市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第28回

SMAPが見せた<前人未到アイドル>の本領 市川哲史が『のど自慢』のパフォーマンスを分析

 蛇足ながら、どんなジャンルの楽曲だろうが初見で伴奏できてしまう、あの通称<のど自慢バンド>は素晴らしい。しかも本番の20組20曲のみならず、本番前の予選出場者250組250曲までもこなすのだから怖い。そしてピアノ+ギター+ベース+ドラムス+シンセ×2の6人編成で奏でる、2時間ドラマのキッチュな劇伴っぽいアレンジがまた、たまらないのだ。

 それでもってゲストであるプロの歌手たちも出場者同様に、その素敵にチープな生バンド演奏で持ち歌を唄ってたから、一種のカオスかもしれない。なので今回、どんだけ素朴な「SHAKE!!」が聴けるか愉しみにしてたのだが、既に10年以上も前からゲスト持参のオリジナル・カラオケ音源に切り替えられていたのであった。ああ。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

関連記事