレクトしてきたのも興味深いところ。ジュニア時代から表現力に定評のあった宇野が、“チャレンジ”と“王道”の二段構成で、シニアデビューのシーズンにどこまで世界に衝撃を与えることができるのか、期待が集まる。

 さらに、先シーズングランプリシリーズ・NHK杯にて優勝を果たし、飛躍のシーズンとなった村上大介も注目したい選手のひとり。今シーズンのSPは「彼を帰して(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)」。柔らかで温かいメロディーに乗せ音楽の余韻を存分に味わうことのできる、これまでの村上とはひと味違った大人のプログラムに仕上がっている。

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