ニューシングル『Empty MERMAiD』インタビュー

LiSAが語るデビュー後の葛藤、そして表現への自信「いろんなLiSAの音楽を楽しみたい」

 LiSAがニューシングル『Empty MERMAiD』をリリースする。2015年は武道館2DAYS公演から始まり、3rdアルバム『Launcher』のリリース、それに伴う全国ツアーや初のアジア単独ツアー実施、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015』をはじめとするロックフェス出演など精力的な活動が続いているが、今回のシングルはそんな彼女の勢いをそのまま封じ込めたかのようなアグレッシヴでエモーショナルな作品に仕上がっている。

 リアルサウンド初登場となる今回はこのシングルの話題を軸にしつつ、デビューから4年を経ての心境の変化や歌詞に対する思い、ライブのスタンスなどについてたっぷり語ってもらった。(西廣智一)

「今年の武道館でLiSAというシンガーの色や形がやっと確立できた」

──ニューシングル『Empty MERMAiD』、かなり攻めた内容で驚きました。なぜ今回はこういう作風になったのかを最初にお聞きしたいんですが?

LiSA:私はLiSAとして活動させてもらって4年になるんですけど、今まではアニメのタイアップとの関わり方とLiSAとして歌っていきたいものをすごく考えながら、ひとつひとつの作品を作ってきました。で、去年発表した「Rising Hope」でようやくその両方に折り合いをつけることができて。そこから今まで培ってきた「PiNK(=キュート、カラフル/ポップ)サイド」と「BLACK(=ハード、ダーク/ロック)サイド」を軸に作品を作っていき、今年1月に武道館2DAYSをやらせてもらったときに、LiSAというシンガーの色や形がやっと確立できたと思ったんです。だから、今ならダークサイドを表立ってやっても誤解されずに受け取ってもらえるんじゃないかなと思って、今回は振り切ってみました。

──自身も作詞に携わった「Rising Hope」で初めて納得のいくものができたということですが、それ以前は作家さんが書いた歌詞を自分なりに解釈して歌っていたわけですよね。

LiSA:そうですね。今までは自分が思ってることをプロの作詞家さん、作曲家さんに伝えて作っていただいた作品に対して、自分がそこに染まることが「LiSAらしさ」だと思ってたんです。でも「Rising Hope」は自分が作詞に関わり、自分の思いをきちんと言葉にできたことによって、より強い曲になったんだと思います。

──LiSAさんはデビュー以前からバンド活動をしていたそうですが、その頃はどういう思いで作詞に取り組んでいましたか?

LiSA:自分の感情表現や自分の思ってること、どっちかっていうとメッセージがどうとか人に何かを伝えることよりは、自分の中の発散ですかね。私は自分の気持ちを言葉じゃうまく伝えられない分、音楽で表現してましたね。

──普段の生活においても、自分の思いを相手に伝えることが苦手だった?

LiSA:とっても苦手でしたね。だから音楽に助けられてたところが多くて。私、海外に行ったときによく思うんですけど、海外では日本語がほとんど通じないじゃないですか。でも音楽を通じて会話ができてるというか。例えばギターをギュイーンって鳴らしたらみんながワーッと言ってくれるし、「Hi!」って言ったらみんなも「Hi!」「Hi!」と返してくれるし。私がやりたかったコミュニケーションが一番濃くできてる気がするんです。

 

「自分の好きなものを理解してもらえなくてもいいと思ってた」

──LiSAさんのライブはお客さん参加型の、コミュニケーションを非常に大切にしたものですよね。

LiSA:そうですね。私は自分がライブハウスに遊びに行ってた頃から、演者とお客さんみんなでライブを作ってる絵がとても好きで。今もその延長で、みんなと一緒に遊びたい遊び方をこちら側が提示すること……それをやったらよりライブを楽しめるよ、とりあえずCDに練習用の声を入れておくんで、その部分を覚えてライブに来たら絶対に気持ちいいよって。例えば、ドラムがバン!と鳴ったときに自分の振りもバン!とキマったら気持ちいいと思うんです。その感覚と一緒で、鳴ってる音や私の振りとみんなの声がリズムよく合った瞬間って、きっとファンの方も楽しいと思うんですよ。だからそのライブでの楽しみ方をひとつ提案するのが、CDなのかなと思ってます。

──先日、アニサマ(8月28〜30日に開催されたアニソンライブイベント『Animelo Summer Live 2015 -THE GATE-』の略)でLiSAさんのライブを見させていただいて。実は初めて足を運んだんですが、その熱量にカルチャーショックを受けました。

LiSA:すごいですよね。私も初めて行ったときは衝撃でした。2万7000人のお客さんみんながペンライトを持って、どこで学んだんだっていうくらいに同じ動きをして、そのイベントを盛り上げるために楽しむことに集中しているというか。すごく一体感のあるイベントだなと思ってます。

──そんな中で、LiSAさんが初日公演の最後に出てきたときの存在感がものすごくて。

LiSA:本当ですか?(笑) めちゃめちゃ緊張してましたけどね。アニサマってすごいレジェンドたちが積み重ねてきた10年の歴史があるので、はじめにトリをやってくださいと言われたときは「いや、私できません!」って一度お断りをしたんです。でも先輩たちを含めて皆さんが大事にしてきた場所を、今度は私が守っていく立場になったのかなと思ったし、またLiSAという音楽がちゃんとアニメファンの人たちにも認めてもらえたのかなとも思い、改めてトリを引き受けさせていただきました。

──最近ではアニサマのようなアニソン系イベントのみならず、『ROCK IN JAPAN FES』などロックフェスにも出演することが増えてますよね。

LiSA:そうですね。自分がアニメソングの世界から学んだことがたくさんあったし、それを全部吸収したLiSAという人が『ROCK IN JAPAN』みたいな場に行ったときに、私がアニメの好きな人たちの気持ちを背負っていくことで、アニメを誰かの入り口にできるかもしれないと思ったし。言葉を選ばずに言うと、アニメに対する偏見みたいなものも取っ払えるかもしれない場所に、私は今いられるのかもしれないなって考えると、とても嬉しかったですね。

──でもその場所に到達するまでには、時間がかかったわけですよね。

LiSA:はい。以前は、自分の好きなものを人に理解してもらえなくてもいいと思ってたんですよ。自分の好きなものは自分だけで楽しめれば、別に他の人が認めてくれなくてもいいやって。でも自分が好きなものを自分の大事な人や友達に「いいじゃん、カッコいいじゃん」と言われたときは、やっぱり嬉しいですよね。これは私がよく使う例えなんですけど、お母さんに自分が大好きな友達を紹介したときに、お母さんが「あの子、いい子ね」と言ってくれたらとっても嬉しいみたいな。自分が好きなものを誰かに認めてもらえると嬉しいんだっていうことに改めて気付いたときに、それを私が外に出て行ってみんなに伝えられる立場にいるんだったら、それをやりたいなと思った。だからこそ『ROCK IN JAPAN』にも出たいと思ったし、『ミュージックステーション』みたいな音楽番組にも出たいと思ったし。私が好きなものを認めてもらうきっかけが作れるかもしれないなって思ったんです。

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